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第3章 9 その後のシュバルツ家
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すると、マゼンダ母娘の名を聞いたアーベルが言った。
「実は弁護士の方からお手紙を頂いたのです。最近のシュバルツ家の事について色々書かれておりました」
「え…?シュバルツ家について?」
スカーレットは眉をひそめた。
「はい、実は私はお屋敷を去った後も定期的に弁護士のジョン先生と手紙をやり取りさせて頂いていたのです」
いつの間にかアーベルはジョン弁護士を先生と呼んでいた。
「そうなの?それであちらの様子はどうなっているのかしら?」
スカーレットはアーベルに尋ねた。
「はい、あれからアグネスは急いで使用人達を新規で雇い入れようとしたそうですが、私達使用人が全員一斉にシュバルツ家を辞めた事が世間の耳に入り、悪い評判が立ってなかなか使用人が見つからず、教養も何もない人間たちをその場しのぎで雇ったそうです。そして彼らはろくに仕事をしないどころか、屋敷の金品を漁って盗みを働き、かなりの財産を奪われてしまったらしいです…!最も奪われた品物の多くはマゼンダ母娘がシュバルツ家に入ってから買い集めた宝石や絵画が主流だったそうですが…。」
アーベルは悔しそうに言う。
「そ、そんな…」
スカーレットはその話を聞いて青ざめてしまった。
「全く…!あの母娘はシュバルツ家にとって疫病神でしか無いって事ですね?!それで、その後はどうなったのですか?!」
ブリジットは怒りに身体を震わせながら続きを促した。
「はい、そこでマゼンダ母娘に泣きつかれた先生は警察に通報し、強奪を働いていた使用人は全員解雇の上、警察に連行されて行ったそうです。結局あの屋敷の使用人全員が盗みを働いていたそうです。それで結局、人材派遣協会に登録されているメイドとフットマン達を雇い入れる事にしたそうですが…かなり高額な賃金を支払わなくてはならず、もうシュバルツ家の財産は殆ど残っていないそうです‥」
「そ、そんな…っ!」
沈痛な面持ちで言うアーベルの言葉にスカーレットは眩暈を起こして、ソファに崩れ落ちてしまった。
「スカーレット様っ!しっかりして下さいっ!」
ブリジットは慌て抱き起すと、スカーレットの顔は顔面蒼白になっていた。
「どうしよう…ブリジット。一体どうすればいいの?私は今はあの屋敷を出てチェスター家で何不自由なく暮らしていけている…でも私はあの屋敷を守りたい。いつか必ずあの屋敷に戻って…辞めて行った皆を再び呼びよせようと思っていたのに、このままではシュバルツ家は取り潰されてしまうわ。」
スカーレットは震えながら言い…あることに気が付いた。
「そうだわ…アンドレア様は?エーリカと結婚されたアンドレア様は一体どうされたの?」
本当はアンドレアの名前など口に出したくも無かったが、スカーレットはアーベルに尋ねた。
「ええ…実はそのアンドレア様とエーリカ様は…離婚されました」
「えっ?!り…離婚っ?!」
「はいそうです。アンドレア様も我らが屋敷を出て行ったあの日の内に、シュバルツ家を去り、町の宿屋にずっと滞在していたらしいです。そこでとうとう痺れを切らしたマゼンダ母娘はアンドレア様を迎えに行ったところ、離婚届にサインをした書類だけが残されて、わずかな荷物も全て消えてしまったそうです。アンドレア様は消息不明になってしまわれました」
「な、何ですって…?」
(そ、そんな…アンドレア様が行方をくらましたなんて…!)
「もともとアンドレア様はシュバルツ家に婿養子という形で入って来られた方でしたからマゼンダ母娘はアンドレ様の御実家に慰謝料を請求したそうですが、『アンドレアとは親子の縁を切ったので関係無い』とはねつけられてしまったそうです」
アーベルの話はスカーレットとブリジットにとって、まさに耳を疑う様な内容ばかりであった―。
「実は弁護士の方からお手紙を頂いたのです。最近のシュバルツ家の事について色々書かれておりました」
「え…?シュバルツ家について?」
スカーレットは眉をひそめた。
「はい、実は私はお屋敷を去った後も定期的に弁護士のジョン先生と手紙をやり取りさせて頂いていたのです」
いつの間にかアーベルはジョン弁護士を先生と呼んでいた。
「そうなの?それであちらの様子はどうなっているのかしら?」
スカーレットはアーベルに尋ねた。
「はい、あれからアグネスは急いで使用人達を新規で雇い入れようとしたそうですが、私達使用人が全員一斉にシュバルツ家を辞めた事が世間の耳に入り、悪い評判が立ってなかなか使用人が見つからず、教養も何もない人間たちをその場しのぎで雇ったそうです。そして彼らはろくに仕事をしないどころか、屋敷の金品を漁って盗みを働き、かなりの財産を奪われてしまったらしいです…!最も奪われた品物の多くはマゼンダ母娘がシュバルツ家に入ってから買い集めた宝石や絵画が主流だったそうですが…。」
アーベルは悔しそうに言う。
「そ、そんな…」
スカーレットはその話を聞いて青ざめてしまった。
「全く…!あの母娘はシュバルツ家にとって疫病神でしか無いって事ですね?!それで、その後はどうなったのですか?!」
ブリジットは怒りに身体を震わせながら続きを促した。
「はい、そこでマゼンダ母娘に泣きつかれた先生は警察に通報し、強奪を働いていた使用人は全員解雇の上、警察に連行されて行ったそうです。結局あの屋敷の使用人全員が盗みを働いていたそうです。それで結局、人材派遣協会に登録されているメイドとフットマン達を雇い入れる事にしたそうですが…かなり高額な賃金を支払わなくてはならず、もうシュバルツ家の財産は殆ど残っていないそうです‥」
「そ、そんな…っ!」
沈痛な面持ちで言うアーベルの言葉にスカーレットは眩暈を起こして、ソファに崩れ落ちてしまった。
「スカーレット様っ!しっかりして下さいっ!」
ブリジットは慌て抱き起すと、スカーレットの顔は顔面蒼白になっていた。
「どうしよう…ブリジット。一体どうすればいいの?私は今はあの屋敷を出てチェスター家で何不自由なく暮らしていけている…でも私はあの屋敷を守りたい。いつか必ずあの屋敷に戻って…辞めて行った皆を再び呼びよせようと思っていたのに、このままではシュバルツ家は取り潰されてしまうわ。」
スカーレットは震えながら言い…あることに気が付いた。
「そうだわ…アンドレア様は?エーリカと結婚されたアンドレア様は一体どうされたの?」
本当はアンドレアの名前など口に出したくも無かったが、スカーレットはアーベルに尋ねた。
「ええ…実はそのアンドレア様とエーリカ様は…離婚されました」
「えっ?!り…離婚っ?!」
「はいそうです。アンドレア様も我らが屋敷を出て行ったあの日の内に、シュバルツ家を去り、町の宿屋にずっと滞在していたらしいです。そこでとうとう痺れを切らしたマゼンダ母娘はアンドレア様を迎えに行ったところ、離婚届にサインをした書類だけが残されて、わずかな荷物も全て消えてしまったそうです。アンドレア様は消息不明になってしまわれました」
「な、何ですって…?」
(そ、そんな…アンドレア様が行方をくらましたなんて…!)
「もともとアンドレア様はシュバルツ家に婿養子という形で入って来られた方でしたからマゼンダ母娘はアンドレ様の御実家に慰謝料を請求したそうですが、『アンドレアとは親子の縁を切ったので関係無い』とはねつけられてしまったそうです」
アーベルの話はスカーレットとブリジットにとって、まさに耳を疑う様な内容ばかりであった―。
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