144 / 213
4−12 プレゼント選び
しおりを挟む
「いらっしゃいませ」
ダンと店に入ると、30代と思しき女性がカウンター越しから声をかけてきた。
「あの、少し品物を見て回っても良いですか?」
「ええ、勿論です。気になる商品があれば、いつでもお声かけ下さいね」
ジェニファーの言葉に、女性店員は笑顔で返事をする。
「ありがとうございます」
早速ジェニファーはショーケースに並べられたアクセサリーを見て回ることにした。
ジェニファーが探しているのは、ジェニーにプレゼントしたウサギのブローチだった。
(恐らく無いとは思うけど、せめて似たようなブローチが売っていないかしら)
あの時のウサギのブローチ……口にこそ出さなかったものの、実はジェニファーもあのブローチが欲しかった。
動物好きなサーシャとお揃いでウサギのブローチを持てたらどんなにか素敵だろうと考え、この店に入ることにしたのだ。
ショーケースを熱心に見つめているジェニファーにダンが声をかけてきた。
「ジェニファー。随分熱心に品物を見つめているようだけど、何を探しているんだ?」
「ブローチを探していたの。出来ればサーシャとお揃いで可愛らしい動物のブローチが欲しいと思って」
「動物のブローチか……お? これなんかいいんじゃないか?」
「え? どれかしら?」
ダンが見つけたのは猫の形をしたブローチだった。丁度2種類のデザインが並べられている。
「どうだ? 可愛らしいじゃないか。それにサーシャは猫が好きだったからな。よく野良猫に餌をあげたりしていたのを覚えているか?」
「ええ、そうだったわね。ならこれにするわ」
本当はウサギのブローチが欲しかったが、ざっと見て回った限りでは見つからなかった。それに何よりサーシャが好きな猫のブローチをダンが見つけてくれたのだから。
「良かった。ジェニファーの役に立てて。店の人を呼んでくるよ」
嬉しそうにダンは笑顔を見せるとカウンターへ向かい、すぐに店員を連れて戻って来た。
「すみません、こちらのブローチをそれぞれ下さい」
「はい、かしこまりました」
ダンの言葉に女性店員は鍵を開けて、猫のブローチを取り出した。
「では会計をしますので、こちらへいらして下さい」
「はい」
ジェニファーがついて行こうとするとダンが止めた。
「いいよ。俺が払ってくるからジェニファーはここで待っていてくれ」
「え!? 何を言ってるの? ダン。私が買うわよ。そのつもりで来たんだから」
「いいって。俺に2人のブローチをプレゼントさせてくれよ。商売がうまくいっているおかげで、こう見えても俺は金を持っているんだ」
「でも、駄目よ。姉としてダンに買ってもらうわけにはいかないわ」
すると……。
「ジェニファー、聞いてくれ」
ダンがジェニファーの両肩に手を置いた。
「俺はジェニファーのことが好きだから、プレゼントしたいんだよ。頼む、プレゼントさせてくれ」
「ダン……」
ダンの顔は真剣で、どこか切羽詰まっているようにも見える。
(そんなに深刻そうな顔をしなくても……)
そこでジェニファーは口元に笑みを浮かべた。
「分かったわ、ダン。それじゃ、折角だから買ってもらおうかしら?」
「良かった。俺の気持ちを受け入れてくれて。それじゃ、買ってくる」
ほっとした笑顔を見せると、ダンは店員が待つカウンターへ向かった。
勿論、ダンの「好き」という言葉をジェニファーが勘違いしているのは言うまでも無い——
ダンと店に入ると、30代と思しき女性がカウンター越しから声をかけてきた。
「あの、少し品物を見て回っても良いですか?」
「ええ、勿論です。気になる商品があれば、いつでもお声かけ下さいね」
ジェニファーの言葉に、女性店員は笑顔で返事をする。
「ありがとうございます」
早速ジェニファーはショーケースに並べられたアクセサリーを見て回ることにした。
ジェニファーが探しているのは、ジェニーにプレゼントしたウサギのブローチだった。
(恐らく無いとは思うけど、せめて似たようなブローチが売っていないかしら)
あの時のウサギのブローチ……口にこそ出さなかったものの、実はジェニファーもあのブローチが欲しかった。
動物好きなサーシャとお揃いでウサギのブローチを持てたらどんなにか素敵だろうと考え、この店に入ることにしたのだ。
ショーケースを熱心に見つめているジェニファーにダンが声をかけてきた。
「ジェニファー。随分熱心に品物を見つめているようだけど、何を探しているんだ?」
「ブローチを探していたの。出来ればサーシャとお揃いで可愛らしい動物のブローチが欲しいと思って」
「動物のブローチか……お? これなんかいいんじゃないか?」
「え? どれかしら?」
ダンが見つけたのは猫の形をしたブローチだった。丁度2種類のデザインが並べられている。
「どうだ? 可愛らしいじゃないか。それにサーシャは猫が好きだったからな。よく野良猫に餌をあげたりしていたのを覚えているか?」
「ええ、そうだったわね。ならこれにするわ」
本当はウサギのブローチが欲しかったが、ざっと見て回った限りでは見つからなかった。それに何よりサーシャが好きな猫のブローチをダンが見つけてくれたのだから。
「良かった。ジェニファーの役に立てて。店の人を呼んでくるよ」
嬉しそうにダンは笑顔を見せるとカウンターへ向かい、すぐに店員を連れて戻って来た。
「すみません、こちらのブローチをそれぞれ下さい」
「はい、かしこまりました」
ダンの言葉に女性店員は鍵を開けて、猫のブローチを取り出した。
「では会計をしますので、こちらへいらして下さい」
「はい」
ジェニファーがついて行こうとするとダンが止めた。
「いいよ。俺が払ってくるからジェニファーはここで待っていてくれ」
「え!? 何を言ってるの? ダン。私が買うわよ。そのつもりで来たんだから」
「いいって。俺に2人のブローチをプレゼントさせてくれよ。商売がうまくいっているおかげで、こう見えても俺は金を持っているんだ」
「でも、駄目よ。姉としてダンに買ってもらうわけにはいかないわ」
すると……。
「ジェニファー、聞いてくれ」
ダンがジェニファーの両肩に手を置いた。
「俺はジェニファーのことが好きだから、プレゼントしたいんだよ。頼む、プレゼントさせてくれ」
「ダン……」
ダンの顔は真剣で、どこか切羽詰まっているようにも見える。
(そんなに深刻そうな顔をしなくても……)
そこでジェニファーは口元に笑みを浮かべた。
「分かったわ、ダン。それじゃ、折角だから買ってもらおうかしら?」
「良かった。俺の気持ちを受け入れてくれて。それじゃ、買ってくる」
ほっとした笑顔を見せると、ダンは店員が待つカウンターへ向かった。
勿論、ダンの「好き」という言葉をジェニファーが勘違いしているのは言うまでも無い——
324
お気に入りに追加
1,912
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
いつか終わりがくるのなら
キムラましゅろう
恋愛
闘病の末に崩御した国王。
まだ幼い新国王を守るために組まれた婚姻で結ばれた、アンリエッタと幼き王エゼキエル。
それは誰もが知っている期間限定の婚姻で……
いずれ大国の姫か有力諸侯の娘と婚姻が組み直されると分かっていながら、エゼキエルとの日々を大切に過ごすアンリエッタ。
終わりが来る事が分かっているからこそ愛しくて優しい日々だった。
アンリエッタは思う、この優しく不器用な夫が幸せになれるように自分に出来る事、残せるものはなんだろうかを。
異世界が難病と指定する悪性誤字脱字病患者の執筆するお話です。
毎度の事ながら、誤字脱字にぶつかるとご自身で「こうかな?」と脳内変換して頂く可能性があります。
ご了承くださいませ。
完全ご都合主義、作者独自の異世界感、ノーリアリティノークオリティのお話です。菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。
小説家になろうさんでも投稿します。
さげわたし
凛江
恋愛
サラトガ領主セドリックはランドル王国の英雄。
今回の戦でも国を守ったセドリックに、ランドル国王は褒章として自分の養女であるアメリア王女を贈る。
だが彼女には悪い噂がつきまとっていた。
実は養女とは名ばかりで、アメリア王女はランドル王の秘密の恋人なのではないかと。
そしてアメリアに飽きた王が、セドリックに下げ渡したのではないかと。
※こちらも不定期更新です。
連載中の作品「お転婆令嬢」は更新が滞っていて申し訳ないです(>_<)。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
わたしは不要だと、仰いましたね
ごろごろみかん。
恋愛
十七年、全てを擲って国民のため、国のために尽くしてきた。何ができるか、何が出来ないか。出来ないものを実現させるためにはどうすればいいのか。
試行錯誤しながらも政治に生きた彼女に突きつけられたのは「王太子妃に相応しくない」という婚約破棄の宣言だった。わたしに足りないものは何だったのだろう?
国のために全てを差し出した彼女に残されたものは何も無い。それなら、生きている意味も──
生きるよすがを失った彼女に声をかけたのは、悪名高い公爵子息。
「きみ、このままでいいの?このまま捨てられて終わりなんて、悔しくない?」
もちろん悔しい。
だけどそれ以上に、裏切られたショックの方が大きい。愛がなくても、信頼はあると思っていた。
「きみに足りないものを教えてあげようか」
男は笑った。
☆
国を変えたい、という気持ちは変わらない。
王太子妃の椅子が使えないのであれば、実力行使するしか──ありませんよね。
*以前掲載していたもののリメイク
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる