望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした

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7-12 嘘の言葉

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「ジョナサン……クッ!」

伯爵は自分に全く懐かなかったジョナサンに苛立ちを覚え、睨みつける。

「これで分かったでしょう? ジョナサンは人見知りが激しい子供です。いくら貴方が祖父であろうとも、断じて渡せません! ましてや自分の孫を睨みつけるような相手なら、なおさらだ!」

ニコラスは強く言い切った。

すると――

「アハハハハッ! これは愉快だ!」

室内に突然笑い声が響き渡った。
するといつの間にか、パトリックの姿がある。

「パトリック……何故ここにいる? 俺は客間にいろと言ったはずだぞ!?」

ジョナサンを抱きしめたまま、ニコラスが強い口調で尋ねる。

「まぁ、そんな固い事言わないでくれよ。こんな面白い余興、俺も参加させてくれてもいいだろう? それに、会いたかった人達もいるしね」

パトリックはジョナサンを一瞥すると、次にジェニファーに視線を移して笑みを浮かべる。

「……?」

笑顔を向けられたジェニファーは不思議に思ったが、相手は高貴な男性なので会釈した。
その様子をシドは歯を食いしばり、見つめている。

「何が余興だ! ふざけるな! 他人事だと思って勝手なことを言いおって!」

一方、「余興」と言われた伯爵は怒り心頭でパトリックを怒鳴りつけた。

「フエェエェ……」

伯爵の怒鳴り声に怯えて、ジョナサンはニコラスの胸に顔をうずめる。

「ほら、伯爵。あなたが大きな声を上げるから、お孫さんが怯えているじゃないですか? そんなことじゃ、永久にお孫さんと暮らせませんよ?」

肩をすくめるパトリックにニコラスは言い返した。

「何を言う! ジョナサンは俺の大事な子供だ! 伯爵などに渡せるものか!」

すると伯爵が冷たい眼差しをニコラスに向ける。

「あぁ……そのようだな。どうやら私はジョナサンに完全に嫌われてしまったようだから、諦めるとしよう」

「ええ。当然のことでしょう」

毅然とした態度を取るニコラス。しかし、次に伯爵はとんでもないことを口にした。

「ただし、それには条件がある。ジェニファー! お前がテイラー侯爵家を出ることが条件だ!」

伯爵は初めてジェニファーの名前を口にした。

「え!?」
「何だって!?」
「そんな……!」

ポリー、ニコラス、シドから驚きの声が洩れるもジェニファーは沈黙している。

「ジェニーを見捨てるような薄情者に、大切な孫を託せると思うか? 今後一切ジョナサンと関わらないと約束するなら、私は孫を諦める。これが条件だ」

「……分かりました。どのみち、明日はこの城を出るつもりです。その後は一切、ジョナサンと関わらないと約束します。なので……どうか、ニコラス様からジョナサンを奪わないで下さい」

ジェニファーの言葉に、ニコラスは反論する。

「ジェニファー! まだそんなことを言うのか!? 俺は……!」

「ニコラス様、離婚して下さい。やはり私は好きな人と結婚生活を送りたいのです」

辛い胸の痛みを堪えながら、嘘の言葉を吐くジェニファー。

「!」

ニコラスが衝撃を受けたのは……言うまでも無かった――







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