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第6章 11 嫉妬?
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チン…
ヴィクトールとの会話が終了したスカーレットは受話器を置くと、ソファに座っているアリオスの元へ向かうと言った。
「アリオス様。お電話ありがとうございました」
そして頭を下げる。
「いや、別に礼を言わなくても大丈夫だ。それで‥‥どんな話になった?」
「はい。お父様たちは今夜遅くに『ミュゼ』に到着します。駅の真正面にあるホテルを手配したそうで、明日の11時にホテルのロビーで待ち合わせをする事になったのですが…宜しいでしょうか?」
スカーレットは遠慮がちに尋ねた。
「何を言っているんだ?いいに決まっているだろう?カールの明日の授業は休んで貰って構わない。それよりもホテルで待ち合わせ?ここに来てもらった方が良いのではないか?」
「アリオス様…ですが、それではご迷惑では…?」
「迷惑なんて…そんなはずはないだろう?」
むしろ、迷惑だと思われる方がアリオスは辛かった。そんな言い方をされるとスカーレットと自分の間に壁が出来てしまったかのような気持ちになってくる。
「アリオス様…」
「明日、当然ブリジットも一緒に行くだろうが…俺も一緒に行って構わないか?是非ご挨拶させて貰いたい。」
「え?ですがお仕事がお忙しいのではありませんか?」
「大丈夫だ。心配には及ばない。第一俺には優秀な秘書がいるからな」
アリオスはザヒムの顔を頭に思い描きながら言った。
(ザヒムには…後で恨み言を言われるかもしれないが…スカーレットが心配だからな…)
アリオスは自分自身にそう言い聞かせたが、何故スカーレットに申し出たのかその理由に気付いてはいなかった―。
****
「え?なんだって?今…何て言ったんだ?」
手にしていた書類をテーブルの上に置くとザヒムは目を見開いた。
「ああ、明日は1日私用があって仕事が出来ない。すまないが代わりに頼む。今日中に終わらせそうな仕事ならすべてやるから」
執務室に戻って早々にアリオスの言った言葉にザヒムは耳を疑った。
「おいおい、アリオス…お前、本気で言っているのか?月末のこの忙しい時期に?仕事をまる1日休ませてくれだなんて…大体私用ってなんだよ?正直に言ってくれないと分からないだろう?」
「わ、わかった…。実はスカーレットが明日、父親と『ミュゼ』の駅前のホテルで再会することが決まったんだ」
「何だって?」
ザヒムが顔を上げた。
「そういうことなら正直に言えば良かったじゃないか?よし、分かった。そういうことなら話は別だ。いいぜ、行ってこいよ。何しろ愛しの婚約者の父親と初対面だからな?」
どこかからかうような口調のザヒムにアリオスは言った。
「違う、そんなんじゃ無い。俺が気になるのはむしろ…」
そこまで言いかけてアリオスは口を閉ざした。
「どうした?アリオス?」
「い、いや…」
そうだ…俺が気にかけていたのは昨日の電話の男の事だったんだ…確か名前は…。
「おい、大丈夫か?」
突然ザヒムに声をかけられて、アリオスはハッとなると言った。
「ザヒム…どうやら俺は…かなり重症のようだ…」
そして、深い溜め息をついた―。
ヴィクトールとの会話が終了したスカーレットは受話器を置くと、ソファに座っているアリオスの元へ向かうと言った。
「アリオス様。お電話ありがとうございました」
そして頭を下げる。
「いや、別に礼を言わなくても大丈夫だ。それで‥‥どんな話になった?」
「はい。お父様たちは今夜遅くに『ミュゼ』に到着します。駅の真正面にあるホテルを手配したそうで、明日の11時にホテルのロビーで待ち合わせをする事になったのですが…宜しいでしょうか?」
スカーレットは遠慮がちに尋ねた。
「何を言っているんだ?いいに決まっているだろう?カールの明日の授業は休んで貰って構わない。それよりもホテルで待ち合わせ?ここに来てもらった方が良いのではないか?」
「アリオス様…ですが、それではご迷惑では…?」
「迷惑なんて…そんなはずはないだろう?」
むしろ、迷惑だと思われる方がアリオスは辛かった。そんな言い方をされるとスカーレットと自分の間に壁が出来てしまったかのような気持ちになってくる。
「アリオス様…」
「明日、当然ブリジットも一緒に行くだろうが…俺も一緒に行って構わないか?是非ご挨拶させて貰いたい。」
「え?ですがお仕事がお忙しいのではありませんか?」
「大丈夫だ。心配には及ばない。第一俺には優秀な秘書がいるからな」
アリオスはザヒムの顔を頭に思い描きながら言った。
(ザヒムには…後で恨み言を言われるかもしれないが…スカーレットが心配だからな…)
アリオスは自分自身にそう言い聞かせたが、何故スカーレットに申し出たのかその理由に気付いてはいなかった―。
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「え?なんだって?今…何て言ったんだ?」
手にしていた書類をテーブルの上に置くとザヒムは目を見開いた。
「ああ、明日は1日私用があって仕事が出来ない。すまないが代わりに頼む。今日中に終わらせそうな仕事ならすべてやるから」
執務室に戻って早々にアリオスの言った言葉にザヒムは耳を疑った。
「おいおい、アリオス…お前、本気で言っているのか?月末のこの忙しい時期に?仕事をまる1日休ませてくれだなんて…大体私用ってなんだよ?正直に言ってくれないと分からないだろう?」
「わ、わかった…。実はスカーレットが明日、父親と『ミュゼ』の駅前のホテルで再会することが決まったんだ」
「何だって?」
ザヒムが顔を上げた。
「そういうことなら正直に言えば良かったじゃないか?よし、分かった。そういうことなら話は別だ。いいぜ、行ってこいよ。何しろ愛しの婚約者の父親と初対面だからな?」
どこかからかうような口調のザヒムにアリオスは言った。
「違う、そんなんじゃ無い。俺が気になるのはむしろ…」
そこまで言いかけてアリオスは口を閉ざした。
「どうした?アリオス?」
「い、いや…」
そうだ…俺が気にかけていたのは昨日の電話の男の事だったんだ…確か名前は…。
「おい、大丈夫か?」
突然ザヒムに声をかけられて、アリオスはハッとなると言った。
「ザヒム…どうやら俺は…かなり重症のようだ…」
そして、深い溜め息をついた―。
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