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第2章 1 新天地『ミュゼ』
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12時半―
『ミュゼ』の駅に降り立ったスカーレットとブリジットはあまりの人の多さに驚いていた。
「まあ・・なんて人混みなのでしょう。スカーレット様、大丈夫ですか?」
駅のベンチにぐったりと腰を下ろしているスカーレットにブリジットは心配そうに声を掛けた。
「え、ええ・・・大丈夫よ、ブリジット・・・。」
しかし、帽子を目深にかぶったスカーレットの顔は真っ青で今にも倒れそうだった。
「だ、大丈夫ですかっ?!スカーレット様っ!どこか体調でも悪いのですかっ?!」
ブリジットは慌ててスカーレットを支えた。
「え、ええ・・・大丈夫・・・た、ただ・・・男の人たちが・・・。」
スカーレットはカタカタ震えながら言う。
「あ・・・」
ブリジットはスカーレットを抱きかかえるようにあたりを見渡した。駅は大勢の人々でごった返していたが、その大半は男性だったのだ。
「スカーレット様・・・。」
ブリジットの腕の中で震えるスカーレットを見て彼女は思った。
(しまった・・・うかつだったわ。汽車の中では個室のボックス席を確保したから安心していたけども・・・ここは大都会『ミュゼ』の町。貴族ばかりが住む町なので利用客も多い・・・男性たちの事まで考えていなかったわ・・・。とにかく一刻も早く人が少ない場所に移動しなくてはっ!)
「スカーレット様・・・大丈夫ですか?立てますか?」
「え、ええ・・だ、大丈夫・・・よ・・」
青ざめた顔で笑みを浮かべるスカーレットは今にも倒れそうに見えた。
「とにかく・・まずは駅を出ましょう。ここは・・人が多すぎます。さ、私におつかまり下さい。」
ブリジットはか細いスカーレットの身体を支えながら言った―。
何とか駅を出た2人は駅前広場の木陰の下のベンチに座っていた。ここはあまり人も多くなく、周囲にいるのは子供連れの母親が多かった。
「どうですか?スカーレット様・・少しは落ち着かれましたか?」
駅前広場のドリンクスタンドで飲み物を買ってきたブリジットはスカーレットにアイスティーを手渡しながら尋ねた。
「え、ええ・・だいぶ落ち着いたわ・・あと少し休めば大丈夫よ。」
だいぶ顔色が落ち着いたスカーレットの姿をブリジットはまじまじと見つめた。
今は新緑の季節、5月―。
日差しもだいぶ夏らしい陽気になり、若い娘たちは皆襟元が大きく開いた半そでのドレスに衣替えをしているというのにスカーレットのドレスはそうではなかった。
首元迄もがしっかり覆われたドレスは長袖で手首まですっかり覆われている。丈の長いロングドレスはくるぶしまで届く長さで、足元は編み上げのショートブーツを履いている。まるで雪解けの頃の季節か、秋の始まりの頃のような装いである。
つまり、スカーレットの着ているドレスは、極力肌を見せないデザインのドレスなのであった。
スカーレットはアンドレアに危うく貞操を奪われそうになってからは決して必要以上に肌をさらけ出すことを極度に恐れるようになっていたのである。
そして周囲の目を始終気にかけ・・おどおどする姿はまるで生まれたばかりのひな鳥のように見えた。
(アンドレア様・・・お恨み申し上げます・・っ!)
もし命を差し出せば時間を戻せると言われたなら、ブリジットは喜んで命をさしだしただろう。それだけ・・アンドレアは取り返しのつかない事をスカーレットに行ってしまったのである。
「どうしたの?ブリジット。」
その時、不意にスカーレットが尋ねてきた。
「え?私が何か?」
「ええ・・・何だかぼーっとしているように見えたから・・。」
「いえ、何でもありません。大丈夫ですよ。それでは・・そろそろチェスター家へ向かいましょうか?」
ブリジットは笑みを浮かべてスカーレットを見つめた―。
『ミュゼ』の駅に降り立ったスカーレットとブリジットはあまりの人の多さに驚いていた。
「まあ・・なんて人混みなのでしょう。スカーレット様、大丈夫ですか?」
駅のベンチにぐったりと腰を下ろしているスカーレットにブリジットは心配そうに声を掛けた。
「え、ええ・・・大丈夫よ、ブリジット・・・。」
しかし、帽子を目深にかぶったスカーレットの顔は真っ青で今にも倒れそうだった。
「だ、大丈夫ですかっ?!スカーレット様っ!どこか体調でも悪いのですかっ?!」
ブリジットは慌ててスカーレットを支えた。
「え、ええ・・・大丈夫・・・た、ただ・・・男の人たちが・・・。」
スカーレットはカタカタ震えながら言う。
「あ・・・」
ブリジットはスカーレットを抱きかかえるようにあたりを見渡した。駅は大勢の人々でごった返していたが、その大半は男性だったのだ。
「スカーレット様・・・。」
ブリジットの腕の中で震えるスカーレットを見て彼女は思った。
(しまった・・・うかつだったわ。汽車の中では個室のボックス席を確保したから安心していたけども・・・ここは大都会『ミュゼ』の町。貴族ばかりが住む町なので利用客も多い・・・男性たちの事まで考えていなかったわ・・・。とにかく一刻も早く人が少ない場所に移動しなくてはっ!)
「スカーレット様・・・大丈夫ですか?立てますか?」
「え、ええ・・だ、大丈夫・・・よ・・」
青ざめた顔で笑みを浮かべるスカーレットは今にも倒れそうに見えた。
「とにかく・・まずは駅を出ましょう。ここは・・人が多すぎます。さ、私におつかまり下さい。」
ブリジットはか細いスカーレットの身体を支えながら言った―。
何とか駅を出た2人は駅前広場の木陰の下のベンチに座っていた。ここはあまり人も多くなく、周囲にいるのは子供連れの母親が多かった。
「どうですか?スカーレット様・・少しは落ち着かれましたか?」
駅前広場のドリンクスタンドで飲み物を買ってきたブリジットはスカーレットにアイスティーを手渡しながら尋ねた。
「え、ええ・・だいぶ落ち着いたわ・・あと少し休めば大丈夫よ。」
だいぶ顔色が落ち着いたスカーレットの姿をブリジットはまじまじと見つめた。
今は新緑の季節、5月―。
日差しもだいぶ夏らしい陽気になり、若い娘たちは皆襟元が大きく開いた半そでのドレスに衣替えをしているというのにスカーレットのドレスはそうではなかった。
首元迄もがしっかり覆われたドレスは長袖で手首まですっかり覆われている。丈の長いロングドレスはくるぶしまで届く長さで、足元は編み上げのショートブーツを履いている。まるで雪解けの頃の季節か、秋の始まりの頃のような装いである。
つまり、スカーレットの着ているドレスは、極力肌を見せないデザインのドレスなのであった。
スカーレットはアンドレアに危うく貞操を奪われそうになってからは決して必要以上に肌をさらけ出すことを極度に恐れるようになっていたのである。
そして周囲の目を始終気にかけ・・おどおどする姿はまるで生まれたばかりのひな鳥のように見えた。
(アンドレア様・・・お恨み申し上げます・・っ!)
もし命を差し出せば時間を戻せると言われたなら、ブリジットは喜んで命をさしだしただろう。それだけ・・アンドレアは取り返しのつかない事をスカーレットに行ってしまったのである。
「どうしたの?ブリジット。」
その時、不意にスカーレットが尋ねてきた。
「え?私が何か?」
「ええ・・・何だかぼーっとしているように見えたから・・。」
「いえ、何でもありません。大丈夫ですよ。それでは・・そろそろチェスター家へ向かいましょうか?」
ブリジットは笑みを浮かべてスカーレットを見つめた―。
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