181 / 199
第8章 8 怒りのリヒャルト
しおりを挟む
ガチャリ…
扉が開かれ、アンドレアはフラリと部屋の中へ入って来た。が…彼らはアンドレアの姿を見た時に絶句してしまった。
(な、何だ…彼のこの異様なほどの変貌ぶりは…)
扉を開けたグスタフでさえ驚いてしまった。先程はドアアイ越しにアンドレを見た為に、あまりはっきりその姿を確認する事が出来なかったからだ。
アンドレアはすっかり変わってしまっていた。無精髭にやつれた顔…目は爛々と鋭い光を放っているし、着ている服もとても貴族の身なりとは思えなかった。
「ア、アンドレア…君は本当に…アンドレアなのか…?」
リヒャルトは震えながらアンドレアに近付いた。すると…。
「へぇ~…これは驚きましたよ。リヒャルト様、貴方はベルンヘルで死亡したのでは無かったですか?それともまさかあの世から蘇って来た亡者でしょうか?」
口を歪めながら言うアンドレアにヴィクトールが鋭い声で言った。
「アンドレア様!いくら貴方でもリヒャルト様にそのような口の利き方…聞き捨てなりません!」
「アンドレア…一体君のその姿はどうしたんだ?それに…たった今聞いたのだが君はスカーレットでは無く…エーリカと結婚したそうじゃないか?」
リヒャルトの言葉にアンドレアはやさぐれた様子で言う。
「何ですって?今頃その話を知ったと言う訳ですか?呆れたものですね?第一、僕はもうエーリカとは別れましたよ。そして家族からは縁を切られ…今ではこの有様です。」
「な、何…それは一体…」
状況が飲みこめず言葉に詰まるリヒャルトにアンドレアは吐き捨てるように言った。
「僕がこんな惨めな事になったのも…全てはリヒャルト様、貴方のせいだ!」
そして指を突きつける。
これには流石にグスタフも黙ってはいられなかった。
「何を言っているのですかっ?!全てはご自分で蒔いた種ではありませんか!エーリカの誘惑に負けて…婚前交渉を持ったからでしょう?!」
「な、何だってっ?!」
リヒャルトは目を見開いた。そしてその事実を初めて知ったヴィクトールも同様に唖然としていた。
「…」
ただ一人、リカルドだけはこの様子を静観していた。
「…僕がそうなったのも仕方ないでしょう…?あの夜は媚薬を盛られていたのですから…」
ポツリと言うアンドレア。
「何?媚薬…それだって違法の薬品だ…」
ポツリとリカルドが言う。
「そうか…君は媚薬によってエーリカの誘惑に乗ってしまったと言う訳なのだね?」
リヒャルトの言葉にアンドレアは恐ろしい形相で睨み付けると叫んだ。
「確かに僕は誘惑に負けてしまったけれども…そうなったのは全てリヒャルト様!貴方のせいだ!」
「何だって!」
「何故リヒャルト様のせいになるのだ!」
ヴィクトールに続き、グスタフも声を上げた。するとアンドレアは不敵な笑みを浮かべると言った。
「そうです、全てリヒャルト様のスカーレットに対する教育がいけないのですよ。変に貞操観念を彼女に押し付けるから…」
「…何だって?」
リヒャルトがその言葉に反応した。
「僕達は婚約者だと言うのに、スカーレットはキスしか許してくれなかった。しかも唇が触れるだけの…まるで子供のようなキスだ。身体なんか当然許してくれるはずもない。…知っていましたか?僕がスカーレットを会うたびに、どれ程彼女を抱きたいと思っていたか…あの白い肌に顔をうずめて、その身体を滅茶苦茶にしてやりたいと思う気持ちをどれ程我慢していたか…あなた方には分らないでしょうね?目の前で御預けを食らっている男の気持ちなんて…!」
ドスッ!
「う…」
言葉の途中でアンドレアが呻いた。何故なら我慢できずにリヒャルトがアンドレを殴りつけたからだ。
リヒャルトは拳を握りしめてアンドレアを睨み付けている。
その身体は怒りの為に激しく震えていた―。
扉が開かれ、アンドレアはフラリと部屋の中へ入って来た。が…彼らはアンドレアの姿を見た時に絶句してしまった。
(な、何だ…彼のこの異様なほどの変貌ぶりは…)
扉を開けたグスタフでさえ驚いてしまった。先程はドアアイ越しにアンドレを見た為に、あまりはっきりその姿を確認する事が出来なかったからだ。
アンドレアはすっかり変わってしまっていた。無精髭にやつれた顔…目は爛々と鋭い光を放っているし、着ている服もとても貴族の身なりとは思えなかった。
「ア、アンドレア…君は本当に…アンドレアなのか…?」
リヒャルトは震えながらアンドレアに近付いた。すると…。
「へぇ~…これは驚きましたよ。リヒャルト様、貴方はベルンヘルで死亡したのでは無かったですか?それともまさかあの世から蘇って来た亡者でしょうか?」
口を歪めながら言うアンドレアにヴィクトールが鋭い声で言った。
「アンドレア様!いくら貴方でもリヒャルト様にそのような口の利き方…聞き捨てなりません!」
「アンドレア…一体君のその姿はどうしたんだ?それに…たった今聞いたのだが君はスカーレットでは無く…エーリカと結婚したそうじゃないか?」
リヒャルトの言葉にアンドレアはやさぐれた様子で言う。
「何ですって?今頃その話を知ったと言う訳ですか?呆れたものですね?第一、僕はもうエーリカとは別れましたよ。そして家族からは縁を切られ…今ではこの有様です。」
「な、何…それは一体…」
状況が飲みこめず言葉に詰まるリヒャルトにアンドレアは吐き捨てるように言った。
「僕がこんな惨めな事になったのも…全てはリヒャルト様、貴方のせいだ!」
そして指を突きつける。
これには流石にグスタフも黙ってはいられなかった。
「何を言っているのですかっ?!全てはご自分で蒔いた種ではありませんか!エーリカの誘惑に負けて…婚前交渉を持ったからでしょう?!」
「な、何だってっ?!」
リヒャルトは目を見開いた。そしてその事実を初めて知ったヴィクトールも同様に唖然としていた。
「…」
ただ一人、リカルドだけはこの様子を静観していた。
「…僕がそうなったのも仕方ないでしょう…?あの夜は媚薬を盛られていたのですから…」
ポツリと言うアンドレア。
「何?媚薬…それだって違法の薬品だ…」
ポツリとリカルドが言う。
「そうか…君は媚薬によってエーリカの誘惑に乗ってしまったと言う訳なのだね?」
リヒャルトの言葉にアンドレアは恐ろしい形相で睨み付けると叫んだ。
「確かに僕は誘惑に負けてしまったけれども…そうなったのは全てリヒャルト様!貴方のせいだ!」
「何だって!」
「何故リヒャルト様のせいになるのだ!」
ヴィクトールに続き、グスタフも声を上げた。するとアンドレアは不敵な笑みを浮かべると言った。
「そうです、全てリヒャルト様のスカーレットに対する教育がいけないのですよ。変に貞操観念を彼女に押し付けるから…」
「…何だって?」
リヒャルトがその言葉に反応した。
「僕達は婚約者だと言うのに、スカーレットはキスしか許してくれなかった。しかも唇が触れるだけの…まるで子供のようなキスだ。身体なんか当然許してくれるはずもない。…知っていましたか?僕がスカーレットを会うたびに、どれ程彼女を抱きたいと思っていたか…あの白い肌に顔をうずめて、その身体を滅茶苦茶にしてやりたいと思う気持ちをどれ程我慢していたか…あなた方には分らないでしょうね?目の前で御預けを食らっている男の気持ちなんて…!」
ドスッ!
「う…」
言葉の途中でアンドレアが呻いた。何故なら我慢できずにリヒャルトがアンドレを殴りつけたからだ。
リヒャルトは拳を握りしめてアンドレアを睨み付けている。
その身体は怒りの為に激しく震えていた―。
3
お気に入りに追加
713
あなたにおすすめの小説
少女漫画と君と巡る四季
白川ちさと
ライト文芸
尾形爽次郎はこの春、出版社に就職する。
そこで配属されたのが少女漫画雑誌、シュシュの編集部。しかも、指導係の瀬戸原に連れられて、憧れの少女漫画家、夢咲真子の元を訪れることに。
しかし、夢咲真子、本名小野田真咲はぐーたらな性格で、現在連載中の漫画終了と同時に漫画家を辞めようと思っているらしい。
呆然とする爽次郎に瀬戸原は、真咲と新しい企画を作るように言い渡す。しかも、新人歓迎会で先輩編集者たちに問題児作家だと明かされた。前途多難な中、新人編集者の奮闘が始まる。
ランプの令嬢は妹の婚約者に溺愛され過ぎている
ユウ
恋愛
銀髪に紫の瞳を持つ伯爵令嬢のフローレンスには社交界の華と呼ばれる絶世の美女の妹がいた。
ジェネットは幼少期の頃に病弱だったので両親から溺愛され甘やかされ育つ。
婚約者ですらジェネットを愛し、婚約破棄を突きつけられてしまう。
そして何もかも奪われ社交界でも醜聞を流され両親に罵倒され没落令嬢として捨てられたフローレンスはジェネットの身代わりとして東南を統べる公爵家の子息、アリシェの婚約者となる。
褐色の肌と黒髪を持つ風貌で口数の少ないアリシェは令嬢からも嫌われていたが、伯爵家の侮辱にも顔色を変えず婚約者の交換を受け入れるのだが…。
大富豪侯爵家に迎えられ、これまでの生活が一変する。
対する伯爵家でフローレンスがいなくなった所為で領地経営が上手くいかず借金まみれとなり、再び婚約者の交換を要求するが…
「お断りいたします」
裏切った婚約者も自分を捨てた家族も拒絶するのだった。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
かわりに王妃になってくれる優しい妹を育てた戦略家の姉
菜っぱ
恋愛
貴族学校卒業の日に第一王子から婚約破棄を言い渡されたエンブレンは、何も言わずに会場を去った。
気品高い貴族の娘であるエンブレンが、なんの文句も言わずに去っていく姿はあまりにも清々しく、その姿に違和感を覚える第一王子だが、早く愛する人と婚姻を結ぼうと急いで王が婚姻時に使う契約の間へ向かう。
姉から婚約者の座を奪った妹のアンジュッテは、嫌な予感を覚えるが……。
全てが計画通り。賢い姉による、生贄仕立て上げ逃亡劇。
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)
【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆
【本編完結】婚約を解消したいんじゃないの?!
as
恋愛
伯爵令嬢アーシアは公爵子息カルゼの婚約者。
しかし学園の食堂でカルゼが「アーシアのような性格悪い女とは結婚したくない。」と言っているのを聞き、その場に乗り込んで婚約を解消したつもりだったけどーーー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる