望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
121 / 237

3−24 予期せぬ事態

しおりを挟む
 ジェニファーとダンが久しぶりの再会を楽しんでいた頃――


「行ってきたわ! ガゼボに行ってお茶を出してきたわよ!」

ニコラスを伴ってジェニファーの部屋で待機していたシドとポリーの元へ、ココが慌てた様子で駆け込んできた。

「ありがとうございます! ココさん!」
「2人の様子はどうだった!?」

ポリーとココが同時に尋ねる。

「もちろん、2人はとっても良い雰囲気だったわ。……というか、男性の方が一方的にジェニファー様に好意を抱いている様子だったわ。でも、ジェニファー様もまんざらではない感じだったけど」

「何だって? ジェニファー様は結婚しているんだぞ? それなのに、好意を寄せているというのか?」

シド自身も好意を抱いているのだが、それでも他の男がジェニファーに自分と同じ気持ちを抱いているのが許せなかった。

「でも、確かダンという方はジェニファー様の従兄弟でしたよね?」

ポリーが首を傾げる。

「あら。相手が従兄弟でも結婚は出来るわ。現に私の知り合いも結婚している人たちがいるもの」

「「結婚!?」」

ココの言葉に、シドとポリーが同時に声を上げる。

「何をおかしなことを言ってるんだ? ジェニファー様はニコラス様の妻だ。結婚など出来るはずがないだろう?」

(そうだ……俺がいくらジェニファー様のことを好きでも……)

自分の胸の痛みを隠しつつ、シドは反論する。

「そうですよ、ココさん! おかしなこと言わないで下さい! 大体ジョナサン様はどうするのですか!?」

ポリーは床の上で積み木で遊んでいるジョナサンの方をちらりと見る。

「な、何よ! 2人で私を責めないでよ! ただ、私は知り合いが従兄弟と結婚したことを話しただけじゃないの!」

2人に責められ、言い返すココ。

その時、メイド長が部屋にかけつけてきた。

「皆! こんなところで、何をしているの! たった今、ニコラス様がお帰りになられたのよ!」

「「「え!?」」」

3人が驚きで声をあげたのは、言うまでもなかった――


****

――その頃

「ニコラス様、お帰りなさいませ」

執事長のカルロスが使用人たちを引き連れて、エントランスでニコラスを出迎えていた。

「ああ。皆、わざわざ出迎えありがとう。特に変わりは無かったか?」

周囲を見渡し……眉をひそめる。

「シドはどうした? いつも出迎えに来るはずなのに」

そこへ、シドがココといっしょに駆けつけてきた。

「ニコラス様! お帰りなさいませ!」
「お帰りさないませ、ニコラス様」

「シド、ジョナサンはどうした? それに、ジェニファーの姿も見えないが」

ニコラスの言葉に、シドとココは一瞬顔を見合わせた。

「どうした? 何かあったのか?」

「え、ええ。それが……実は今、ジェニファー様は……来客の方とお話中なのです」

シドは重い口を開いた。

「何? ジェニファーに客?」

眉をひそめるニコラス。

「そのような話、私は初耳だぞ? 一体、相手は誰なのだ?」

カルロスがシドに問い詰めた。

「はい……ジェニファー様の親戚です。今、ガゼボで話をしております」

「何? 話だと? それではジョナサンは今どうしている?」

「ジョナサン様は今、メイドのポリーがお世話をしております」

するとニコラスが険しい表情になる。

「ジョナサンの面倒も見ずに、来客と話をしているというのか?」

その声には苛立ちが含まれていた。

「確かに仰るとおりですが、それでもジェニファー様はとても良くジョナサン様のお世話をしておりました!」

ジェニファーの為に必死に弁明するシド。

「分かった、もういい。今からガゼボに行く。誰か荷物を頼む。シド、お前は一緒について来い」

「はい。分かりました」

シドは返事をしたが……その胸中は穏やかではいられなかった――

しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 551

あなたにおすすめの小説

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

【完結】没落寸前の貧乏令嬢、お飾りの妻が欲しかったらしい旦那様と白い結婚をしましたら

Rohdea
恋愛
婚期を逃し、没落寸前の貧乏男爵令嬢のアリスは、 ある日、父親から結婚相手を紹介される。 そのお相手は、この国の王女殿下の護衛騎士だったギルバート。 彼は最近、とある事情で王女の護衛騎士を辞めて実家の爵位を継いでいた。 そんな彼が何故、借金の肩代わりをしてまで私と結婚を……? と思ったら、 どうやら、彼は“お飾りの妻”を求めていたらしい。 (なるほど……そういう事だったのね) 彼の事情を理解した(つもり)のアリスは、その結婚を受け入れる事にした。 そうして始まった二人の“白い結婚”生活……これは思っていたよりうまくいっている? と、思ったものの、 何故かギルバートの元、主人でもあり、 彼の想い人である(はずの)王女殿下が妙な動きをし始めて……

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

【完結】私の婚約者は、いつも誰かの想い人

キムラましゅろう
恋愛
私の婚約者はとても素敵な人。 だから彼に想いを寄せる女性は沢山いるけど、私はべつに気にしない。 だって婚約者は私なのだから。 いつも通りのご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不知の誤字脱字病に罹患しております。ごめんあそばせ。(泣) 小説家になろうさんにも時差投稿します。

【完結】身勝手な旦那様と離縁したら、異国で我が子と幸せになれました

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
腹を痛めて産んだ子を蔑ろにする身勝手な旦那様、離縁してくださいませ! 完璧な人生だと思っていた。優しい夫、大切にしてくれる義父母……待望の跡取り息子を産んだ私は、彼らの仕打ちに打ちのめされた。腹を痛めて産んだ我が子を取り戻すため、バレンティナは離縁を選ぶ。復讐する気のなかった彼女だが、新しく出会った隣国貴族に一目惚れで口説かれる。身勝手な元婚家は、嘘がバレて自業自得で没落していった。 崩壊する幸せ⇒異国での出会い⇒ハッピーエンド 元婚家の自業自得ざまぁ有りです。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/07……アルファポリス、女性向けHOT4位 2022/10/05……カクヨム、恋愛週間13位 2022/10/04……小説家になろう、恋愛日間63位 2022/09/30……エブリスタ、トレンド恋愛19位 2022/09/28……連載開始

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

処理中です...