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5-5 知られざるジェニーの過去 5
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それは今にも雨が降りそうな、どんよりとした天気の日だった。
『何だか雨が降りそうね。少し早いけど洗濯物を取り入れてしまいましょう』
庭に出て、ロープに干した洗濯物を取りいれている時。
『こんにちは、シスター』
背後から女性の声が聞こえてきたので、振り向いた私は思わず目を見張ってしまった。
何と声をかけてきたのはジェニーだったのだ。
『まぁ! ジェニーさん。2年ぶりかしら? 驚いたわ』
『ご無沙汰しておりました。シスター。あの……今、お話よろしいですか?』
『ええ、勿論です。礼拝堂で待っていてください。洗濯物を取り入れたら、すぐに行きますから』
『分かりました』
ジェニーは軽く会釈すると、教会の中へ入って行った。
『ジェニーを待たせてはいけないわね。急がなくちゃ』
急いで洗濯物を取り入れると、私は礼拝堂へ向かった。
『お待たせ、ジェニーさ……』
礼拝堂へ行くとジェニーは真剣な様子で祭壇の前で手を組んでお祈りをしていた。その横顔はとても真剣で、声をかけるのをためらってしまうほどだ。そこで私は彼女の祈りが終わるまで待つことにした。
それから10分程祈りを捧げていたジェニーは顔を上げ……私と目が合った途端に慌てる素振りを見せる。
『あ、すみません。シスター! 私ったら、気づかないで……』
顔を赤らめるジェニーに私は笑顔で返す。
『いいのですよ。神様にお祈りを捧げるのは大切なことですから。でもジェニーさんは本当に信仰深い方ですね』
『信仰ですか……いいえ。そんなのではありません。私は……懺悔をしていたのです』
ジェニーの顔は今にも泣きそうになっている。
『ジェニーさん、まだ自分を責めていたのですか? でも10年近くの間、ずっと反省し続けていたのですよね? ジェニファーさんへの謝罪のお手紙も書き溜めていましたし、この辺りで自分を許してみてはいかがですか? もうジェニファーさんだって大人になっています。子供の頃の過ちを許してくれるのではないでしょうか?』
『いいえ! 駄目なんです! 私は……また一つ、大きな罪を犯してしまったんです! もう二度とジェニファーに顔向けできないわ……』
ジェニーは顔を覆ってすすり泣きを始めた。
嗚咽交じりの鳴き声は、聞いているこちらの胸が痛くなるほどだ。そこで私は彼女を落ち着かせる為に、そっと肩を抱いた。
『落ち着いて、ジェニーさん。何があったのか話していただけますか?』
『はい……シスター……』
ジェニーは涙で濡れた顔を上げた。
『私、結婚することになったんです……』
『まぁ、それはおめでたい事ではありませんか? なのに何故泣くのですか? もしかして結婚したくないのですか?』
ひょっとして、政略結婚がいやで泣いているのだろうか? しかしジェニーは首を振った。
『いいえ、政略結婚ではありません。ずっと会いたいと思っていた人でした。私の初恋の男性なのです…‥‥』
『それは喜ばしい事ではありませんか』
『そうです。私はとても身体が弱くて……生まれた時、お医者様から20歳まで生きられないかもしれないと言われたそうです。でも、お父様が私の為に良いお医者様をつけてくれて、体調が悪くなれば空気の綺麗な場所で暮らせるように配慮してくれて……少しずつ元気な身体になっていったんです。だけど、結婚は無理だろうって自分の中で諦めていました』
『そうだったのですね。よく頑張りましたね?』
泣いているジェニーの肩をそっと抱きしめた。
『だけど、そんな私に結婚を申し出てくれた男性が現れたのです。ずっと私を捜していたって』
『ずっと捜していた……?』
一体どういうことなのだろう。
『彼はニコラスとうい名で、子供の頃出会ったジェニファーを私だと思って捜しあててくれたのです。私、彼を一目見た時から好きになってしまって……ジェニファーのふりをしたんです。だって私……子供の頃から、私だけの王子様が現れるのを夢見ていたんです! ジェニファーがニコラスのことを好きだったのを知っていて……!』
そして再び、ジェニーは激しく嗚咽した――
『何だか雨が降りそうね。少し早いけど洗濯物を取り入れてしまいましょう』
庭に出て、ロープに干した洗濯物を取りいれている時。
『こんにちは、シスター』
背後から女性の声が聞こえてきたので、振り向いた私は思わず目を見張ってしまった。
何と声をかけてきたのはジェニーだったのだ。
『まぁ! ジェニーさん。2年ぶりかしら? 驚いたわ』
『ご無沙汰しておりました。シスター。あの……今、お話よろしいですか?』
『ええ、勿論です。礼拝堂で待っていてください。洗濯物を取り入れたら、すぐに行きますから』
『分かりました』
ジェニーは軽く会釈すると、教会の中へ入って行った。
『ジェニーを待たせてはいけないわね。急がなくちゃ』
急いで洗濯物を取り入れると、私は礼拝堂へ向かった。
『お待たせ、ジェニーさ……』
礼拝堂へ行くとジェニーは真剣な様子で祭壇の前で手を組んでお祈りをしていた。その横顔はとても真剣で、声をかけるのをためらってしまうほどだ。そこで私は彼女の祈りが終わるまで待つことにした。
それから10分程祈りを捧げていたジェニーは顔を上げ……私と目が合った途端に慌てる素振りを見せる。
『あ、すみません。シスター! 私ったら、気づかないで……』
顔を赤らめるジェニーに私は笑顔で返す。
『いいのですよ。神様にお祈りを捧げるのは大切なことですから。でもジェニーさんは本当に信仰深い方ですね』
『信仰ですか……いいえ。そんなのではありません。私は……懺悔をしていたのです』
ジェニーの顔は今にも泣きそうになっている。
『ジェニーさん、まだ自分を責めていたのですか? でも10年近くの間、ずっと反省し続けていたのですよね? ジェニファーさんへの謝罪のお手紙も書き溜めていましたし、この辺りで自分を許してみてはいかがですか? もうジェニファーさんだって大人になっています。子供の頃の過ちを許してくれるのではないでしょうか?』
『いいえ! 駄目なんです! 私は……また一つ、大きな罪を犯してしまったんです! もう二度とジェニファーに顔向けできないわ……』
ジェニーは顔を覆ってすすり泣きを始めた。
嗚咽交じりの鳴き声は、聞いているこちらの胸が痛くなるほどだ。そこで私は彼女を落ち着かせる為に、そっと肩を抱いた。
『落ち着いて、ジェニーさん。何があったのか話していただけますか?』
『はい……シスター……』
ジェニーは涙で濡れた顔を上げた。
『私、結婚することになったんです……』
『まぁ、それはおめでたい事ではありませんか? なのに何故泣くのですか? もしかして結婚したくないのですか?』
ひょっとして、政略結婚がいやで泣いているのだろうか? しかしジェニーは首を振った。
『いいえ、政略結婚ではありません。ずっと会いたいと思っていた人でした。私の初恋の男性なのです…‥‥』
『それは喜ばしい事ではありませんか』
『そうです。私はとても身体が弱くて……生まれた時、お医者様から20歳まで生きられないかもしれないと言われたそうです。でも、お父様が私の為に良いお医者様をつけてくれて、体調が悪くなれば空気の綺麗な場所で暮らせるように配慮してくれて……少しずつ元気な身体になっていったんです。だけど、結婚は無理だろうって自分の中で諦めていました』
『そうだったのですね。よく頑張りましたね?』
泣いているジェニーの肩をそっと抱きしめた。
『だけど、そんな私に結婚を申し出てくれた男性が現れたのです。ずっと私を捜していたって』
『ずっと捜していた……?』
一体どういうことなのだろう。
『彼はニコラスとうい名で、子供の頃出会ったジェニファーを私だと思って捜しあててくれたのです。私、彼を一目見た時から好きになってしまって……ジェニファーのふりをしたんです。だって私……子供の頃から、私だけの王子様が現れるのを夢見ていたんです! ジェニファーがニコラスのことを好きだったのを知っていて……!』
そして再び、ジェニーは激しく嗚咽した――
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