母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
180 / 199

第8章 7 意外な人物

しおりを挟む
 コンコン

 スイートルームの扉をノックすると少しの間が空き、カチャリと扉が開かれた。開けたのはグスタフである。

「ああ、ジミーを連れて来てくれたんだな?」

グスタフはヴィクトールの背後に立つジミーを見た。

「こんばんは、グスタフ様」

「ああ。よく来てくれた。とりあえずすぐに中へ入ってくれ」

グスタフに言われ、ヴィクトールとジミーは素早く中へ入った。するとジミーの目にソファに座ってこちらを見る2人の人物の姿が飛び込んできた。1人は見知らぬ若い男性と…。

「あ、貴方は…リヒャルト様!」

ジミーは思わず駆け寄ると、跪いた。

「リヒャルト様…!いきていらしたのですねっ?!」

嗚咽交じりに言う。

「ああ、この通り、私は生きているよ。…すまなかった。ジミー。心配かけさせてしまって。しかもあの屋敷で働く使用人達は全員バラバラになってしまったと聞いている。…本当に申し訳ない事をしたと思っている」

「そ、それは違います!リヒャルト様はあの母娘の被害者ではありませんか!悪いのはアグネスとエーリカです!」

その時―。

コンコン

突然部屋の扉がノックされた。

「何だ?誰か来ることになっているのか?」

リヒャルトが首をかしげ、ヴィクトールとグスタフを見る。

「い、いいえ…」

「私達は何も知りませんが?」

「!」

それを聞いたリカルドは素早く立ち上がると、扉へゆっくりと向かい、ドアアイから外を覗きこんだ。

「…誰だ…?」

ドアアイから覗いた人物はリカルドの全く知らない人物だった。

更にその人物は再び扉をノックしてきた。

「…私が確認してみます」

ヴィクトールの言葉にリカルドは頷くと場所を譲った。

「…」

緊張する面持ちでヴィクトールはドアアイを覗きこみ…息を飲んだ。

「え…?あ、あの方は…!」

「え?誰なんだ?」

グスタフが尋ねるとヴィクトールは戸惑いながら言った。

「あの方は…アンドレア様だ…」

「何だってっ?!」

憎々し気な声を上げたのはジミーだった。するとその時…再びノックの音と共に声が聞こえて来た。

「お願いです、開けて下さい。僕です。アンドレアです。…ヴィクトールさんがそこにいる事は知ってるんですよ」

全員の視線がヴィクトールに注がれる。リカルドに関しては非難めいた視線で見つめている。

「そ、そんな…少しも気付かなかった…」

項垂れるヴィクトールにリヒャルトは言った。

「皆、どうしたんだ?彼はスカーレットの婚約者じゃないか。中へ入れないのか?」

「そ、それは…!」

グスタフは後悔した、まさかアンドレアが現れるとは少しも思ってもいなかったのでリヒャルトにアンドレアの話を伝えていなかったのだ。

「どうしたのだ?」

何も知らないリヒャルトは全員をグルリと見渡すとジミーが口を開いた。

「リヒャルト様…アンドレア様はスカーレット様と婚約解消して、エーリカと結婚したのですよ。ご存じなかったのですか?」

「な、何だって!」

青ざめるリヒャルト。しかし、それはリカルドにしても同様だった。

コンコンコンコン

ノックは相変わらずうるさい位続いている。

「…もう、これ以上彼を放置しておくことは無理でしょう。しかたありませんから彼を中へ入れてあげて下さい」

リカルドは溜息をつきながら答えた。

「…分りました…」

グスタフは返事をすると、部屋の扉を開けた―。

しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

処理中です...