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第1章 16 ロザリアの父

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「さあ、ロザリア様。旦那様がお待ちでございます。こちらがダイニングルームでございますので。」

メイド長さん・・名前はロッテさん・・・が案内してくれた。メイド長さんには目が覚めたら記憶を失ってしまったようだと説明してある。ロッテさんは驚いて再度医者を呼ぼうとしたけれども、一過性のものですぐに記憶が戻るかもしれないからと説得し、何とか医者だけは免れたのであった。

「ここが食事をする部屋なのね。覚えておくわ。」

腕組みをしながらうんうん頷くとロッテさんがドアをノックしてくれた。

コンコン

するとドアの奥から男性の声が聞こえてきた。

「誰かね?」

「ロザリアお嬢様をお連れしました。」

「おお、そうかそうか。すぐに中へ連れてきてくれ。」

「失礼致します。」

ロッテさんが大きな扉をギイイ・・・・ッと開けると、そこはまるで舞台のステージ並みの広さの部屋で見上げる程に高い天井には豪華なシャンデリアが幾つもぶら下がっている。真っ白なテーブルクロスがかかった長方形の大きなテーブルにはまるでバイキング料理並のメニューが所せましと並べられている。

「おお、ロザリア。気分はどうだい?いや・・良いはずは無いだろうなあ・・。何せ記憶が無いとなると・・・」

「え?!」

突如テーブルの向こうから声が掛けられ、私は慌てて声の方を振り向いた。山積み?にされた料理にばかり気を取られ、人が座っていた事に気が付かなかったのだ。
そして私の視線の先には・・・でっぷりと太り、髪が禿げあがった中年男性が座っている。

「あ、あの・・・お・・・・父様・・・?」

恐る恐る声を掛けると、中年男性は嬉しそうに微笑む。

「ああ、そうだよ。ロザリア。可愛そうに・・・記憶を無くしてしまったそうじゃないか・・・。おお・・・何という事だ・・・。」

父?は胸元のチーフを取り出すと、バサッと広げて目頭を押さえる。

「まあよい、さあ、ロザリア。お座り。お前の大好きな料理ばかりコースで揃えたのだよ?」

「は・はあ・・・。」

ま・まさか・・この料理を全て食べろとでも言うのだろうか?!

とりあえず私は席へ向かい・・・椅子に腰かけ、目の前の料理を眺めながら尋ねた。

「あの・・・お父様・・・いつも私はこんなにたくさんの食事を・・とっていたのでしょうか?」

恐る恐る尋ねてみる。

「何だ?ひょとして・・・足りなかったか?」

「いいえっ!まさかっ!」

な・何と恐ろしい事を言うのだろうっ!

「そうかい?なら良いが・・・さあ、たんとお食べ。1週間もこん睡状態にあって、お前はすっかり痩せてしまったからのお。」

父は次々と料理に手を伸ばし、食べながら話し続ける。
はいいっ?!この体系を見てもまだそんな事を言うのだろうかっ!

「い、いえ・・まだまだ痩せないと・・・これではまだ肥満体型ですから。」

すると父はは悲しそうな顔をした。

「すまないの・・・ロザリア。お前の母が6歳で亡くなり・・・私も仕事が忙しく、お前に構ってやれず・・・食事をする事でさみしさを紛らわしていたのだろう?だからお前は太ってしまい、それを学校で馬鹿にされて虐められていたと知った時はどんなに心を痛めたか・・・まさかそれで婚約者のジョバンニにまで『死ねばいい』と言われとはな・・・。あの生意気な小僧め・・・。でも安心おし?ロザリア。」

お?もしかして婚約破棄でもしてくれるのだろうか?あんな失礼男と一緒になっても不幸になるのは目に見えているしね。

「嫌がらせをするためにも絶対に婚約破棄はさせないからな?何、爵位はうちの方が上なのだ。向こうは拒否等出来ないからな。」

父はサラリととんでも無いことを言ってくれた―。



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