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1−8 初恋の相手、ニコラスからの手紙
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悲しいくらいにあっさりと知らされたジェニーの死は、ジェニファーの心を傷つけるのには十分だった。
ジェニーが何処でどのような死を迎えたのか、埋葬場所すら教えてもらえない現状は辛すぎる出来事だった。
この一件でますますジェニファーの心は深く傷ついた。
悲しみの中、日々の生活のために働き、疲れ切って眠りにつく……そんな日々を過ごすジェニファー。
やがて……ある転機が訪れることになる――
****
ジェニーが亡くなった知らせを受けてから、約1年の歳月が流れていた。
保育園の仕事を終えて帰宅すると、先に帰っていたサーシャが食事の用意をしていた。
「あ、お帰りなさい。ジェニファー」
「ただいま、サーシャ。もう仕事から帰っていたのね。すぐに手伝うわ」
エプロンを付けて袖まくりをしようとしたところで、サーシャが小さく手招きした。
「ジェニファー。ちょっと来て」
「何?」
サーシャに近づくと、そっと手紙を渡された。
「手紙……?」
「ええ。仕事から帰って郵便ポストを覗いてみるとジェニファーあての手紙が入っていたのよ。母さんに見つかる前で良かったわ。食事の用意は私がするから、ここで手紙を読んだら?」
アンは、すぐにジェニファー宛の手紙を勝手に開封して読んでしまうのだ。
「ありがとう、サーシャ」
そこでジェニファーは台所に置かれた椅子に座ると、差出人を確認した。
その瞬間、目を疑う。
「え……? ま、まさか……」
口の中で小さく呟きが漏れてしまう。けれど、それもそのはず。
差出人は他でもない。あの懐かしいニコラスからだったのである。
「どうかしたの? ジェニファー」
野菜を切っていたサーシャが尋ねてきた。
「昔の知りあいからの手紙だったから、ちょっと驚いちゃって……」
「そうだったのね。あ、ごめんなさい。手紙を読む邪魔をしちゃっているわね。静かにしているわ」
「ありがとう、サーシャ」
サーシャが再び料理を作り始めたので、ジェニファーは手紙を開封した。
(一体、手紙には何と書いてあるのかしら……今頃私にどんな用事で……?)
ジェニファーにはニコラスが何と書いてきたのか、全く見当がつかなかった。
緊張しながら手紙を広げ、目を通し始めた。
『初めまして。私の名はニコラス・テイラー。ジェニーの夫です……』
手紙の最初の記述を目にして、ジェニファーは思った。
(初めまして……そうよね。ニコラスにとって私は、会ったこともない相手になるのよね……)
分かってはいたけれども、そのことがとても寂しく感じられた。ジェニファーは再び手紙の続きを読み始めた。
『私の妻は、あなたの従姉妹であるジェニー・フォルクマンでした。彼女は生まれながらに病弱で、結婚後僅か1年で出産と引き換えに命を落としてしまいました。彼女は遺言を遺していました。それは、あなたがもし誰とも結婚をしていないのであれば自分の亡き後、再婚して欲しいという遺言です。突然の手紙ではありますが、返事を待たせていただきます』
「え……ジェニーに子供が……いたの? それに……結婚の申し込みなんて……」
ニコラスからの結婚の申し込み……それはまるでジェニファーにとって信じられない、夢のような話だった。
「何!? 結婚の話!? もしかしてプロポーズされたの!? そんなお相手がジェニファーにいたの!?」
結婚という話にサーシャが飛びついてきた。
「まさか! 私に結婚の話が持ち上がったことなんか一度もないのは、サーシャが良く知っているでしょう? この人は、私が10歳の時にフォルクマン邸でお世話になった時に知り合った人なの」
「そうだったのね。ジェニファーから、あまりあの時の話は聞いたことが無かったけど……その人のこと、好きだったの?」
「え、ええ……初恋の人だったわ……」
ジェニファーは顔を赤らめながら頷く。
「すごいわ! 初恋の相手からの結婚の申し込みなんて! それならすぐにお返事を書かないと!」
「そうね、そうするわ」
この頃のジェニファーはニコラスからの結婚の申込みの手紙をもらい、すっかり浮かれていた。
自分がどれほどニコラスに憎悪されていたのかも知らずに――
ジェニーが何処でどのような死を迎えたのか、埋葬場所すら教えてもらえない現状は辛すぎる出来事だった。
この一件でますますジェニファーの心は深く傷ついた。
悲しみの中、日々の生活のために働き、疲れ切って眠りにつく……そんな日々を過ごすジェニファー。
やがて……ある転機が訪れることになる――
****
ジェニーが亡くなった知らせを受けてから、約1年の歳月が流れていた。
保育園の仕事を終えて帰宅すると、先に帰っていたサーシャが食事の用意をしていた。
「あ、お帰りなさい。ジェニファー」
「ただいま、サーシャ。もう仕事から帰っていたのね。すぐに手伝うわ」
エプロンを付けて袖まくりをしようとしたところで、サーシャが小さく手招きした。
「ジェニファー。ちょっと来て」
「何?」
サーシャに近づくと、そっと手紙を渡された。
「手紙……?」
「ええ。仕事から帰って郵便ポストを覗いてみるとジェニファーあての手紙が入っていたのよ。母さんに見つかる前で良かったわ。食事の用意は私がするから、ここで手紙を読んだら?」
アンは、すぐにジェニファー宛の手紙を勝手に開封して読んでしまうのだ。
「ありがとう、サーシャ」
そこでジェニファーは台所に置かれた椅子に座ると、差出人を確認した。
その瞬間、目を疑う。
「え……? ま、まさか……」
口の中で小さく呟きが漏れてしまう。けれど、それもそのはず。
差出人は他でもない。あの懐かしいニコラスからだったのである。
「どうかしたの? ジェニファー」
野菜を切っていたサーシャが尋ねてきた。
「昔の知りあいからの手紙だったから、ちょっと驚いちゃって……」
「そうだったのね。あ、ごめんなさい。手紙を読む邪魔をしちゃっているわね。静かにしているわ」
「ありがとう、サーシャ」
サーシャが再び料理を作り始めたので、ジェニファーは手紙を開封した。
(一体、手紙には何と書いてあるのかしら……今頃私にどんな用事で……?)
ジェニファーにはニコラスが何と書いてきたのか、全く見当がつかなかった。
緊張しながら手紙を広げ、目を通し始めた。
『初めまして。私の名はニコラス・テイラー。ジェニーの夫です……』
手紙の最初の記述を目にして、ジェニファーは思った。
(初めまして……そうよね。ニコラスにとって私は、会ったこともない相手になるのよね……)
分かってはいたけれども、そのことがとても寂しく感じられた。ジェニファーは再び手紙の続きを読み始めた。
『私の妻は、あなたの従姉妹であるジェニー・フォルクマンでした。彼女は生まれながらに病弱で、結婚後僅か1年で出産と引き換えに命を落としてしまいました。彼女は遺言を遺していました。それは、あなたがもし誰とも結婚をしていないのであれば自分の亡き後、再婚して欲しいという遺言です。突然の手紙ではありますが、返事を待たせていただきます』
「え……ジェニーに子供が……いたの? それに……結婚の申し込みなんて……」
ニコラスからの結婚の申し込み……それはまるでジェニファーにとって信じられない、夢のような話だった。
「何!? 結婚の話!? もしかしてプロポーズされたの!? そんなお相手がジェニファーにいたの!?」
結婚という話にサーシャが飛びついてきた。
「まさか! 私に結婚の話が持ち上がったことなんか一度もないのは、サーシャが良く知っているでしょう? この人は、私が10歳の時にフォルクマン邸でお世話になった時に知り合った人なの」
「そうだったのね。ジェニファーから、あまりあの時の話は聞いたことが無かったけど……その人のこと、好きだったの?」
「え、ええ……初恋の人だったわ……」
ジェニファーは顔を赤らめながら頷く。
「すごいわ! 初恋の相手からの結婚の申し込みなんて! それならすぐにお返事を書かないと!」
「そうね、そうするわ」
この頃のジェニファーはニコラスからの結婚の申込みの手紙をもらい、すっかり浮かれていた。
自分がどれほどニコラスに憎悪されていたのかも知らずに――
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