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第8章 14 本棚の奥の隠し部屋
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今、5人はリヒャルトの執務室の扉の前に来ていた。
「自分の部屋へ入るのも久しぶりだな」
リヒャルトはノブに手を掛け、カチャリと回して扉を開けて、持っていたカンテラで部屋の内部を照らした。そして次の瞬間、その場にいた全員が部屋の様子を目の当たりにしてい目を見開いた。
「こ、これは一体…!」
リヒャルトは驚きの声を上げた。
机の引き出しは全て開け放され、床と言わず机の上と言わず書類が散らばっている。中には踏みつぶされたのだろうか。足跡が付いている書類まで床に落ち、ビリビリに破かれた書類まで散乱していた。
リカルドは部屋に入り、書類を拾い上げてみた。その書類は数年前の税収が記載された用紙だった。他には会議の記録や観光業についての説明…どれもが左程重要書類で無い事は容易に見て取れた。
「恐らくアグネスの仕業ではないでしょうか。この屋敷の全財産を奪う為の重要書類を探してみたもののそれに関わる書類が一切見当たらずに腹立ちまぎれこのような状態にしたのかもしれませんね」
カンテラを持ち、床を照らしながらリカルドが言う。
「それにしても…片付けすらやらないとは…一体使用人たちは何をしていたのだ?」
ヴィクトールは窓枠に人差し指を走らせ、埃がたまっていることに眉をひそめた。
「アグネスは使用人たちがこの部屋に入ることを一切禁止していたので我々は一度も足を踏み入れたことが無かったのです」
ジャックの言葉に、忌々し気にグスタフが言う。
「きっとこの部屋をこんな状態にしたことを使用人達に知られたくなかったのでしょうね」
リカルドの言葉にリヒャルトはグッと拳を握りしめた。
「片付けたい心境は山々ですが、そんな事をすればすぐにでもバレてしまいます。ここは我慢するしかありませんよ」
ヴィクトールがリヒャルトに声を掛けた。
「ああ…分っている」
リヒャルトはアグネスに対する新たな怒りを募らせながら、本棚へ向かった。そして真ん中の列にある本棚から1冊の本を抜き取った。するとそこには床面の部分に押しボタンが隠されていた。リカルドは無言で押しボタンを押すと。蓋が開いた。そこにはナンバーロック式の鍵が隠されていたのである。
「…」
リヒャルトは無言でカギのナンバーをカチカチと合わせると壁面に触れた。すると壁面が動き、中にレバーがある。そのレバーを掴んで下げると突然本棚がまるで扉の様に開いて目の前に小さな小部屋が現れた。
「こんなところに隠し部屋が…」
「全く知りませんでした」
10年以上この屋敷に仕えていたヴィクトールとグスタフは未知の隠し部屋が現れたことに対して驚きを隠せなかった。
「この隠し部屋の場所を知るのは代々この屋敷の当主しか知らないのだが…」
リヒャルトが口を開いた。
「宜しかったのですか?そんな場所を我らに教えて」
リカルドの言葉にリヒャルトは頷く。
「ええ、勿論です。私は貴方達を信頼していますから…」
そしてリヒャルトは全員を見渡すと言った。
「では中へ入りましょう」
リヒャルトの言葉に彼らは一斉に頷いた―。
「自分の部屋へ入るのも久しぶりだな」
リヒャルトはノブに手を掛け、カチャリと回して扉を開けて、持っていたカンテラで部屋の内部を照らした。そして次の瞬間、その場にいた全員が部屋の様子を目の当たりにしてい目を見開いた。
「こ、これは一体…!」
リヒャルトは驚きの声を上げた。
机の引き出しは全て開け放され、床と言わず机の上と言わず書類が散らばっている。中には踏みつぶされたのだろうか。足跡が付いている書類まで床に落ち、ビリビリに破かれた書類まで散乱していた。
リカルドは部屋に入り、書類を拾い上げてみた。その書類は数年前の税収が記載された用紙だった。他には会議の記録や観光業についての説明…どれもが左程重要書類で無い事は容易に見て取れた。
「恐らくアグネスの仕業ではないでしょうか。この屋敷の全財産を奪う為の重要書類を探してみたもののそれに関わる書類が一切見当たらずに腹立ちまぎれこのような状態にしたのかもしれませんね」
カンテラを持ち、床を照らしながらリカルドが言う。
「それにしても…片付けすらやらないとは…一体使用人たちは何をしていたのだ?」
ヴィクトールは窓枠に人差し指を走らせ、埃がたまっていることに眉をひそめた。
「アグネスは使用人たちがこの部屋に入ることを一切禁止していたので我々は一度も足を踏み入れたことが無かったのです」
ジャックの言葉に、忌々し気にグスタフが言う。
「きっとこの部屋をこんな状態にしたことを使用人達に知られたくなかったのでしょうね」
リカルドの言葉にリヒャルトはグッと拳を握りしめた。
「片付けたい心境は山々ですが、そんな事をすればすぐにでもバレてしまいます。ここは我慢するしかありませんよ」
ヴィクトールがリヒャルトに声を掛けた。
「ああ…分っている」
リヒャルトはアグネスに対する新たな怒りを募らせながら、本棚へ向かった。そして真ん中の列にある本棚から1冊の本を抜き取った。するとそこには床面の部分に押しボタンが隠されていた。リカルドは無言で押しボタンを押すと。蓋が開いた。そこにはナンバーロック式の鍵が隠されていたのである。
「…」
リヒャルトは無言でカギのナンバーをカチカチと合わせると壁面に触れた。すると壁面が動き、中にレバーがある。そのレバーを掴んで下げると突然本棚がまるで扉の様に開いて目の前に小さな小部屋が現れた。
「こんなところに隠し部屋が…」
「全く知りませんでした」
10年以上この屋敷に仕えていたヴィクトールとグスタフは未知の隠し部屋が現れたことに対して驚きを隠せなかった。
「この隠し部屋の場所を知るのは代々この屋敷の当主しか知らないのだが…」
リヒャルトが口を開いた。
「宜しかったのですか?そんな場所を我らに教えて」
リカルドの言葉にリヒャルトは頷く。
「ええ、勿論です。私は貴方達を信頼していますから…」
そしてリヒャルトは全員を見渡すと言った。
「では中へ入りましょう」
リヒャルトの言葉に彼らは一斉に頷いた―。
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