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3−33 訪ねる人
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ニコラスの書斎の前に立ったポリーは緊張する面持ちで扉をノックした。
—―コンコン
『誰だ?』
中からニコラスの声が聞こえる。
「私です、ジェニファー様の専属メイドのポリーです。御主人様にお話したいことがございまして、お伺いいたしました」
大きな声で返事をする。
『話……? 入れ』
「はい、失礼いたします」
扉をゆっくり開けると、ニコラスは机に向かってこちらを向いていた。仕事をしていたのか、机の上には書類の束が置かれている。
「お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます」
「それで、俺に話とは何だ?」
「はい、ジェニファー様のことです」
ジェニファーの名前にニコラスは眉をひそめる。
「ジェニファーがどうした?」
「あの……ジェニファー様は、もう少しこちらに滞在されたいようなのですが……いつ頃『ボニート』を出立されるのでしょうか?」
「何故、ジェニファーはもう少し、ここにいたいと言っているのだ?」
「申し訳ございません。理由は聞いておりませんが、独り言のように、漏らしておりましたので」
「……そうか」
そこでニコラスは考えた。
(そう言えば、結婚してからまだ一度もまともに彼女と話をしたことが無かったな……。いくらジェニーの遺言通りの結婚だからと言っても、少しは交流を持つべきかもしれないな。何しろ、ジョナサンがあんなにも懐いているのだから……)
少し俯き加減に考える素振りをしているニコラスのことを、ポリーはじっと待っていた。
「分かった。それでは今夜の食事は一緒に取るように伝えておいてくれ」
「え!? は、はい! 承知いたしました!」
予想外のことを告げられ、ポリーは驚きながらも返事をした。
「それでは早速ジェニファー様に今のお話を伝えて参ります」
「ああ、ついでにシドを書斎に呼んでくれ」
「え? シ、シドさんですか?」
ポリーの表情がこわばる。
「そうだ、話があるからな」
「あの……御存知無かったのですか?」
「何のことだ?」
「シドさんは町へ出掛けたそうですが、ご主人様の指示ではなかったのでしょうか……?」
「何だって? そんな指示など出してはいないぞ? 一体どういうことだ……?」
「そ、それは……何も知らず、申し訳ございません」
すっかり恐縮した様子でポリーは謝罪する。
「いや、別に責めているわけじゃないから気にしなくていい。シドには戻ってきてから、本人に直接聞くことにする。下がっていいぞ」
「はい、失礼いたします」
ポリーは丁寧に頭を下げると書斎を後にした。
—―パタン
扉が閉まると、途端に緊張が解ける。
「ふぅ……やはり当主様とお話するのは緊張するわ。早いところ、ジェニファー様に食事の件を伝えて来なくちゃ!」
ポリーは急ぎ足で、再びジェニファーの部屋を目指した。
シドの行方を気にしながら……。
****
その頃、ダンは宿屋の一室で荷物の整理をしていた。
「大分暗くなってきたな……」
室内が薄暗くなってきたので、ダンは部屋に設置されたランプに灯りを灯した。途端に温かなオレンジ色の光に包まれる。
「よし、これでいいだろう」
—―コンコン
そのとき、部屋にノック音が響き渡る。
「誰だろう?」
訪ねてくる人物に心当たりが無いダンは首を捻ると、扉を開けた。
「はい……あ! あんたは……確か‥…」
「話がある。少し時間を貰えないか?」
マント姿のシドは、静かに尋ねた—―
—―コンコン
『誰だ?』
中からニコラスの声が聞こえる。
「私です、ジェニファー様の専属メイドのポリーです。御主人様にお話したいことがございまして、お伺いいたしました」
大きな声で返事をする。
『話……? 入れ』
「はい、失礼いたします」
扉をゆっくり開けると、ニコラスは机に向かってこちらを向いていた。仕事をしていたのか、机の上には書類の束が置かれている。
「お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます」
「それで、俺に話とは何だ?」
「はい、ジェニファー様のことです」
ジェニファーの名前にニコラスは眉をひそめる。
「ジェニファーがどうした?」
「あの……ジェニファー様は、もう少しこちらに滞在されたいようなのですが……いつ頃『ボニート』を出立されるのでしょうか?」
「何故、ジェニファーはもう少し、ここにいたいと言っているのだ?」
「申し訳ございません。理由は聞いておりませんが、独り言のように、漏らしておりましたので」
「……そうか」
そこでニコラスは考えた。
(そう言えば、結婚してからまだ一度もまともに彼女と話をしたことが無かったな……。いくらジェニーの遺言通りの結婚だからと言っても、少しは交流を持つべきかもしれないな。何しろ、ジョナサンがあんなにも懐いているのだから……)
少し俯き加減に考える素振りをしているニコラスのことを、ポリーはじっと待っていた。
「分かった。それでは今夜の食事は一緒に取るように伝えておいてくれ」
「え!? は、はい! 承知いたしました!」
予想外のことを告げられ、ポリーは驚きながらも返事をした。
「それでは早速ジェニファー様に今のお話を伝えて参ります」
「ああ、ついでにシドを書斎に呼んでくれ」
「え? シ、シドさんですか?」
ポリーの表情がこわばる。
「そうだ、話があるからな」
「あの……御存知無かったのですか?」
「何のことだ?」
「シドさんは町へ出掛けたそうですが、ご主人様の指示ではなかったのでしょうか……?」
「何だって? そんな指示など出してはいないぞ? 一体どういうことだ……?」
「そ、それは……何も知らず、申し訳ございません」
すっかり恐縮した様子でポリーは謝罪する。
「いや、別に責めているわけじゃないから気にしなくていい。シドには戻ってきてから、本人に直接聞くことにする。下がっていいぞ」
「はい、失礼いたします」
ポリーは丁寧に頭を下げると書斎を後にした。
—―パタン
扉が閉まると、途端に緊張が解ける。
「ふぅ……やはり当主様とお話するのは緊張するわ。早いところ、ジェニファー様に食事の件を伝えて来なくちゃ!」
ポリーは急ぎ足で、再びジェニファーの部屋を目指した。
シドの行方を気にしながら……。
****
その頃、ダンは宿屋の一室で荷物の整理をしていた。
「大分暗くなってきたな……」
室内が薄暗くなってきたので、ダンは部屋に設置されたランプに灯りを灯した。途端に温かなオレンジ色の光に包まれる。
「よし、これでいいだろう」
—―コンコン
そのとき、部屋にノック音が響き渡る。
「誰だろう?」
訪ねてくる人物に心当たりが無いダンは首を捻ると、扉を開けた。
「はい……あ! あんたは……確か‥…」
「話がある。少し時間を貰えないか?」
マント姿のシドは、静かに尋ねた—―
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