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第1章 45 集められた理由
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翌朝―
アグネスは朝食後、下働きや厨房で働く者以外のほぼ全ての使用人を広間に集めた。メイドやフットマン達は何事かとざわめいていた。
「一体・・我らを集めてあの女は何を考えているのでしょう・・・。」
先頭に並ぶアーベルは隣に立つブリジットに小声で話しかけた。
「さあ・・・でもこのように私たちを呼びつけるという事は・・・きっとまともな話ではないわ・・・。私はこんなことをしている場合ではないのに・・。スカーレットお嬢様が心配です・・。」
「しかし・・おそらくアンドレア様に何かされる恐れはないでしょう。彼は仕事に出かけましたし・・・何よりスカーレット様のお部屋にはうちカギがかかるようになっております。そしてそのカギを外側から開けるカギをお持ちなのはブリジット様だけなのですから。」
アーベルはブリジットを安心させるために言う。
「ええ・・そうですね・・・。」
そこまで話していた時、広間の出入り口のドアが開かれた。
ギィ~・・・・
中へ入ってきたのはまるで夜会服のような衣装を身に着けたアグネスであった。彼女はコツコツと高いヒールの音を響かせて、一段高くなったステージに置かれた宝石が埋め込まれた椅子に向かって歩いていく。そして椅子の前に立つと、向き直った。
「皆の者、よくお聞きなさいっ!」
凛としたアグネスの声が広間に響き渡る。
「夫であるリヒャルトの葬儀を執り行うことは・・やめにしました。近隣の貴族たちへの連絡もしません。このまま・・1カ月の間、静かに生活し・・喪に服すことにします。なので、葬儀の終了後にこの屋敷を出ていく事になっていた使用人たちは・・・5日間の猶予を与えますので、確実に出ていく事!もし言う事を聞けないというのであれば・・お前たちの退職金は全額没収、それどこらか推薦状も取り上げることに致しますっ!」
あまりの横暴なアグネスの言葉に周囲はざわめき立ったが・・皆アグネスが怖くて何も発言する事が出来なかった。するとアグネスはそれが意外だったらしく、腕組みをして周囲をグルリと見渡すと言った。
「あら・・・?何、お前たち。てっきリヒャルトの葬儀を上げないことについて・・何か文句の一つでも言ってくるかと思ったけど?」
そしてアグネスはピタリとその視線をブリジットとアーベルの前で止めた。
「「・・・。」」
ブリジットもアーベルも黙ってアグネスを見た。するとアグネスは言う。
「何よ・・・その目つきは。やはり言いたいことがあるようね?さぁ、言ってみなさいっ!」
(ふふ・・せいぜい負け犬の遠吠えみたいに吠えなさい・・・。妙な事を口走れば・・お前などすぐにこの場でクビにしてやるのだから・・・。)
アグネスは不敵に笑いながらアーベルを見た。その視線をまともに受けながらアーベルは口を開いた。
「そうですね・・・言いたいことなら山ほどありますよ。」
「あら・・何かしら?」
「私は貴女に会った時から、なんて愚かな女なのだろうとずっと思っておりました。母娘そろって知性のかけらもないうえ・・・正当なこの屋敷の血筋であられるスカーレット様をこの屋敷から追い出そうとしている。あまつさえスカーレット様の婚約者であるアンドレア様を貴女の娘が寝取ったのですから。」
「な・・・何ですってっ?!」
途端にざわめく使用人たち。アンドレアがエーリカと体の関係をもってしまったばかりスカーレットとの婚約を破棄したことを知るのは使用人たちの中でも上層部の人間しかしらぬ事実であった。
アグネスは、ほとんどの使用人をあつめてしまった為に・・事実を知られ、自分で自分のクビをしめる結果となってしまったのだった―。
アグネスは朝食後、下働きや厨房で働く者以外のほぼ全ての使用人を広間に集めた。メイドやフットマン達は何事かとざわめいていた。
「一体・・我らを集めてあの女は何を考えているのでしょう・・・。」
先頭に並ぶアーベルは隣に立つブリジットに小声で話しかけた。
「さあ・・・でもこのように私たちを呼びつけるという事は・・・きっとまともな話ではないわ・・・。私はこんなことをしている場合ではないのに・・。スカーレットお嬢様が心配です・・。」
「しかし・・おそらくアンドレア様に何かされる恐れはないでしょう。彼は仕事に出かけましたし・・・何よりスカーレット様のお部屋にはうちカギがかかるようになっております。そしてそのカギを外側から開けるカギをお持ちなのはブリジット様だけなのですから。」
アーベルはブリジットを安心させるために言う。
「ええ・・そうですね・・・。」
そこまで話していた時、広間の出入り口のドアが開かれた。
ギィ~・・・・
中へ入ってきたのはまるで夜会服のような衣装を身に着けたアグネスであった。彼女はコツコツと高いヒールの音を響かせて、一段高くなったステージに置かれた宝石が埋め込まれた椅子に向かって歩いていく。そして椅子の前に立つと、向き直った。
「皆の者、よくお聞きなさいっ!」
凛としたアグネスの声が広間に響き渡る。
「夫であるリヒャルトの葬儀を執り行うことは・・やめにしました。近隣の貴族たちへの連絡もしません。このまま・・1カ月の間、静かに生活し・・喪に服すことにします。なので、葬儀の終了後にこの屋敷を出ていく事になっていた使用人たちは・・・5日間の猶予を与えますので、確実に出ていく事!もし言う事を聞けないというのであれば・・お前たちの退職金は全額没収、それどこらか推薦状も取り上げることに致しますっ!」
あまりの横暴なアグネスの言葉に周囲はざわめき立ったが・・皆アグネスが怖くて何も発言する事が出来なかった。するとアグネスはそれが意外だったらしく、腕組みをして周囲をグルリと見渡すと言った。
「あら・・・?何、お前たち。てっきリヒャルトの葬儀を上げないことについて・・何か文句の一つでも言ってくるかと思ったけど?」
そしてアグネスはピタリとその視線をブリジットとアーベルの前で止めた。
「「・・・。」」
ブリジットもアーベルも黙ってアグネスを見た。するとアグネスは言う。
「何よ・・・その目つきは。やはり言いたいことがあるようね?さぁ、言ってみなさいっ!」
(ふふ・・せいぜい負け犬の遠吠えみたいに吠えなさい・・・。妙な事を口走れば・・お前などすぐにこの場でクビにしてやるのだから・・・。)
アグネスは不敵に笑いながらアーベルを見た。その視線をまともに受けながらアーベルは口を開いた。
「そうですね・・・言いたいことなら山ほどありますよ。」
「あら・・何かしら?」
「私は貴女に会った時から、なんて愚かな女なのだろうとずっと思っておりました。母娘そろって知性のかけらもないうえ・・・正当なこの屋敷の血筋であられるスカーレット様をこの屋敷から追い出そうとしている。あまつさえスカーレット様の婚約者であるアンドレア様を貴女の娘が寝取ったのですから。」
「な・・・何ですってっ?!」
途端にざわめく使用人たち。アンドレアがエーリカと体の関係をもってしまったばかりスカーレットとの婚約を破棄したことを知るのは使用人たちの中でも上層部の人間しかしらぬ事実であった。
アグネスは、ほとんどの使用人をあつめてしまった為に・・事実を知られ、自分で自分のクビをしめる結果となってしまったのだった―。
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