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3−26 責める男、庇う彼

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「あ……も、申し訳ございません……」

途端にジェニファーが青ざめた顔で謝罪する。それすら、ニコラスは苛立った。

(何故だ? あの男には笑顔を向けていたのに……俺にはそれが出来ないというのか?)

自分が原因でジェニファーから笑顔を奪っていることを自覚しながら、ニコラスは見知らぬ青年に笑顔を向けていたことが許せなかったのだ。

「大体、ジョナサンの世話もせずに何故こんなところで話をしているんだ? 自分の役目を忘れたのか?」

「いえ、覚えています……」

うなだれるジェニファー。

「言い訳もないようだな? 責務を怠ったことを認めるのだな?」

「……はい。認めます」

消え入りそうな声でジェニファーは返事をした。
今まで散々辛い目に遭ってきたジェニファーは、弁明しようとすればする程に相手が怒ることを知っている。

(初めから相手の言い分を全て飲んで謝ったほうがずっとマシだわ……)

ニコラスに責められるジェニファーが気の毒で、シドはもうこれ以上黙っていられなくなった。

「ニコラスさ……」

シドが口を開きかけた時。

「お待ち下さい」

突然ダンがジェニファーを守るように前に出てきたのだ。

「ダンッ!?」

ジェニファーが目を見開く。

「初めまして、候爵様。俺はジェニファーの従兄弟でダン・マイヤーと申します。ジェニファーを責めないでいただけますか? 元はと言えば、俺が勝手に押しかけて無理に時間を取らせてしまったのです」

そしてダンは深々と頭を下げる。

「ダン、一体何を……」

ジェニファーは呼びかけるも、ダンは頭を上げない。

「……ジェニファーの従兄弟と、言ったか?」

ニコラスが声をかけると、ダンは顔を上げた。

「はい、そうです。子供の頃からずっと一緒に暮らしていました」

「そうか。釣書に書かれていたジェニファーの叔父夫婦の息子か。それで、一体何故ここを訪ねてきたんだ?」

まるで尋問するような口調だったが、ダンは素直に答える。

「仕事で『ボニート』を訪れたのです。以前、ジェニファーから実家に便りがあったのでつい懐かしさのあまり、自分の身分もわきまえずに押しかけてしまいました。なのでジェニファーをどうか責めないで頂けますか? 二人きりで話がしたいと言ったのも俺の方からなのです」

「「!!」」

その言葉に、ジェニファーとシドが驚く。

「つまり君はジェニファーが俺の妻だということを分かっている上で、二人きりで話がしたいと言ったのか?」

およそ、夫らしいことを何もしていないのを自覚しながらもニコラスは尋ねた。

「ダン、それは……!」

「はい、そのとおりです」

ジェニファーの言葉を防ぐようにダンは返事をする。

「……そうか」

グッと拳を握りしめるニコラス。
その様子から、ジェニファーを庇っていることを悟ったからだ――

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