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6-21 届かぬ想い
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「あ、あの……解放って……?」
尋ねるジェニファーの声が震える。
「言葉通りだ。君と離婚をすると言う事だ。だが、今すぐ離婚するわけにはいかない。戸籍の問題があるからな……書類の提出は1年後にはなるが、ここを出てくのはいつでも自由だ。ジェニファーの意思を尊重するよ」
「そう……なのですね……」
(つまり、私に出て行って欲しいと言うことなのだわ……)
自分の顔から血の気が引いていくのが分かった。しかし、オレンジ色の燭台に揺れる光の下では顔色が悪いことにニコラスが気付くはずも無い。
そして、ジェニファーの心をえぐるようなニコラスの言葉は続く。
「すぐここを出るのは体調のこともあるから難しいだろう。だから今は自分の身体のことだけを考えて、よく休んでくれ。ジョナサンの世話も大丈夫だ。いずれにしろ、君はここを出て行くわけだからジョナサンにもジェニファーがいない生活に、慣れさせなければいけないしな」
「慣れさせる……? ジョナサン様は、私を恋しがっているということですか?」
尋ねる声が震える。
「確かに、それはあるが……でも大丈夫だ。ジョナサンはまだ1歳だ。今はジェニファーのことを恋しがっているが、いずれ忘れるときがくる。だからそんなに気にすることは無い」
「そ、そうなのです……ね……?」
もうこれ以上ニコラスの話を聞いているのは限界だった。目頭が熱くなり、今にも涙がこぼれ落ちそうになるのをジェニファーは必死で耐えた。
「ああ、ジョナサンのことは気にしないでくれ。それよりも今はジェニファーの今後のことを考えよう。ここを出た後だが、叔母の住む家には戻りたくはないだろう? だから色々な形で生活に困らないだけの支援は出来るだけしていくつもりだ」
今迄の自分の行動を悔い改めたニコラスは、ジェニファーに笑顔で語る。だがそれは返って逆効果だった。
(あんなに笑顔で話すなんて……それほど、私に出て行って貰いたいということなのね……)
「はい……ありがとうございます。今後の生活のことまで考えて下さって、ありがとうございます」
弱々しく返事をするジェニファー。
「そんなのは当然のことさ。何しろジェニーの遺言を守る為に俺は君の自由を奪い、戸籍迄汚すようなことをしてしまったんだ。だから一生、生活に困らないように金銭の保証をすることを誓おう」
「いいえ、金銭の保証などして頂かなくて大丈夫です。私がここへ来たのは自分の意思ですから」
自分がニコラスの元へ来たのは、子供の頃の初恋が忘れられなかったから。
ニコラスの再婚相手として、自分が望まれているからだと思ったからだ。
ジェニファーの望みは、今後もずっとここに置いてもらうこと。
ジョナサンの母親として、そしていつかニコラスに妻として認めてもらうことなのだ。
けれどとてもでは無いが、今のジェニファーには自分の本心を告げることなど出来なかった。
「そんなことは言わないでくれ。俺からのお詫びの気持ちとして、どうか支援は受け取って欲しい。この通りだ」
ニコラスは頭を下げた。
「そ、そんなニコラス様。どうか、顔を上げて下さい。ではそこまでおっしゃるのであれば……援助を受けたいと思います」
「本当か? ありがと」
「こちらこそお気遣い、ありがとうございます」
泣きたい気持ちを必死に押し殺し、ジェニファーは精一杯の笑みを浮かべた――
尋ねるジェニファーの声が震える。
「言葉通りだ。君と離婚をすると言う事だ。だが、今すぐ離婚するわけにはいかない。戸籍の問題があるからな……書類の提出は1年後にはなるが、ここを出てくのはいつでも自由だ。ジェニファーの意思を尊重するよ」
「そう……なのですね……」
(つまり、私に出て行って欲しいと言うことなのだわ……)
自分の顔から血の気が引いていくのが分かった。しかし、オレンジ色の燭台に揺れる光の下では顔色が悪いことにニコラスが気付くはずも無い。
そして、ジェニファーの心をえぐるようなニコラスの言葉は続く。
「すぐここを出るのは体調のこともあるから難しいだろう。だから今は自分の身体のことだけを考えて、よく休んでくれ。ジョナサンの世話も大丈夫だ。いずれにしろ、君はここを出て行くわけだからジョナサンにもジェニファーがいない生活に、慣れさせなければいけないしな」
「慣れさせる……? ジョナサン様は、私を恋しがっているということですか?」
尋ねる声が震える。
「確かに、それはあるが……でも大丈夫だ。ジョナサンはまだ1歳だ。今はジェニファーのことを恋しがっているが、いずれ忘れるときがくる。だからそんなに気にすることは無い」
「そ、そうなのです……ね……?」
もうこれ以上ニコラスの話を聞いているのは限界だった。目頭が熱くなり、今にも涙がこぼれ落ちそうになるのをジェニファーは必死で耐えた。
「ああ、ジョナサンのことは気にしないでくれ。それよりも今はジェニファーの今後のことを考えよう。ここを出た後だが、叔母の住む家には戻りたくはないだろう? だから色々な形で生活に困らないだけの支援は出来るだけしていくつもりだ」
今迄の自分の行動を悔い改めたニコラスは、ジェニファーに笑顔で語る。だがそれは返って逆効果だった。
(あんなに笑顔で話すなんて……それほど、私に出て行って貰いたいということなのね……)
「はい……ありがとうございます。今後の生活のことまで考えて下さって、ありがとうございます」
弱々しく返事をするジェニファー。
「そんなのは当然のことさ。何しろジェニーの遺言を守る為に俺は君の自由を奪い、戸籍迄汚すようなことをしてしまったんだ。だから一生、生活に困らないように金銭の保証をすることを誓おう」
「いいえ、金銭の保証などして頂かなくて大丈夫です。私がここへ来たのは自分の意思ですから」
自分がニコラスの元へ来たのは、子供の頃の初恋が忘れられなかったから。
ニコラスの再婚相手として、自分が望まれているからだと思ったからだ。
ジェニファーの望みは、今後もずっとここに置いてもらうこと。
ジョナサンの母親として、そしていつかニコラスに妻として認めてもらうことなのだ。
けれどとてもでは無いが、今のジェニファーには自分の本心を告げることなど出来なかった。
「そんなことは言わないでくれ。俺からのお詫びの気持ちとして、どうか支援は受け取って欲しい。この通りだ」
ニコラスは頭を下げた。
「そ、そんなニコラス様。どうか、顔を上げて下さい。ではそこまでおっしゃるのであれば……援助を受けたいと思います」
「本当か? ありがと」
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