187 / 199
第8章 14 本棚の奥の隠し部屋
しおりを挟む
今、5人はリヒャルトの執務室の扉の前に来ていた。
「自分の部屋へ入るのも久しぶりだな」
リヒャルトはノブに手を掛け、カチャリと回して扉を開けて、持っていたカンテラで部屋の内部を照らした。そして次の瞬間、その場にいた全員が部屋の様子を目の当たりにしてい目を見開いた。
「こ、これは一体…!」
リヒャルトは驚きの声を上げた。
机の引き出しは全て開け放され、床と言わず机の上と言わず書類が散らばっている。中には踏みつぶされたのだろうか。足跡が付いている書類まで床に落ち、ビリビリに破かれた書類まで散乱していた。
リカルドは部屋に入り、書類を拾い上げてみた。その書類は数年前の税収が記載された用紙だった。他には会議の記録や観光業についての説明…どれもが左程重要書類で無い事は容易に見て取れた。
「恐らくアグネスの仕業ではないでしょうか。この屋敷の全財産を奪う為の重要書類を探してみたもののそれに関わる書類が一切見当たらずに腹立ちまぎれこのような状態にしたのかもしれませんね」
カンテラを持ち、床を照らしながらリカルドが言う。
「それにしても…片付けすらやらないとは…一体使用人たちは何をしていたのだ?」
ヴィクトールは窓枠に人差し指を走らせ、埃がたまっていることに眉をひそめた。
「アグネスは使用人たちがこの部屋に入ることを一切禁止していたので我々は一度も足を踏み入れたことが無かったのです」
ジャックの言葉に、忌々し気にグスタフが言う。
「きっとこの部屋をこんな状態にしたことを使用人達に知られたくなかったのでしょうね」
リカルドの言葉にリヒャルトはグッと拳を握りしめた。
「片付けたい心境は山々ですが、そんな事をすればすぐにでもバレてしまいます。ここは我慢するしかありませんよ」
ヴィクトールがリヒャルトに声を掛けた。
「ああ…分っている」
リヒャルトはアグネスに対する新たな怒りを募らせながら、本棚へ向かった。そして真ん中の列にある本棚から1冊の本を抜き取った。するとそこには床面の部分に押しボタンが隠されていた。リカルドは無言で押しボタンを押すと。蓋が開いた。そこにはナンバーロック式の鍵が隠されていたのである。
「…」
リヒャルトは無言でカギのナンバーをカチカチと合わせると壁面に触れた。すると壁面が動き、中にレバーがある。そのレバーを掴んで下げると突然本棚がまるで扉の様に開いて目の前に小さな小部屋が現れた。
「こんなところに隠し部屋が…」
「全く知りませんでした」
10年以上この屋敷に仕えていたヴィクトールとグスタフは未知の隠し部屋が現れたことに対して驚きを隠せなかった。
「この隠し部屋の場所を知るのは代々この屋敷の当主しか知らないのだが…」
リヒャルトが口を開いた。
「宜しかったのですか?そんな場所を我らに教えて」
リカルドの言葉にリヒャルトは頷く。
「ええ、勿論です。私は貴方達を信頼していますから…」
そしてリヒャルトは全員を見渡すと言った。
「では中へ入りましょう」
リヒャルトの言葉に彼らは一斉に頷いた―。
「自分の部屋へ入るのも久しぶりだな」
リヒャルトはノブに手を掛け、カチャリと回して扉を開けて、持っていたカンテラで部屋の内部を照らした。そして次の瞬間、その場にいた全員が部屋の様子を目の当たりにしてい目を見開いた。
「こ、これは一体…!」
リヒャルトは驚きの声を上げた。
机の引き出しは全て開け放され、床と言わず机の上と言わず書類が散らばっている。中には踏みつぶされたのだろうか。足跡が付いている書類まで床に落ち、ビリビリに破かれた書類まで散乱していた。
リカルドは部屋に入り、書類を拾い上げてみた。その書類は数年前の税収が記載された用紙だった。他には会議の記録や観光業についての説明…どれもが左程重要書類で無い事は容易に見て取れた。
「恐らくアグネスの仕業ではないでしょうか。この屋敷の全財産を奪う為の重要書類を探してみたもののそれに関わる書類が一切見当たらずに腹立ちまぎれこのような状態にしたのかもしれませんね」
カンテラを持ち、床を照らしながらリカルドが言う。
「それにしても…片付けすらやらないとは…一体使用人たちは何をしていたのだ?」
ヴィクトールは窓枠に人差し指を走らせ、埃がたまっていることに眉をひそめた。
「アグネスは使用人たちがこの部屋に入ることを一切禁止していたので我々は一度も足を踏み入れたことが無かったのです」
ジャックの言葉に、忌々し気にグスタフが言う。
「きっとこの部屋をこんな状態にしたことを使用人達に知られたくなかったのでしょうね」
リカルドの言葉にリヒャルトはグッと拳を握りしめた。
「片付けたい心境は山々ですが、そんな事をすればすぐにでもバレてしまいます。ここは我慢するしかありませんよ」
ヴィクトールがリヒャルトに声を掛けた。
「ああ…分っている」
リヒャルトはアグネスに対する新たな怒りを募らせながら、本棚へ向かった。そして真ん中の列にある本棚から1冊の本を抜き取った。するとそこには床面の部分に押しボタンが隠されていた。リカルドは無言で押しボタンを押すと。蓋が開いた。そこにはナンバーロック式の鍵が隠されていたのである。
「…」
リヒャルトは無言でカギのナンバーをカチカチと合わせると壁面に触れた。すると壁面が動き、中にレバーがある。そのレバーを掴んで下げると突然本棚がまるで扉の様に開いて目の前に小さな小部屋が現れた。
「こんなところに隠し部屋が…」
「全く知りませんでした」
10年以上この屋敷に仕えていたヴィクトールとグスタフは未知の隠し部屋が現れたことに対して驚きを隠せなかった。
「この隠し部屋の場所を知るのは代々この屋敷の当主しか知らないのだが…」
リヒャルトが口を開いた。
「宜しかったのですか?そんな場所を我らに教えて」
リカルドの言葉にリヒャルトは頷く。
「ええ、勿論です。私は貴方達を信頼していますから…」
そしてリヒャルトは全員を見渡すと言った。
「では中へ入りましょう」
リヒャルトの言葉に彼らは一斉に頷いた―。
1
お気に入りに追加
706
あなたにおすすめの小説
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
英雄になった夫が妻子と帰還するそうです
白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。
愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。
好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。
今、目の前にいる人は誰なのだろう?
ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。
珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥)
ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。
見捨てられたのは私
梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。
ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。
ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。
何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。
妹が私の婚約者を奪うのはこれで九度目のことですが、父も私も特に気にしていません。なぜならば……
オコムラナオ
恋愛
「お前なんてもういらないから。別れてくれ。
代わりに俺は、レピアさんと婚約する」
妹のレピアに婚約者を奪われたレフィー侯爵令嬢は、「ああ、またか」と思った。
これまでにも、何度も妹に婚約者を奪われてきた。
しかしレフィー侯爵令嬢が、そのことを深く思い悩む様子はない。
彼女は胸のうちに、ある秘密を抱えていた。
主役達の物語の裏側で(+α)
フィン
恋愛
輝かしい主役達の物語の裏側で涙を飲む者達がいることを知るものは少ない。
世界の命運を掛けた旅の中で大恋愛を遂げた聖なる御子と彼を慎ましく支えた王女
彼等は確かに物語の主役そのものに違いない。
「だが俺にとっては婚約者を奪った間男と浮気者な婚約者様でしかない!!」
突然の婚約破棄に始まり長年の忠誠を裏切られ間男の将来を祝福しろとまで命じられた不遇なる騎士は血を吐くような想いで叫ぶ!!
これは誰しもが羨む英雄譚の裏側で日陰者にされた一人の男の物語である。
短編だった本編に前日譚、後日譚を追加します。
【完結】愛する人には婚約者がいました。~愛する人もその婚約者も私の幼馴染みだから、私は二人を祝福することに決めたんです。~
業 藍衣
恋愛
公爵令嬢のローラには心から愛する人がいた。
しかし、その人には婚約者がいた。
愛する人は昔からの幼馴染み、その相手の婚約者も同じく幼馴染みであることから、彼女は二人が幸せになるならと、二人を祝福するとこにした。
そんな二人の婚約式の後、ローラ自身も、強力な力を持つ王子と婚約をすることとなる。
ローラは王子を愛そうと思うのだけれど、それがなかなか出来ない。
自分の気持ちを抑えながら、日々を過ごすローラの物語。
もちろんフィクションです。
名前等は実際のものと関係ないです。
設定緩めですので、あたたかい目で見守って下さい。
転生貧乏令嬢メイドは見なかった!
seo
恋愛
血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。
いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。
これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。
#逆ハー風なところあり
#他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)
「……あなた誰?」自殺を図った妻が目覚めた時、彼女は夫である僕を見てそう言った
Kouei
恋愛
大量の睡眠薬を飲んで自殺を図った妻。
侍女の発見が早かったため一命を取り留めたが、
4日間意識不明の状態が続いた。
5日目に意識を取り戻し、安心したのもつかの間。
「……あなた誰?」
目覚めた妻は僕と過ごした三年間の記憶を全て忘れていた。
僕との事だけを……
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる