上 下
46 / 61

第3章 12 デートの感想

しおりを挟む
「う~ん・・・それにしてもそのジョバンニと言う男は酷いね。死ねばいいと言ったんだろう?」

ナッツさんは空を見上げながら言う。

「は、はい・・・。」

「それで、ジョバンニと付き合っている女性からその直後に妙な薬を渡されたと・・・。」

その話はさっき私が泣きながらナッツさんにした話だ。

「うぐっ、そ・そうです・・。」

いまだに涙ぐみながら私は返事をする。

「悪いことは言わないよ。うん、やっぱり・・・ジョバンニって男とは早急に婚約を破棄した方がいいよ。このまま婚約を続けていたら・・今にもっと恐ろしいことになるかもしれない。仮に結婚したとしても・・不幸な未来しかみえないよ。」

ナッツさんが言う。

「は、はい・・・。そうですね・・・。早速父に今夜ジョバンニ様と婚約を破棄したいって伝えます・・。」

項垂れながら言うとナッツさんは笑顔になった。

「そうそう、ロザリアちゃんはとっても美人だからきっとすぐに新しい恋人が見つかるさ。さ、デートの続きでもしようか?」

ナッツさんは立ち上がると右手を差し出してきた。

「は、はい!」

私も左手を差し出すと、ナッツさんはギュッと手を握り締めて引き起こしてくれた。

「それじゃ、行こうか?そうだ、ロザリアちゃん。君は釣りをしたことがあるかい?」

立ち上がるとナッツさんが尋ねてきた。

「釣りですか?いいえ・・・ありませんね。」

「そうか・・よし、それじゃあ釣りをしに行こう!実はこのパーク内にはね、釣りが出来る釣り堀があるんだよ。やり方なら教えてあげるから一緒に釣りをしよう。」

釣りなんて初めての経験だ。

「いいですね~やってみたいです。」

「よし、早速釣り堀へ行こう!」

ナッツさんは私の左手をしっかりつかむと歩き出した。そして私はナッツさんの横顔を見つめ、少しずつ胸が高鳴っていくのを感じた―。


 その後、私とナッツさんは釣りを2人で楽しんだ。ナッツさんの教え方が上手だったのか、私は初めて釣りを経験したのに、2匹の魚を釣り上げる事が出来た。ナッツさんは6匹釣り上げた。

「ところでナッツさん、釣った魚はどうすればいいんですか?」

私は足元に置いたバケツの中で泳ぐ魚を見てナッツさんに尋ねた。

「うん、そうだね。この魚は持って帰ることも出来るし、この店で調理して食べる事も出来るよ。ほら、向こうの人たちを見てごらんよ。」

ナッツさんの差した先にはテーブル席がいくつかあって、そこで食事をしている人たちがいた。

「あの人たちはね、自分たちが釣った魚をこの店で調理してもらって食事をしているんだよ。釣りたては鮮度もいいし、とっても美味しいんだ。」

「うわあ・・それはいいですね。私も食べてみたいです。」

私は肉も魚も大好きだ。自分で釣った魚が食べられるなんて滅多にない経験だしね。

「よし、お昼の時間も過ぎてしまったし・・それじゃ遅めのお昼ごはんって事でこの店で食事にしよう。」

ナッツさんは笑顔で言った。


 そしてその後、私とナッツさんは釣った魚をお店に預けて調理をお願いした。
出てきた魚料理はムニエルやホイル焼き、蒸し料理・・等で、どれもとても美味しかった。
その後も2人でパーク内を散策し、植物園や併設されている小さな牧場で乳しぼり体験等をして楽しんだ―。


****

夕方―

「ナッツさん。今日は色々ありがとうございました。とっても楽しかったです。」

パークの出入り口で私は頭を下げた。

「こちらこそとっても楽しかったよ。ロザリアちゃんさえよければまた2人で何処かへ遊びに行かないかい?」

笑顔のナッツさんを見上げて、私の胸は高鳴った。

「は、はいっ!ぜ、是非っ!」

思わず声が上ずる私。

「アハハハ・・良かった。断られなくて。それじゃ僕は方向がこっちだから。」

ナッツさんが差したのは王城がある方角だ。

「それじゃ、私はこっちの方角なので。」

ナッツさんとは反対側の道をさす。

「それで、どうする?また走って帰るの?」

冗談っぽく尋ねられた。

「いいえ、歩いて帰りますよ。これも運動の為ですからね。」

馬車を使って帰れば里香さんに後で何と言われるか分かったものじゃないし・・。

「そっか、それじゃまた。」

「はい、また。」

そして私たちは互いに手を振りあってその場で別れた。



****

屋敷までの道を歩き始めると、突然頭の中で里香さんが話しかけてきた。


《 どうだった、今日のデートは? 》

「はい、とても楽しかったです。」

《 そっか、それは良かった。いい、ロザリア。ちゃんとジョバンニとの婚約破棄の件・・父親に伝えるのよ? 》

「はい、分かっていますってば。」

苦笑しながら答える私。

そして私と里香さんは互いに話をしながら屋敷まで歩き続けた。

屋敷ではとんでも無いことが起こっていることも知らずに―。

 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『完結』人見知りするけど 異世界で 何 しようかな?

カヨワイさつき
恋愛
51歳の 桜 こころ。人見知りが 激しい為 、独身。 ボランティアの清掃中、車にひかれそうな女の子を 助けようとして、事故死。 その女の子は、神様だったらしく、お詫びに異世界を選べるとの事だけど、どーしよう。 魔法の世界で、色々と不器用な方達のお話。

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー
恋愛
 病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。 *番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜

晴行
恋愛
 乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。  見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。  これは主人公であるアリシアの物語。  わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。  窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。 「つまらないわ」  わたしはいつも不機嫌。  どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。  あーあ、もうやめた。  なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。  このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。  仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。  __それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。  頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。  の、はずだったのだけれど。  アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。  ストーリーがなかなか始まらない。  これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。  カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?  それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?  わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?  毎日つくれ? ふざけるな。  ……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?

もしもし、王子様が困ってますけど?〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか?

南 玲子
恋愛
聖女として召喚されたけれども、まさかの魔力ゼロ判定で神殿から放り出された少女。サクラがささやかな夢。田舎でゆったり子沢山・・・を叶えるために騎士団訓練場で男として働き始めた。そこにいらっしゃった騎士団隊長のユーリス様と、王国の第一王子アルフリード殿下から溺愛されることになり、いや・・・わたし今男なんだけれども・・・あれ?男の振りした女で、今は女装中で・・・?!訳のわからない事になってる!?しかも王位争いに巻き込まれて、田舎でゆっくり子沢山の夢は、どうなるの?! 突然異世界に召喚された剣道少女が、ポジティブに異世界を生き抜いていく。恋愛とアクション半々の物語です。 第一部完結しています。第二部はアルファとベータに分けて公開します。アルファはもう完成済みで、4つに分けて4月28日0時に公開します。毎週金曜日0時公開です。アルファもよろしくお願いします。

【完結】転生少女の立ち位置は 〜婚約破棄前から始まる、毒舌天使少女の物語〜

白井夢子
恋愛
「真実の愛ゆえの婚約破棄って、所詮浮気クソ野郎ってことじゃない?」 巷で流行ってる真実の愛の物語を、普段から軽くあしらっていた。 そんな私に婚約者が静かに告げる。 「心から愛する女性がいる。真実の愛を知った今、彼女以外との未来など考えられない。 君との婚約破棄をどうか受け入れてほしい」 ーー本当は浮気をしている事は知っていた。 「集めた証拠を突きつけて、みんなの前で浮気を断罪した上で、高らかに婚約破棄を告げるつもりだったのに…断罪の舞台に立つ前に自白して、先に婚約破棄を告げるなんて!浮気野郎の風上にも置けない軟弱下衆男だわ…」 そう呟く私を残念そうに見つめる義弟。 ーー婚約破棄のある転生人生が、必ずしも乙女ゲームの世界とは限らない。 この世界は乙女ゲームなのか否か。 転生少女はどんな役割を持って生まれたのか。 これは転生人生に意味を見出そうとする令嬢と、それを見守る苦労人の義弟の物語である。

処理中です...