165 / 237
6-4 聞かれた話
しおりを挟む
シドはジェニファーを部屋に運ぶと、室内を見渡した。
「どうしよう……身体が濡れているから寝かせることも出来ないし……」
そこで取り合えずジェニファーをソファに寝かせて、暖炉に火を灯したとき。
「シドさん、ジェニファー様の様子はどうですか!?」
ポリーが数人のメイド達を引き連れてやって来た。メイドの中にはココの姿もある。
「ソファの上で休ませている。服が濡れているので、ベッドに運ぶことが出来なかったんだ」
「ジェニファー様! 酷い顔色だわ……」
ソファに横たわるジェニファーを見たココは眉をひそめ、次にシドに声をかけた。
「シドさん、まずはジェニファー様の着替えをしますから部屋から出て行って下さい」
「分かった。医者の方はどうなっている?」
「今執事長が近隣の女性医師に連絡を入れています」
「女性医師か……やはり、そうだよな。なら、後のことは任せる」
シドが部屋を出て行くと、ポリーが追いかけてきた。
「シドさん! 待ってください!」
「ポリーか。どうしたんだ? ジェニファー様の傍にいなくていいのか?」
「勿論、私はジェニファー様の専属メイドなのでお傍にいます。ところでシドさん。何処へいくつもりですか?」
「勿論、ニコラス様のところだ。ジェニファー様のことを話しに行ってくる」
幾ら主人と言えど、シドは先程ニコラスがジェニファーに取った態度が許せなかったのだ。
「そうですか、御主人様に文句を言いに行くわけですね?」
「文句……確かにそう取られてしまうかもしれないな」
ポリーも余程腹に据えかねたのか、大胆な言葉を口にする。
「ジェニファー様は、もしかすると怪我をしているのかもしれません……そのことを御主人様に伝えてください」
「何!? 怪我だって!? 一体どういうことだ!?」
シドの顔が険しくなる。
「実は車輪が外れたとき、馬車が大きく傾いたのです。私は咄嗟に手すりにつかまったので、椅子から落ちずに済みました。ですがジェニファー様はジョナサン様を膝の上に乗せていました。ジェニファー様はジョナサン様が落ちないように両手で抱きしめて、床に投げ落とされてしまったんです!」
「な、何だって……」
「ジェニファー様は私に心配させまいとしたのでしょう。大丈夫だと言ってましたが……ジョナサン様を抱いて歩いている時、酷く辛そうでした。まるで痛みを堪えているかのように見えました。だから本当はわ……私がジョナサン様を抱いて歩けば良かったのに……ジェニファー様じゃなければ嫌がって泣いて……」
ポリーの目から再び涙が流れる。
「ポリー……」
「つ、つまり私が言いたいのはジョナサン様のお世話ができるのはジェニファー様だけなんです! だから旦那様はもっとジェニファー様を尊重するべきなんです! そ、それなのに先程のあの態度……あまりに酷すぎます。あれではあまりにお気の毒です!」
「話してくれてありがとう、ポリー」
シドはグズグズ泣いてるポリーの頭を撫でた。
「それに……私、ジェニー様を許せません……亡くなってしまった人を悪くは言いたくありませんけど、ジェニファー様が本来いるべき場所をジェニー様は嘘をついて奪ったのですよ!? いくら、手紙で謝罪したからって……到底許されるべきではありません!」
その時、突然大きな声が響いた。
「何!? ジェニーの手紙があるのか!?」
シドとポリーは驚いて振り向くと、目を見開いているニコラスの姿があった――
「どうしよう……身体が濡れているから寝かせることも出来ないし……」
そこで取り合えずジェニファーをソファに寝かせて、暖炉に火を灯したとき。
「シドさん、ジェニファー様の様子はどうですか!?」
ポリーが数人のメイド達を引き連れてやって来た。メイドの中にはココの姿もある。
「ソファの上で休ませている。服が濡れているので、ベッドに運ぶことが出来なかったんだ」
「ジェニファー様! 酷い顔色だわ……」
ソファに横たわるジェニファーを見たココは眉をひそめ、次にシドに声をかけた。
「シドさん、まずはジェニファー様の着替えをしますから部屋から出て行って下さい」
「分かった。医者の方はどうなっている?」
「今執事長が近隣の女性医師に連絡を入れています」
「女性医師か……やはり、そうだよな。なら、後のことは任せる」
シドが部屋を出て行くと、ポリーが追いかけてきた。
「シドさん! 待ってください!」
「ポリーか。どうしたんだ? ジェニファー様の傍にいなくていいのか?」
「勿論、私はジェニファー様の専属メイドなのでお傍にいます。ところでシドさん。何処へいくつもりですか?」
「勿論、ニコラス様のところだ。ジェニファー様のことを話しに行ってくる」
幾ら主人と言えど、シドは先程ニコラスがジェニファーに取った態度が許せなかったのだ。
「そうですか、御主人様に文句を言いに行くわけですね?」
「文句……確かにそう取られてしまうかもしれないな」
ポリーも余程腹に据えかねたのか、大胆な言葉を口にする。
「ジェニファー様は、もしかすると怪我をしているのかもしれません……そのことを御主人様に伝えてください」
「何!? 怪我だって!? 一体どういうことだ!?」
シドの顔が険しくなる。
「実は車輪が外れたとき、馬車が大きく傾いたのです。私は咄嗟に手すりにつかまったので、椅子から落ちずに済みました。ですがジェニファー様はジョナサン様を膝の上に乗せていました。ジェニファー様はジョナサン様が落ちないように両手で抱きしめて、床に投げ落とされてしまったんです!」
「な、何だって……」
「ジェニファー様は私に心配させまいとしたのでしょう。大丈夫だと言ってましたが……ジョナサン様を抱いて歩いている時、酷く辛そうでした。まるで痛みを堪えているかのように見えました。だから本当はわ……私がジョナサン様を抱いて歩けば良かったのに……ジェニファー様じゃなければ嫌がって泣いて……」
ポリーの目から再び涙が流れる。
「ポリー……」
「つ、つまり私が言いたいのはジョナサン様のお世話ができるのはジェニファー様だけなんです! だから旦那様はもっとジェニファー様を尊重するべきなんです! そ、それなのに先程のあの態度……あまりに酷すぎます。あれではあまりにお気の毒です!」
「話してくれてありがとう、ポリー」
シドはグズグズ泣いてるポリーの頭を撫でた。
「それに……私、ジェニー様を許せません……亡くなってしまった人を悪くは言いたくありませんけど、ジェニファー様が本来いるべき場所をジェニー様は嘘をついて奪ったのですよ!? いくら、手紙で謝罪したからって……到底許されるべきではありません!」
その時、突然大きな声が響いた。
「何!? ジェニーの手紙があるのか!?」
シドとポリーは驚いて振り向くと、目を見開いているニコラスの姿があった――
622
お気に入りに追加
1,784
あなたにおすすめの小説

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

【完結】名ばかり婚約者だった王子様、実は私の事を愛していたらしい ~全て奪われ何もかも失って死に戻ってみたら~
Rohdea
恋愛
───私は名前も居場所も全てを奪われ失い、そして、死んだはず……なのに!?
公爵令嬢のドロレスは、両親から愛され幸せな生活を送っていた。
そんなドロレスのたった一つの不満は婚約者の王子様。
王家と家の約束で生まれた時から婚約が決定していたその王子、アレクサンドルは、
人前にも現れない、ドロレスと会わない、何もしてくれない名ばかり婚約者となっていた。
そんなある日、両親が事故で帰らぬ人となり、
父の弟、叔父一家が公爵家にやって来た事でドロレスの生活は一変し、最期は殺されてしまう。
───しかし、死んだはずのドロレスが目を覚ますと、何故か殺される前の過去に戻っていた。
(残された時間は少ないけれど、今度は殺されたりなんかしない!)
過去に戻ったドロレスは、
両親が親しみを込めて呼んでくれていた愛称“ローラ”を名乗り、
未来を変えて今度は殺されたりしないよう生きていく事を決意する。
そして、そんなドロレス改め“ローラ”を助けてくれたのは、名ばかり婚約者だった王子アレクサンドル……!?
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました
山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。
※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。
コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。
ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。
トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。
クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。
シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。
ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。
シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。
〈あらすじ〉
コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。
ジレジレ、すれ違いラブストーリー
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

今世ではあなたと結婚なんてお断りです!
水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。
正確には、夫とその愛人である私の親友に。
夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。
もう二度とあんな目に遭いたくない。
今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。
あなたの人生なんて知ったことではないけれど、
破滅するまで見守ってさしあげますわ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる