110 / 199
第4章 15 アリオスへの報告
しおりを挟む
無言で執務室へ向かって 歩きながらアリオスは後からついてくるスカーレットの様子を伺った。スカーレットの顔色は青ざめ、小刻みに震えている。
(何かあったのだろうか…?ヴァイオレット嬢に嫌がらせでもされたのか?)
当然アリオスはスカーレットの身に何が起こったかを知らない。
(まあいい。執務室に着いたら詳しく話を聞こう)
その後も2人はアリオスの執務室へ着くまで互いに言葉を交わさず無言で歩き続けた。
「入ってくれ」
執務室の部屋の前に着くとアリオスはノブを回して扉を開けた。
「…」
スカーレットは無言で部屋に入ると、アリオスは扉を締めた。
パタン…
すると、その音にスカーレットの肩がビクリと跳ねた。
「スカーレット。どうかしたのか?」
その様子にアリオスは首をかしげた。
「い、いえ。何でもありません」
しかし、スカーレットはアリオスの視線から目をそらし、両手を組んで下におろしている。
(この様子…絶対何かあったに違いない…!)
「とりあえず、そこに座ってくれるか?」
執務室に置いてあるソファをスカーレットにすすめる。
「は、はい…」
スカーレットは素直に従い、腰掛けた。アリオスはテーブルを挟み、向かい側に座った。そしてじっとスカーレットを見つめた。
「…」
相変わらずスカーレットは無言で視線を合わせない。身体は小さく震えている。その様子にアリオスは思い当たる節が合った。
(同じだ…初めてこの屋敷にやってきた時の彼女と…)
アリオスはスカーレットの事情を知っていた。元婚約者に襲われかけて男性恐怖症になってしまった事を。しかし、カールに接するうちに少しずつ落ち着いてきたと思っていた。だからこそ、仮の婚約者になって貰う事も頼めたのだ。
「スカーレット、今日…王宮へ無理矢理連れて行かれたのだろう?」
アリオスは静かに尋ねた。
「は、はい…」
「何があったんだ?」
アリオスはじっとスカーレットの目を見た。
「あ、あの…それが…」
(どうしよう。すごく言いにくいわ…アリオス様の前で男性恐怖症の話をするのは…)
スカーレットは震えたまま、なかなか答えようとしない。その様子にアリオスはある出来事を思い出していた。
(似てる…彼女がハインリヒに襲われかけた時の状況に…まさか…!)
「スカーレット。ひょっとして…王宮で…男に何かされたのか?」
その言葉にスカーレットは大きく反応した。
「やはり、そうだったのか…。だが、仮にもヴァイオレット皇女が招いたスカーレットに手を出すことが出来るのは…ま、まさか…!」
「は、はい…。アイザック皇子様に…し、痺れ薬を飲まされて…」
「な、何だってっ?!」
アリオスの顔が青ざめた。
「ゆ、許せん…!いくら皇子だろうとスカーレットを…!」
怒りのあまり、アリオスが立ち上がった。その勢いはまるで今にも王宮に乗り込まんばかりだ。
「あ、あの!お待ち下さい!落ち着いて下さい、アリオス様!」
スカーレットは慌てた。まさかアリオスがそこまで激昂するとは思わなかったのだ。
「落ち着く?お前が皇子に襲われたのに?」
「い、いえ!確かに襲われかけはしましたが…そ、その…未遂で終わりましたので…」
「…」
アリオスはじっとスカーレットを見ている。
「だから…どうか落ち着いて下さい…」
「お前がそう言うなら…」
アリオスはソファに座り直すとため息を着いた。
「何が合ったのか…全てお話致します…」
スカーレットは重い口を開き、語り始めた。
迎えの馬車がやってきたこと、馬車の中で男性と2人きりのショックで気を失ったこと。目が覚めれば見知らぬ部屋で目覚め、アイザックが入ってきたこと。そしてアイザック皇子の自室に連れて行かれ、飲み物の中に痺れ薬を入れられた挙げ句襲われかけた事。
それら全てアリオスに報告した―。
(何かあったのだろうか…?ヴァイオレット嬢に嫌がらせでもされたのか?)
当然アリオスはスカーレットの身に何が起こったかを知らない。
(まあいい。執務室に着いたら詳しく話を聞こう)
その後も2人はアリオスの執務室へ着くまで互いに言葉を交わさず無言で歩き続けた。
「入ってくれ」
執務室の部屋の前に着くとアリオスはノブを回して扉を開けた。
「…」
スカーレットは無言で部屋に入ると、アリオスは扉を締めた。
パタン…
すると、その音にスカーレットの肩がビクリと跳ねた。
「スカーレット。どうかしたのか?」
その様子にアリオスは首をかしげた。
「い、いえ。何でもありません」
しかし、スカーレットはアリオスの視線から目をそらし、両手を組んで下におろしている。
(この様子…絶対何かあったに違いない…!)
「とりあえず、そこに座ってくれるか?」
執務室に置いてあるソファをスカーレットにすすめる。
「は、はい…」
スカーレットは素直に従い、腰掛けた。アリオスはテーブルを挟み、向かい側に座った。そしてじっとスカーレットを見つめた。
「…」
相変わらずスカーレットは無言で視線を合わせない。身体は小さく震えている。その様子にアリオスは思い当たる節が合った。
(同じだ…初めてこの屋敷にやってきた時の彼女と…)
アリオスはスカーレットの事情を知っていた。元婚約者に襲われかけて男性恐怖症になってしまった事を。しかし、カールに接するうちに少しずつ落ち着いてきたと思っていた。だからこそ、仮の婚約者になって貰う事も頼めたのだ。
「スカーレット、今日…王宮へ無理矢理連れて行かれたのだろう?」
アリオスは静かに尋ねた。
「は、はい…」
「何があったんだ?」
アリオスはじっとスカーレットの目を見た。
「あ、あの…それが…」
(どうしよう。すごく言いにくいわ…アリオス様の前で男性恐怖症の話をするのは…)
スカーレットは震えたまま、なかなか答えようとしない。その様子にアリオスはある出来事を思い出していた。
(似てる…彼女がハインリヒに襲われかけた時の状況に…まさか…!)
「スカーレット。ひょっとして…王宮で…男に何かされたのか?」
その言葉にスカーレットは大きく反応した。
「やはり、そうだったのか…。だが、仮にもヴァイオレット皇女が招いたスカーレットに手を出すことが出来るのは…ま、まさか…!」
「は、はい…。アイザック皇子様に…し、痺れ薬を飲まされて…」
「な、何だってっ?!」
アリオスの顔が青ざめた。
「ゆ、許せん…!いくら皇子だろうとスカーレットを…!」
怒りのあまり、アリオスが立ち上がった。その勢いはまるで今にも王宮に乗り込まんばかりだ。
「あ、あの!お待ち下さい!落ち着いて下さい、アリオス様!」
スカーレットは慌てた。まさかアリオスがそこまで激昂するとは思わなかったのだ。
「落ち着く?お前が皇子に襲われたのに?」
「い、いえ!確かに襲われかけはしましたが…そ、その…未遂で終わりましたので…」
「…」
アリオスはじっとスカーレットを見ている。
「だから…どうか落ち着いて下さい…」
「お前がそう言うなら…」
アリオスはソファに座り直すとため息を着いた。
「何が合ったのか…全てお話致します…」
スカーレットは重い口を開き、語り始めた。
迎えの馬車がやってきたこと、馬車の中で男性と2人きりのショックで気を失ったこと。目が覚めれば見知らぬ部屋で目覚め、アイザックが入ってきたこと。そしてアイザック皇子の自室に連れて行かれ、飲み物の中に痺れ薬を入れられた挙げ句襲われかけた事。
それら全てアリオスに報告した―。
3
お気に入りに追加
713
あなたにおすすめの小説
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
私を溺愛している婚約者を聖女(妹)が奪おうとしてくるのですが、何をしても無駄だと思います
***あかしえ
恋愛
薄幸の美少年エルウィンに一目惚れした強気な伯爵令嬢ルイーゼは、性悪な婚約者(仮)に秒で正義の鉄槌を振り下ろし、見事、彼の婚約者に収まった。
しかし彼には運命の恋人――『番い』が存在した。しかも一年前にできたルイーゼの美しい義理の妹。
彼女は家族を世界を味方に付けて、純粋な恋心を盾にルイーゼから婚約者を奪おうとする。
※タイトル変更しました
小説家になろうでも掲載してます
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
婚約破棄するんだったら、その代わりに復讐してもいいですか?
tartan321
恋愛
ちょっとした腹いせに、復讐しちゃおうかな?
「パミーナ!君との婚約を破棄する!」
あなたに捧げた愛と時間とお金……ああっ、もう許せない!私、あなたに復讐したいです!あなたの秘密、結構知っているんですよ?ばらしたら、国が崩壊しちゃうかな?
隣国に行ったら、そこには新たな婚約者の姫様がいた。さあ、次はどうしようか?
皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~
桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」
ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言?
◆本編◆
婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。
物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。
そして攻略者達の後日談の三部作です。
◆番外編◆
番外編を随時更新しています。
全てタイトルの人物が主役となっています。
ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。
なろう様にも掲載中です。
転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜
みおな
恋愛
転生したら、乙女ゲームのモブ令嬢でした。って、どれだけラノベの世界なの?
だけど、ありがたいことに悪役令嬢でもヒロインでもなく、完全なモブ!!
これは離れたところから、乙女ゲームの展開を楽しもうと思っていたのに、どうして私が巻き込まれるの?
私ってモブですよね?
さて、選択です。悪役令嬢ルート?ヒロインルート?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる