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第3章 11 笑ったり泣いたり
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「ロザリアちゃん・・君、笑ってるだろう?」
湖の真ん中迄ボートを漕いできたナッツさんが面白そうに言う。
「え?い、いえっ!まさかっ!婚約者がこの場に不釣り合いな格好で現れて、湖に落ちてもがく姿を見て笑うなんて・・・!」
しかし、自分で分かっている。今、こうして先ほどの惨めなジョバンニ様の姿を思い浮かべる度にお腹の底から笑いだしたくなってくる自分がいる事に・・・。
すると私の思っている事が分かったのか、ナッツさんが言った。
「ロザリアちゃん・・・我慢は身体によくないよ・・自分を解放してあげないと・・。」
真顔で言われると、余計先ほどの光景が鮮明に思い出される。もう・・限界だ。
「ア・・・アハハハハハハッ!!も、もうダメ・・・!もう我慢の限界!アハハハハハハハッ!ヒィ~・・・・く、苦しい・・笑いがと、止まらな・・・ハハハハッ!」
その後・・・結局私は湖の真ん中のボートの上で10分以上お腹を抱えて笑い続けてしまった。湖中に響き渡る笑い声に・・私とナッツさんは人々から注目されるのだった―。
****
それから約20分後―
ナッツさんにアイス・カフェオレをごちそうになりながら、石畳の噴水前広場の木のベンチに腰かけている私達。目の前の噴水は勢いよく水を噴き上げ、太陽にキラキラ照らされて小さな虹を描き出している。それを母子連れが楽し気に眺めてる姿が目に入った。
「どう?少しは落ち着いた?」
ナッツさんが私を覗き込むように尋ねてくる。
「はい・・・まだお腹痛いですけど・・・何とか収まりました。ありがとうございます。」
ナッツさんにお礼を述べた。
「え?何故お礼を言うの?」
「はい、ナッツさんがあそこでボートを漕ぎだしてくれていなければ私はジョバンニ様に捕まっていたかもしれないからです。そして望まぬデートを・・・。」
そこまで行って私はハッとなった。あれ・・・私ってジョバンニ様の事を好きだったはず・・なのに、今望まぬデートって・・これではまるで・・里香さんがジョバンニ様を毛嫌いする気持ちが伝染してしまったようだ。
「ジョバンニってさっきの彼の事だよね?婚約破棄予定の・・。」
「はい、そうです。」
「で・・ロザリアちゃんは彼の事好きだったの?」
ナッツさんは私の方を見もせずに、ベンチの正面から見える噴水を見つめながら尋ねてきた。その目は・・何となく遠いものを見ているようにも見える。
「私とジョバンニ様は・・政略結婚相手として先方から申し出があったんです。ジョバンニ様の家柄は・・子爵家でしたが・・・家紋が傾き始めていて・・それでジョバンニ様と同じ年齢の私が選ばれたんですけど・・。」
そこで私は持っていたアイス・カフェオレを一口飲むと言った。
「お恥ずかしながら・・・私の方から一目惚れしてしまったんです。父は本当はこの婚約には反対していたんです。はっきり言ってしまえば・・・ジョバンニ様の家はあまり良い噂が無かったので・・・。だけど私が我がままを言って無理やり婚約を・・・。それがジョバンニ様に伝わったんでしょうね。自分なら何をやっても惚れられている立場にあるから許されるだろうって思われてしまったみたいで・・・2人で何処かへ出かけてもお金を出すのはいつも私だし、私の前で平気で他の女の事デートはするし・・あ、挙句の果てには・・お前なんか死ねばいいって・・・!」
「ロザリアちゃん・・。」
気付けば私は俯いて、ポタポタと涙を流していた。それを黙って見ていたナッツさんはおもむろにポケットからハンカチを取り出し、渡してきた。
「ロザリアちゃん。これ・・使うといいよ。」
「ナッツさん・・・。」
涙にぬれた顔を上げると、ナッツさんはにっこり笑うとハンカチで私の目の涙をぬぐってくれた。
「あ・・。」
「大丈夫、ちゃんと洗濯済みだから。」
「う~・・・・あ、ありがとうございますぅ~っ!」
そして、恥ずかしいことに今度の私は・・・広場のベンチで10分以上泣き続けるのだった―。
湖の真ん中迄ボートを漕いできたナッツさんが面白そうに言う。
「え?い、いえっ!まさかっ!婚約者がこの場に不釣り合いな格好で現れて、湖に落ちてもがく姿を見て笑うなんて・・・!」
しかし、自分で分かっている。今、こうして先ほどの惨めなジョバンニ様の姿を思い浮かべる度にお腹の底から笑いだしたくなってくる自分がいる事に・・・。
すると私の思っている事が分かったのか、ナッツさんが言った。
「ロザリアちゃん・・・我慢は身体によくないよ・・自分を解放してあげないと・・。」
真顔で言われると、余計先ほどの光景が鮮明に思い出される。もう・・限界だ。
「ア・・・アハハハハハハッ!!も、もうダメ・・・!もう我慢の限界!アハハハハハハハッ!ヒィ~・・・・く、苦しい・・笑いがと、止まらな・・・ハハハハッ!」
その後・・・結局私は湖の真ん中のボートの上で10分以上お腹を抱えて笑い続けてしまった。湖中に響き渡る笑い声に・・私とナッツさんは人々から注目されるのだった―。
****
それから約20分後―
ナッツさんにアイス・カフェオレをごちそうになりながら、石畳の噴水前広場の木のベンチに腰かけている私達。目の前の噴水は勢いよく水を噴き上げ、太陽にキラキラ照らされて小さな虹を描き出している。それを母子連れが楽し気に眺めてる姿が目に入った。
「どう?少しは落ち着いた?」
ナッツさんが私を覗き込むように尋ねてくる。
「はい・・・まだお腹痛いですけど・・・何とか収まりました。ありがとうございます。」
ナッツさんにお礼を述べた。
「え?何故お礼を言うの?」
「はい、ナッツさんがあそこでボートを漕ぎだしてくれていなければ私はジョバンニ様に捕まっていたかもしれないからです。そして望まぬデートを・・・。」
そこまで行って私はハッとなった。あれ・・・私ってジョバンニ様の事を好きだったはず・・なのに、今望まぬデートって・・これではまるで・・里香さんがジョバンニ様を毛嫌いする気持ちが伝染してしまったようだ。
「ジョバンニってさっきの彼の事だよね?婚約破棄予定の・・。」
「はい、そうです。」
「で・・ロザリアちゃんは彼の事好きだったの?」
ナッツさんは私の方を見もせずに、ベンチの正面から見える噴水を見つめながら尋ねてきた。その目は・・何となく遠いものを見ているようにも見える。
「私とジョバンニ様は・・政略結婚相手として先方から申し出があったんです。ジョバンニ様の家柄は・・子爵家でしたが・・・家紋が傾き始めていて・・それでジョバンニ様と同じ年齢の私が選ばれたんですけど・・。」
そこで私は持っていたアイス・カフェオレを一口飲むと言った。
「お恥ずかしながら・・・私の方から一目惚れしてしまったんです。父は本当はこの婚約には反対していたんです。はっきり言ってしまえば・・・ジョバンニ様の家はあまり良い噂が無かったので・・・。だけど私が我がままを言って無理やり婚約を・・・。それがジョバンニ様に伝わったんでしょうね。自分なら何をやっても惚れられている立場にあるから許されるだろうって思われてしまったみたいで・・・2人で何処かへ出かけてもお金を出すのはいつも私だし、私の前で平気で他の女の事デートはするし・・あ、挙句の果てには・・お前なんか死ねばいいって・・・!」
「ロザリアちゃん・・。」
気付けば私は俯いて、ポタポタと涙を流していた。それを黙って見ていたナッツさんはおもむろにポケットからハンカチを取り出し、渡してきた。
「ロザリアちゃん。これ・・使うといいよ。」
「ナッツさん・・・。」
涙にぬれた顔を上げると、ナッツさんはにっこり笑うとハンカチで私の目の涙をぬぐってくれた。
「あ・・。」
「大丈夫、ちゃんと洗濯済みだから。」
「う~・・・・あ、ありがとうございますぅ~っ!」
そして、恥ずかしいことに今度の私は・・・広場のベンチで10分以上泣き続けるのだった―。
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