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2−12 ニコラスとシド
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ジェニファーを送り届けたシドは、足早にニコラスの執務室へ向っていた。
(やはり、そうだったんだ……。どうりでおかしいと思った。ニコラス様だって、あんなことになっていなければ、違和感を抱いたに違いないのに……!)
グッと歯を噛み締め、シドはニコラスの書斎の前にやってくるとノックした。
――コンコン
『誰だ?』
扉の奥からニコラスの声が聞こえる。
「シドです」
『入ってくれ』
返事が聞こえ、シドは扉を開けた。
「失礼いたします」
室内に入ると、ニコラスは書類をカバンに入れている最中だった。
「ジェニファー様をお部屋に送ってまいりました」
「そうか、後1時間後には出発する。到着して早々で悪いが、お前も出立の準備をしてくれ」
ニコラスはシドの顔を見ることもなく、用件を伝える。
「ええ、そのことですが……ジェニファー様もお連れしてはどうでしょう?」
「何だって?」
その言葉にニコラスは顔を上げる。
「お前は本気でそんなことを言っているのか? 何故彼女を一緒に連れて行かなければならない? 準備だって出来ていないじゃないか」
「準備など必要無いと思いますが。旅の道程で買い揃えれば良いではありませんか。第一お2人は新婚ですよね? 諸外国を周るのですから新婚旅行を兼ねて同行してもらうのも良いのではありませんか? ジェニー様のときは行かれましたよね?」
「新婚だと? お前だって分かっているだろう? ジェニファーと結婚したのは俺の意思じゃない。ジェニーの遺言だからだ。ジョナサンを任せられるのはジェニファーしかいないと手紙が残されていたからだぞ? 大体ジョナサンはどうするつもりだ」
ニコラスの表情が険しくなる。
「一緒に連れて行かれれば良いではありませんか。メイドのポリーとか言う人物と共に」
「シド! いい加減にしろ! 何故、お前を護衛として視察に同行させるのか分かっているのか!?」
「……いつ何処で暗殺の可能性があるか、分からないからですよね? なので俺以外にも騎士を連れて行かれるのでしょう?」
「その通りだ。視察だって油断は出来ないことくらい、お前だって知っているだろう?」
ため息をつくニコラス。
「ですが、当主になられてからはまだ1度も暗殺の危機にさらされていません。逆にジェニファー様をあの屋敷に残すほうが危険なのではありませんか?」
「どういうことだ?」
「大勢の使用人を辞めさせたことは、恐らく先代当主やパトリック様、それにイザベラ様の耳にいずれ入るでしょう。そうなるとニコラス様不在時に屋敷を訪れる可能性があります。何も分らないジェニファー様が1人残されて、対応出来ると思いますか?」
「! それは……だが、視察に同行させるのは……やはり無理だ」
シドはニコラスを無言で見つめる。
「……そうだ。なら俺が子供時代に住んでいた屋敷に移そう。あの屋敷は幸い義母やパトリックには知られていないからな」
「では、私が伝えてきます」
「だが、お前は準備があるだろう? 伝言なら別の者に頼めば良いじゃないか」
その言葉にニコラスは少しだけ驚いた。
「私はいつでも出かけられますので、大丈夫です。それではジェニファー様に本日中にここを出るように伝えて参ります」
「あ、ああ。分かった」
いつになく積極的なシドに押されてニコラスは返事をすると、シドは一礼して足早に書斎を出て行った。
――バタン
「……一体、シドはどういうつもりなのだ? ジェニーからは距離を置いていたくせに、初対面のジェニファーとは親しげに話をするなんて……」
そして、あることを考えた――
(やはり、そうだったんだ……。どうりでおかしいと思った。ニコラス様だって、あんなことになっていなければ、違和感を抱いたに違いないのに……!)
グッと歯を噛み締め、シドはニコラスの書斎の前にやってくるとノックした。
――コンコン
『誰だ?』
扉の奥からニコラスの声が聞こえる。
「シドです」
『入ってくれ』
返事が聞こえ、シドは扉を開けた。
「失礼いたします」
室内に入ると、ニコラスは書類をカバンに入れている最中だった。
「ジェニファー様をお部屋に送ってまいりました」
「そうか、後1時間後には出発する。到着して早々で悪いが、お前も出立の準備をしてくれ」
ニコラスはシドの顔を見ることもなく、用件を伝える。
「ええ、そのことですが……ジェニファー様もお連れしてはどうでしょう?」
「何だって?」
その言葉にニコラスは顔を上げる。
「お前は本気でそんなことを言っているのか? 何故彼女を一緒に連れて行かなければならない? 準備だって出来ていないじゃないか」
「準備など必要無いと思いますが。旅の道程で買い揃えれば良いではありませんか。第一お2人は新婚ですよね? 諸外国を周るのですから新婚旅行を兼ねて同行してもらうのも良いのではありませんか? ジェニー様のときは行かれましたよね?」
「新婚だと? お前だって分かっているだろう? ジェニファーと結婚したのは俺の意思じゃない。ジェニーの遺言だからだ。ジョナサンを任せられるのはジェニファーしかいないと手紙が残されていたからだぞ? 大体ジョナサンはどうするつもりだ」
ニコラスの表情が険しくなる。
「一緒に連れて行かれれば良いではありませんか。メイドのポリーとか言う人物と共に」
「シド! いい加減にしろ! 何故、お前を護衛として視察に同行させるのか分かっているのか!?」
「……いつ何処で暗殺の可能性があるか、分からないからですよね? なので俺以外にも騎士を連れて行かれるのでしょう?」
「その通りだ。視察だって油断は出来ないことくらい、お前だって知っているだろう?」
ため息をつくニコラス。
「ですが、当主になられてからはまだ1度も暗殺の危機にさらされていません。逆にジェニファー様をあの屋敷に残すほうが危険なのではありませんか?」
「どういうことだ?」
「大勢の使用人を辞めさせたことは、恐らく先代当主やパトリック様、それにイザベラ様の耳にいずれ入るでしょう。そうなるとニコラス様不在時に屋敷を訪れる可能性があります。何も分らないジェニファー様が1人残されて、対応出来ると思いますか?」
「! それは……だが、視察に同行させるのは……やはり無理だ」
シドはニコラスを無言で見つめる。
「……そうだ。なら俺が子供時代に住んでいた屋敷に移そう。あの屋敷は幸い義母やパトリックには知られていないからな」
「では、私が伝えてきます」
「だが、お前は準備があるだろう? 伝言なら別の者に頼めば良いじゃないか」
その言葉にニコラスは少しだけ驚いた。
「私はいつでも出かけられますので、大丈夫です。それではジェニファー様に本日中にここを出るように伝えて参ります」
「あ、ああ。分かった」
いつになく積極的なシドに押されてニコラスは返事をすると、シドは一礼して足早に書斎を出て行った。
――バタン
「……一体、シドはどういうつもりなのだ? ジェニーからは距離を置いていたくせに、初対面のジェニファーとは親しげに話をするなんて……」
そして、あることを考えた――
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