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3-9 執事長の疑問
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――20時
ジェニファーはジョナサンと一緒に入浴を済ませた。
「ジョナサン、お湯は気持ちが良かった?」
ジェニファーはバスルームでジョナサンの身体をバスタオルで拭きながら尋ねた。すると、にっこり笑うジョナサン。
「そう、気持ち良かったのね?」
ジェニファーも思わず笑顔になる。
「部屋にバスルームもあって、コックを捻ればお湯が出てくるなんて本当にニコラスの実家はすごいのね……」
ブルック家では当然お湯など出るはずも無かった。台所やバスルームにポンプは設置してあるものの、お湯は沸かさなければ使えなかったのだ。
「さ、もう寝ましょうか?」
寝間着に着替えさせて、自分も夜着に着替えるとジョナサンを抱き上げてベッドへ運ぶと、いつものように子守唄で寝かせつけを始めた……。
――30分後
「眠ったみたいね」
ジェニファーはベッドからそっと離れると、サーシャに向けて手紙を書き始めた。今は『ボニート』にいること。前妻との間に生まれた男の子の母親代わりをしていることなどを詳細に書いた。
「私の名前は伏せておきましょう。サーシャ宛ての手紙なら、叔母様は見ることがないはずだわ」
手紙を書き終え、封をする前にジェニファーはあることに気付いた。
「そうだった……ここのアドレスを知らなかったわ。明日、誰かに聞かなくちゃ……」
そのとき。
――コンコン
部屋にノックの音が響いた。
「あら? 誰かしら?」
カーディガンを羽織り、扉を開けると訪ねてきたのは執事長だった。
「ジェニファー様。夜分に申し訳ございません」
執事長は丁寧に頭を下げてくる。
「え? 何のことでしょう?」
「はい。シドに言われたのですが、お2人の食事を同時に運べば、ジェニファー様がゆっくり食事をできないだろうと指摘されたのです。失念しておりました、大変申し訳ございません」
「そんなこと気にしないで下さい。慣れていますので私なら大丈夫ですから。
「いいえ。ですので明日からはジェニファー様とジョナサン様の食事の時間帯をずらして運ばせて頂きます。希望の時間帯をおっしゃって頂けますか」
「そうですか……? では私とジョナサンの食事の時間を30分程ずらしていただけますか? 勿論ジョナサンが先でお願いします」
「承知いたしました。それでは明朝7時にジョナサン様のお食事を運び、その後ジェニファー様のお食事を運ばせて頂きます。他に何か要望があればおっしゃって下さい」
(要望……そうだわ)
その言葉にジェニファーは思い出した。
「実家に手紙を書きたいので、こちらのアドレスを教えて頂けないでしょうか?」
「アドレスですか?」
執事長はポケットから手帳と万年筆を取り出すと、サラサラとその場で書いて頁を切り取った。
「どうぞ、こちらになります。手紙を書き終えましたら、我々に申し付け下さい」
「何から何までありがとうございます」
笑顔で礼を述べると、何故かじっと執事長は見つめてくる。
「あの……何か?」
「あ、これは大変失礼いたしました。ただ、あまりにもジェニファー様とジェニー様がそっくりでいらしたので」
「そうですね。子供の頃しかジェニーと過ごしたことがありませんが自分でもそう思っていました。違いと言えば、瞳の色位でしょうか?」
すると執事長が質問してきた。
「子供の頃、一緒に過ごしたことがあるのですか?」
「はい、今から15年も前の話ですけど」
「……さようでございましたか。では、私はこれで失礼致します。どうぞゆっくりお休みくださいませ」
「はい、ありがとうございます」
執事長は会釈すると扉を閉じた。
「15年前……? 確か、ジェニー様とニコラス様の出会いも15年前だったはず。これは単なる偶然だろうか? ……いや、考え過ぎだな」
ポツリと呟くと、明日の朝食の時間帯を告げる為に厨房へ足を向けた――
ジェニファーはジョナサンと一緒に入浴を済ませた。
「ジョナサン、お湯は気持ちが良かった?」
ジェニファーはバスルームでジョナサンの身体をバスタオルで拭きながら尋ねた。すると、にっこり笑うジョナサン。
「そう、気持ち良かったのね?」
ジェニファーも思わず笑顔になる。
「部屋にバスルームもあって、コックを捻ればお湯が出てくるなんて本当にニコラスの実家はすごいのね……」
ブルック家では当然お湯など出るはずも無かった。台所やバスルームにポンプは設置してあるものの、お湯は沸かさなければ使えなかったのだ。
「さ、もう寝ましょうか?」
寝間着に着替えさせて、自分も夜着に着替えるとジョナサンを抱き上げてベッドへ運ぶと、いつものように子守唄で寝かせつけを始めた……。
――30分後
「眠ったみたいね」
ジェニファーはベッドからそっと離れると、サーシャに向けて手紙を書き始めた。今は『ボニート』にいること。前妻との間に生まれた男の子の母親代わりをしていることなどを詳細に書いた。
「私の名前は伏せておきましょう。サーシャ宛ての手紙なら、叔母様は見ることがないはずだわ」
手紙を書き終え、封をする前にジェニファーはあることに気付いた。
「そうだった……ここのアドレスを知らなかったわ。明日、誰かに聞かなくちゃ……」
そのとき。
――コンコン
部屋にノックの音が響いた。
「あら? 誰かしら?」
カーディガンを羽織り、扉を開けると訪ねてきたのは執事長だった。
「ジェニファー様。夜分に申し訳ございません」
執事長は丁寧に頭を下げてくる。
「え? 何のことでしょう?」
「はい。シドに言われたのですが、お2人の食事を同時に運べば、ジェニファー様がゆっくり食事をできないだろうと指摘されたのです。失念しておりました、大変申し訳ございません」
「そんなこと気にしないで下さい。慣れていますので私なら大丈夫ですから。
「いいえ。ですので明日からはジェニファー様とジョナサン様の食事の時間帯をずらして運ばせて頂きます。希望の時間帯をおっしゃって頂けますか」
「そうですか……? では私とジョナサンの食事の時間を30分程ずらしていただけますか? 勿論ジョナサンが先でお願いします」
「承知いたしました。それでは明朝7時にジョナサン様のお食事を運び、その後ジェニファー様のお食事を運ばせて頂きます。他に何か要望があればおっしゃって下さい」
(要望……そうだわ)
その言葉にジェニファーは思い出した。
「実家に手紙を書きたいので、こちらのアドレスを教えて頂けないでしょうか?」
「アドレスですか?」
執事長はポケットから手帳と万年筆を取り出すと、サラサラとその場で書いて頁を切り取った。
「どうぞ、こちらになります。手紙を書き終えましたら、我々に申し付け下さい」
「何から何までありがとうございます」
笑顔で礼を述べると、何故かじっと執事長は見つめてくる。
「あの……何か?」
「あ、これは大変失礼いたしました。ただ、あまりにもジェニファー様とジェニー様がそっくりでいらしたので」
「そうですね。子供の頃しかジェニーと過ごしたことがありませんが自分でもそう思っていました。違いと言えば、瞳の色位でしょうか?」
すると執事長が質問してきた。
「子供の頃、一緒に過ごしたことがあるのですか?」
「はい、今から15年も前の話ですけど」
「……さようでございましたか。では、私はこれで失礼致します。どうぞゆっくりお休みくださいませ」
「はい、ありがとうございます」
執事長は会釈すると扉を閉じた。
「15年前……? 確か、ジェニー様とニコラス様の出会いも15年前だったはず。これは単なる偶然だろうか? ……いや、考え過ぎだな」
ポツリと呟くと、明日の朝食の時間帯を告げる為に厨房へ足を向けた――
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