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3-22 ダン 2
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「いや、やっぱり俺なんかが城の中に入るのは申し訳ないよ」
ダンは余程遠慮しているのか、首を振る。
「それだったら、ガゼボはどうかしら? そこだったら椅子もあるし、城の中では無いから気兼ねすること無いでしょう?」
「そうだな、そこならいいかもな」
ジェニファーの提案にダンは笑顔になる。
「それじゃ、早速行きましょう。案内するわ」
「ああ」
2人はガゼボに向かって歩き始めた。シドも後をついて行こうとしたとき、ジェニファーがシドに声をかけてきた。
「シド、ガゼボの場所は知っているからついてこなくても大丈夫よ?」
「え?」
思いがけない言葉に驚くシド。
「で、ですが俺はジェニファー様の護衛騎士ですが……」
「ええ。でも、城の敷地内の中庭で話をするのだから安心でしょう? シドは仕事で忙しいでしょうから大丈夫よ」
シドは何と返事をすればよいか分からなかった。それだけ、今の話はとってショックだったのだ。
そしてそんなシドの様子を黙って見つめるダン。
「その代わり、シドにお願いしたいことがあるのだけどいいかしら?」
「はい、何でしょう?」
「ポリーに少しの間、ジョナサンのお世話をお願いして貰うように伝えてきてくれる?」
「……分かりました。伝えてきます。それでは失礼いたします」
シドは一礼すると、踵を返して去っていく。そのとき、風に乗って2人の会話が聞こえてきた。
「ジョナサンって、確かジェニファーがお世話している子供だったよな?」
「ええ、そうよ。1歳になったばかりなの。とても可愛いのよ」
「へ~。トビーやマークの赤ん坊時代を思い出すな」
「それに、ニックもね」
「ハハ、そのとおりだな」
楽しそうな2人の会話。
けれど、シドには全く分らない話だった。それが、無性に寂しく感じるのだった――
**
ガゼボに到着すると、ダンは珍しそうに辺りを見渡した。
「へ~……これがガゼボか。まるで小さな家みたいだな」
「フフフ、素敵でしょう? でも驚いたわ。突然訪ねてくるのだから」
するとダンが少しだけ悲しそうな表情を浮かべる。
「……もしかして、迷惑だったか?」
「まさか! 迷惑なんて、とんでもないわ。ダンに会えて、とても嬉しいんだから」
顔を綻ばせるジェニファーを見て、ダンも口元に笑みを浮かべる。
「良かった、ジェニファーが元気そうで安心したよ。手紙の様子では何となく落ち込んでいるように思えたから」
ダンはテーブルの上で頬杖をついてジェニファーを見つめる。そんなダンを見ていると、ジェニファーは少し弱音を吐いてしまいたくなった。
「……やっぱり、分かっちゃったかしら? 確かに、少し落ち込んでいたのは事実なの。でもダンに会えて元気が出たわ」
「そうか? そう言ってもらえると嬉しいな」
優しい目でジェニファーを見つめる。
「何だか、ダン変わったわね。やっぱり結婚して家庭を持ったからかしら? 何だかすごく大人びたわね」
するとダンの表情が曇った。
「あ……」
「どうかしたの?」
「実は……そのことなんだけど……何か、サーシャから聞いていないか?」
「いいえ? 何も聞いていないけど?」
ジェニファーは首を傾げた。
「そうか、きっとサーシャはジェニファーに心配かけさせたくなくて、報告しなかったのだろうな」
「え? ダン。もしかして何かあったの?」
「うん……結婚のことだけど……俺、一月ほど前に離婚されたんだよ。妻に別に好きな男性が出来て、俺はもういらないってね。子供もいなかったし、婿養子の立場だったから家を出るしかなくて……今は1人で暮らしているんだ。おふくろは激怒しているから家にも戻れなくてね」
そしてダンは寂しげに笑った――
ダンは余程遠慮しているのか、首を振る。
「それだったら、ガゼボはどうかしら? そこだったら椅子もあるし、城の中では無いから気兼ねすること無いでしょう?」
「そうだな、そこならいいかもな」
ジェニファーの提案にダンは笑顔になる。
「それじゃ、早速行きましょう。案内するわ」
「ああ」
2人はガゼボに向かって歩き始めた。シドも後をついて行こうとしたとき、ジェニファーがシドに声をかけてきた。
「シド、ガゼボの場所は知っているからついてこなくても大丈夫よ?」
「え?」
思いがけない言葉に驚くシド。
「で、ですが俺はジェニファー様の護衛騎士ですが……」
「ええ。でも、城の敷地内の中庭で話をするのだから安心でしょう? シドは仕事で忙しいでしょうから大丈夫よ」
シドは何と返事をすればよいか分からなかった。それだけ、今の話はとってショックだったのだ。
そしてそんなシドの様子を黙って見つめるダン。
「その代わり、シドにお願いしたいことがあるのだけどいいかしら?」
「はい、何でしょう?」
「ポリーに少しの間、ジョナサンのお世話をお願いして貰うように伝えてきてくれる?」
「……分かりました。伝えてきます。それでは失礼いたします」
シドは一礼すると、踵を返して去っていく。そのとき、風に乗って2人の会話が聞こえてきた。
「ジョナサンって、確かジェニファーがお世話している子供だったよな?」
「ええ、そうよ。1歳になったばかりなの。とても可愛いのよ」
「へ~。トビーやマークの赤ん坊時代を思い出すな」
「それに、ニックもね」
「ハハ、そのとおりだな」
楽しそうな2人の会話。
けれど、シドには全く分らない話だった。それが、無性に寂しく感じるのだった――
**
ガゼボに到着すると、ダンは珍しそうに辺りを見渡した。
「へ~……これがガゼボか。まるで小さな家みたいだな」
「フフフ、素敵でしょう? でも驚いたわ。突然訪ねてくるのだから」
するとダンが少しだけ悲しそうな表情を浮かべる。
「……もしかして、迷惑だったか?」
「まさか! 迷惑なんて、とんでもないわ。ダンに会えて、とても嬉しいんだから」
顔を綻ばせるジェニファーを見て、ダンも口元に笑みを浮かべる。
「良かった、ジェニファーが元気そうで安心したよ。手紙の様子では何となく落ち込んでいるように思えたから」
ダンはテーブルの上で頬杖をついてジェニファーを見つめる。そんなダンを見ていると、ジェニファーは少し弱音を吐いてしまいたくなった。
「……やっぱり、分かっちゃったかしら? 確かに、少し落ち込んでいたのは事実なの。でもダンに会えて元気が出たわ」
「そうか? そう言ってもらえると嬉しいな」
優しい目でジェニファーを見つめる。
「何だか、ダン変わったわね。やっぱり結婚して家庭を持ったからかしら? 何だかすごく大人びたわね」
するとダンの表情が曇った。
「あ……」
「どうかしたの?」
「実は……そのことなんだけど……何か、サーシャから聞いていないか?」
「いいえ? 何も聞いていないけど?」
ジェニファーは首を傾げた。
「そうか、きっとサーシャはジェニファーに心配かけさせたくなくて、報告しなかったのだろうな」
「え? ダン。もしかして何かあったの?」
「うん……結婚のことだけど……俺、一月ほど前に離婚されたんだよ。妻に別に好きな男性が出来て、俺はもういらないってね。子供もいなかったし、婿養子の立場だったから家を出るしかなくて……今は1人で暮らしているんだ。おふくろは激怒しているから家にも戻れなくてね」
そしてダンは寂しげに笑った――
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