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6-12 目覚めた後 1

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 目を覚ましたジェニファーは驚いた。

何故なら自分が多くの人々に取り囲まれていたからだ。それだけではない。
ポリーもココもボロボロ涙をこぼして泣いていた。シドの目にも涙が浮かんでいるし、何よりニコラスが今にも泣きそうな顔で自分をみつめていたからだ。

そして……。

「ウワァァァアンッ!! マァマッ! マアァマァ~ッ!!」

真っ赤な顔で泣きながらジェニファーに手を伸ばすジョナサンがいる。

「ジョ……ナサン……」

弱々しくも、必死で声をかけるとジョナサンは青いつぶらな瞳から増々涙を流して見つめてくる。

「皆さん、下がってください。患者さんの様子を見ますので」

女医が声をかけると、全員が下がった。

「ヤッ! ヤッ! マァマッ! マァマッ!」

ジェニファーから離されたくないジョナサンは暴れる。

「ジョナサン、おとなしくしているんだ! これからママは診察を受けるんだから!」

ニコラスの言葉がジェニファーの耳に届いた。

(え……? 今、ニコラスは……私のことをママと呼んだの……?)

「マァマッ! マァマッ!」

ジョナサンの泣き叫ぶ声が聞こえてくる。そこでジェニファーは何とか気力を振り絞って女医に声をかけた。

「せ……先……生」

「はい、何でしょう?」

「お、お願い……です……ジョナサンを……わ、私の側に……」

女医は少しの間ジェニファーを見つめていたが、頷くとニコラスに声をかけた。

「テイラー侯爵、お子さんを連れてきて頂けますか?」

「は、はい……」

ニコラスは返事をすると、火のついた様に泣いているジョナサンを連れて来た。

「マァマッ! マァマッ!」

ジョナサンが泣きながらジェニファーに手を伸ばす。

「ニコラス……様、ジョナサンを……傍に置いてくださ……い」

「わ、分かった」

ジョナサンはニコラスをベッドに下ろすと、途端にジョナサンは小さな手で泣きながらジェニファーに抱きついてくる。

「ウワアアアアンッ! マァマ……マァマ……!」

「ごめんね……ジョナサン……」

ジェニファーは首を少しだけ動かして、ジョナサンの頬に頬ずりする。
その姿は人々の涙を誘った。
血の繋がりは無いが、誰の目から見ても2人は親子のようにしか見えなかった。

「では今から診察を始めるので、部屋を出て行って下さい」

女医の言葉に、ニコラス以外の全員が部屋を出て行く。

「先生、私はどうすれば……」

ニコラスは、チラリとジョナサンに視線を送る。するとジェニファーが弱々しく口を開いた。

「ジョナサン……様は、このままで…‥‥大丈夫です」

「分かった……。先生、どうぞよろしくお願いします」

ニコラスは女医に会釈すると、部屋を後にした。


—―パタン


ニコラスが廊下に出ると、シドとポリーが待機している。そこでニコラスはポリーに尋ねた。

「一体、ジェニファーに何が起きたんだ? 彼女の傍にいたなら、状況を知っているのだろう?」

「はい。ジェニファー様は脱輪事故の際、ジョナサン様を両手で抱きしめて庇ったため、背中と頭を強打していたそうです……」

「何だって!?」

ニコラスは声を上げ、シドは眉をひそめる。

「そして小雨の中、傷付いた身体でジョナサン様を抱いて歩いて帰って来たので増々容態が悪化してしまったそうです」

「そんなことが……」

「ジェニファー様は、身を挺してジョナサン様を庇ったのです! それに雨の中……自分が濡れるのも厭わずに、ジョナサン様が風邪を引かないようにストールでくるんで……あんなに優しくて愛情深い方は私、今まで見たことがありません!」

そしてポリーは顔を覆って、嗚咽した――
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