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3−24 緊急事態

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 辻馬車に乗って、屋敷に戻ると何やら騒がしい雰囲気に包まれていることにジェニファーは気付いた。

「何かあったのかしら……?」

不安な気持ちで廊下を歩いていると、慌ただしくこちらへ向ってくるメイドに出会った。

「まぁ! ジェニファー様! 一体今まで何処に行ってらしたのですか!?


メイドはジェニファーを見ると血相を変えて駆け寄ってきた。

「え? あ、あの……町に用事があって、それで……」

「何故ジェニー様を残して外出されたのです!? 今、ジェニー様は喘息の発作で大変な状況になっているのですよ!」

「え! ジェニーが!?」

ジェニファーは慌ててジェニーの部屋へ向って走った。

「お待ち下さい! ジェニファー様!」

メイドが止めるも、構わずジェニファーは廊下を走った。途中、何人もの使用人にすれ違って引き止められた。
それでもジェニーの部屋を目指して走り続けた。

「はぁ……はぁ……」

部屋の前にたどり着き、息を整えるとジェニファーはノックもせずに扉を開けた。

「ジェニー!」

部屋へ飛び込み、息を呑んだ。

「ジェニーッ! しっかりしてくれ! 頼む! ドクター!! 何とかしてくれ!」

伯爵がベッドを覗き込んで、必死に叫んでいる。

「伯爵、落ち着いて下さい! 病人の前です! 今吸入の用意を致しますから!」

「……くそっ……! 何故こんなことに……ん?」


そのとき。
伯爵は背後に人の気配を感じて振り向いた。するとそこには青い顔で震えながら立っているジェニファーの姿があった。

「ジェニファーッ!!」

伯爵は今まで見たこともない、怒りの表情を浮かべてジェニファーに近づいてくる。

「あ……は、伯爵様……」

恐怖で震えるジェニファーに伯爵位は怒鳴りつけた。

「一体、今まで何処に行っていたのだ! 前から言っていただろう? ジェニーは喘息持ちで身体が弱いので1人にせずに、傍についているようにと! お前をここに呼んだのは話し相手だけではない! ジェニーに何かあった場合すぐに我々に知らせる為だ! それなのに……ジェニーを置いて、勝手に遊びに行っていたとは……」

「ご、ごめんなさい……伯爵様。わ、私……そ、そんなつもりは……そ、それでジェニーの様子は……」

震えながらも、何とか必死で言葉を紡ぐジェニファー。

「黙れ!! お前にジェニーの具合を心配する資格など無い!! 今すぐにこの部屋から出ていけ! お前の姿など見たくもない!!」

「は、はい!」

震えながらジェニファーは返事をすると、泣きたい気持ちを必死で押さえて部屋を飛び出した。

「全く……なんて忌々しい娘だ……」

ジェニファーが出て行った扉を怒りの眼差しで睨みつけると、すぐに喘息で苦しむ愛娘の手を握りしめるのだった――


****

「ごめんなさい、ごめんなさい……」

ジェニファーは自室のソファで膝を抱えて座り込み、グズグズと泣いていた。

「どうしよう……ジェニーが死んでしまったら、私のせいだわ……」

今、ジェニファーは激しく後悔していた。
朝からジェニーの具合はあまり良くなかった。いくらジェニーに頼まれても断るべきだった。

「神様、どうかジェニーの命をお助け下さい……私の命を持っていってもいいですからお願いします……ジェニーを死なせないで下さい……」

ボロボロと泣きながらジェニファーは1人自室にこもって、祈りを捧げ続けるのだった――
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