上 下
52 / 61

第4章 1 夢の世界で話し合い

しおりを挟む
 その日の夜―

私は夢の世界でロザリアと一緒に話をしていた。

「あーあ・・・。本当に私、ジョバンニ様と婚約破棄してしまったんですね。」

何も無いピンク色の空間で隣に座っていたロザリアの頭を私は軽く小突いた。

「こら、ロザリア。」

「あ・・何するんですか、里香さん。」

ロザリアが小突かれた頭を押さえながら言う。

「ジョバンニ様なんて言い方して・・・あんた、ひょっとしてまだあのクズ男に未練があるんじゃないの?今日は客観的にジョバンニの様子を見る事ができたはずなのに・・・まだ様付で呼ぶ気なの?

「う・・確かに見る事はできましたけど・・・。」

「なら分かるわよね?あの男がどれだけ最低かって事が!」

「う・・ま、まあ・・確かに・・。」

「いい?前にも話したけど・・・あの親子はギンテル家の財産しか興味が無いのよ?最低な輩なのよ?これで良かったのよ!」

私はロザリアの両肩を掴み、ガクガク揺さぶりながら言う。

「は、はい!わ、分かりましたっ!」

「それよりも・・ナッツさんよ。」

「え?ナッツさん?」

ロザリアが首を傾げた。

「何言ってるの~恍けちゃってぇ~・・・知ってるのよ?2人とも・・すごく良い雰囲気でデートしてたじゃないの?ん?」

右ひじでロザリアをグリグリしながら私は言う。

「え、ええ~・・そ、そんな・・良い雰囲気だなんて・・。」

途端に顔を赤らめるロザリア。フフ・・本当に分かりやすい少女だ。

「いい?そもそも私が元の世界に戻れる条件は・・ロザリアが本当に幸せだと感じた時なのよね?」

「は、はい・・そうですが・・・。」

「今のロザリアは・・・以前とは比べ物にならないくらいに変わったわ。外見も痩せて美人になったし、勉強も出来るようになったし、家庭科だってスポーツだって・・私の努力の賜物で貴女は全てを手に入れる事が出来たじゃない!」

「は、はあ・・・。」

何故か煮え切らない返事をするロザリア。

「それなのに・・・何故?何故私はいまだに元の世界に戻れないと思う?」

「さ、さぁ・・?」

ロザリアは自分の事なのに首を傾げる。

「つまりねぇ・・貴女はまだ自分で幸せだと感じていないって事よ?」

「はぁ・・・。」

「私が元の世界に戻る為には・・貴女の幸福度をもっと上げる必要があるわ・・・。つまり、それは・・。」

「そ、それは・・?」

「ずばり、恋よっ!」

私はビシイッとロザリアを指さすと言った。

「ええっ?!こ、恋っ?!」

「そう、今のロザリアに足りないのは恋愛なのよっ!恋人をまずは作るのよっ!きっと本当の恋を知れば・・・今度こそあなたの幸福度はマックスになり・・私は晴れて、元の世界へ帰る事が出来るはずよっ!」

「は、はあ・・・そんなものでしょうか・・?」

ロザリアはまだ疑わし気な目で私を見ているが・・。

「いい?と言うわけで・・・明日から私は引っ込むからね?自分で何とかしなさい。」

「ええっ?!そ、そんな・・・・!私が自力で恋人を見つけなくちゃいけないんですかっ?!」

「当然じゃないのっ!私が恋愛してどうするのよ?大体・・・私には元の世界に彼氏がいるんだから。彼氏がいる私が別の男性と恋仲になるわけにはいかないでしょう?大体恋愛するのに代理を立てるなんて・・あり得ない話だからね?」

「う、う・・・そ、そんな・・。」

激しく動揺するロザリアに私は言った。

「まあまあ・・・明日は日曜なんだし・・新しい恋を探しにお出かけしなさいよ?」

私はロザリアの肩をバンバン叩きながら笑うのだった―。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『完結』人見知りするけど 異世界で 何 しようかな?

カヨワイさつき
恋愛
51歳の 桜 こころ。人見知りが 激しい為 、独身。 ボランティアの清掃中、車にひかれそうな女の子を 助けようとして、事故死。 その女の子は、神様だったらしく、お詫びに異世界を選べるとの事だけど、どーしよう。 魔法の世界で、色々と不器用な方達のお話。

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー
恋愛
 病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。 *番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜

晴行
恋愛
 乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。  見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。  これは主人公であるアリシアの物語。  わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。  窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。 「つまらないわ」  わたしはいつも不機嫌。  どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。  あーあ、もうやめた。  なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。  このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。  仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。  __それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。  頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。  の、はずだったのだけれど。  アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。  ストーリーがなかなか始まらない。  これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。  カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?  それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?  わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?  毎日つくれ? ふざけるな。  ……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?

もしもし、王子様が困ってますけど?〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか?

南 玲子
恋愛
聖女として召喚されたけれども、まさかの魔力ゼロ判定で神殿から放り出された少女。サクラがささやかな夢。田舎でゆったり子沢山・・・を叶えるために騎士団訓練場で男として働き始めた。そこにいらっしゃった騎士団隊長のユーリス様と、王国の第一王子アルフリード殿下から溺愛されることになり、いや・・・わたし今男なんだけれども・・・あれ?男の振りした女で、今は女装中で・・・?!訳のわからない事になってる!?しかも王位争いに巻き込まれて、田舎でゆっくり子沢山の夢は、どうなるの?! 突然異世界に召喚された剣道少女が、ポジティブに異世界を生き抜いていく。恋愛とアクション半々の物語です。 第一部完結しています。第二部はアルファとベータに分けて公開します。アルファはもう完成済みで、4つに分けて4月28日0時に公開します。毎週金曜日0時公開です。アルファもよろしくお願いします。

【完結】転生少女の立ち位置は 〜婚約破棄前から始まる、毒舌天使少女の物語〜

白井夢子
恋愛
「真実の愛ゆえの婚約破棄って、所詮浮気クソ野郎ってことじゃない?」 巷で流行ってる真実の愛の物語を、普段から軽くあしらっていた。 そんな私に婚約者が静かに告げる。 「心から愛する女性がいる。真実の愛を知った今、彼女以外との未来など考えられない。 君との婚約破棄をどうか受け入れてほしい」 ーー本当は浮気をしている事は知っていた。 「集めた証拠を突きつけて、みんなの前で浮気を断罪した上で、高らかに婚約破棄を告げるつもりだったのに…断罪の舞台に立つ前に自白して、先に婚約破棄を告げるなんて!浮気野郎の風上にも置けない軟弱下衆男だわ…」 そう呟く私を残念そうに見つめる義弟。 ーー婚約破棄のある転生人生が、必ずしも乙女ゲームの世界とは限らない。 この世界は乙女ゲームなのか否か。 転生少女はどんな役割を持って生まれたのか。 これは転生人生に意味を見出そうとする令嬢と、それを見守る苦労人の義弟の物語である。

処理中です...