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4-6 ジュリアン侯爵の怪しい微笑み
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逃げ帰るようにジュリアン侯爵家に帰宅した私はカサンドラの様子が頭から離れなかった。
そのせいで、こんなに美しいジュリアン様の邸宅のお庭を目の前にしているのにも関わらず、いつものように集中して風景画を描く事が出来なかった。
「全く・・・カサンドラをからかって帰ろうと思っていたのに、まさかあんな怖い目に合うとは思わなかったわ・・。」
ベンチに座りながら溜息をついた時、背後で声が聞こえた。
「あんな怖い目って・・・一体どんな怖い目にあったんだい?」
振り向くとそこにはジュリアン侯爵が立っていた。
「ジュリアン様っ!お仕事は本日はどうされたのですか?」
「うん、今日の仕事はもう終わり。メイドたちにライザの行方を聞いたら庭園で風景画を描いていると教えてもらって様子を見に来たんだよ。隣座っていいかな?」
「はい、どうぞ。」
私は席を詰めると、ジュリアン侯爵は隣に座ってきた。そして私の手元にあるスケッチブックを見ると言った。
「集中して描くことが出来なかった・・・って言ってたけど、素晴らしい出来じゃないか。さすがはライザだ。」
「い、いえ。まだまだ未熟でお恥ずかしい限りです。あ、そういえばジュリアン様。最近ではパステル画が人気らしいんです。なので次回作からはパステル画に挑戦してみたいと思うんです。」
「うん、いいね・・・パステル画か・・・。色鉛筆とは違って、柔らかい雰囲気の絵が出来そうだね?」
「はい、そう思います。」
ジュリアン侯爵と会話をしながら改めて思う。ああ・・やはりこの邸宅は落ち着くな・・・と。今日のモンタナ家とは比べようもない。
「ところでライザ、先程あんな怖い目に合うとは思わなかったと言っていたけど・・一体何があったんだい?」
ジュリアン侯爵に質問され、私は答えた。
「はい。実は・・・・。」
今日モンタナ家であった出来事を一通り説明している間、ジュリアン侯爵は難しい顔で私の話を聞いていた。そしてすべての話を終えるとジュリアン侯爵は言った。
「どうやら・・・予想以上の出来事がモンタナ家で起こっていたようだね・・。」
「え?予想以上?それは・・・一体どういうことなのですか?」
まさか・・ジュリアン侯爵はこうなる事を想定していたのだろうか?
「エンブロイ侯爵の話が出た時から怪しいと思っていたんだ。・・彼が奴隷売買だけでなく麻薬も取り扱っているという噂があるからね。」
「え・・・?ま、麻薬・・・?」
「まあ、これはあくまで噂・・に過ぎないけどね。それでどうするライザ?君はこのままモンタナ家の傍観者でいるか、それともカサンドラを助ける為に動くか・・・。」
ジュリアン侯爵の問いに私は答えた。
「私が・・・カサンドラを助ける?まさか・・・そんな事、天と地がひっくり返ってもあり得ませんわ。」
するとジュリアン侯爵は満足気に笑みを浮かべると言った。
「それでこそ、私が選んだライザだ。そうだね・・・彼らは皆罪人だ。私は判事として彼らを罰する立場にある。良かったよ、ライザ。君がモンタナ家を庇いたてするような女性じゃなくて。」
「ありがとうございます、ジュリアン様。」
ジュリアン侯爵は立ち上がると言った。
「ライザ、2日後のカサンドラの誕生パーティ・・今までにないすごいショーを見ることが出来るよ?招待客達も皆・・・驚くことだろう。」
「え・・・?ジュリアン様は何が起こるかご存じなのですか?」
「もちろんだよ、ライザ。ああ・・そうだ。ライザ、君の為にドレスを何着か用意させたんだよ。美しく着飾って変身を遂げた君をお披露目するにも良い機会だと思う。フフ・・今から楽しみだよ。」
そしてジュリアン侯爵は美しくも怪しい笑みを浮かべる。
私は・・・ゾクリとしながらも彼の笑みに見惚れるのだった―。
そのせいで、こんなに美しいジュリアン様の邸宅のお庭を目の前にしているのにも関わらず、いつものように集中して風景画を描く事が出来なかった。
「全く・・・カサンドラをからかって帰ろうと思っていたのに、まさかあんな怖い目に合うとは思わなかったわ・・。」
ベンチに座りながら溜息をついた時、背後で声が聞こえた。
「あんな怖い目って・・・一体どんな怖い目にあったんだい?」
振り向くとそこにはジュリアン侯爵が立っていた。
「ジュリアン様っ!お仕事は本日はどうされたのですか?」
「うん、今日の仕事はもう終わり。メイドたちにライザの行方を聞いたら庭園で風景画を描いていると教えてもらって様子を見に来たんだよ。隣座っていいかな?」
「はい、どうぞ。」
私は席を詰めると、ジュリアン侯爵は隣に座ってきた。そして私の手元にあるスケッチブックを見ると言った。
「集中して描くことが出来なかった・・・って言ってたけど、素晴らしい出来じゃないか。さすがはライザだ。」
「い、いえ。まだまだ未熟でお恥ずかしい限りです。あ、そういえばジュリアン様。最近ではパステル画が人気らしいんです。なので次回作からはパステル画に挑戦してみたいと思うんです。」
「うん、いいね・・・パステル画か・・・。色鉛筆とは違って、柔らかい雰囲気の絵が出来そうだね?」
「はい、そう思います。」
ジュリアン侯爵と会話をしながら改めて思う。ああ・・やはりこの邸宅は落ち着くな・・・と。今日のモンタナ家とは比べようもない。
「ところでライザ、先程あんな怖い目に合うとは思わなかったと言っていたけど・・一体何があったんだい?」
ジュリアン侯爵に質問され、私は答えた。
「はい。実は・・・・。」
今日モンタナ家であった出来事を一通り説明している間、ジュリアン侯爵は難しい顔で私の話を聞いていた。そしてすべての話を終えるとジュリアン侯爵は言った。
「どうやら・・・予想以上の出来事がモンタナ家で起こっていたようだね・・。」
「え?予想以上?それは・・・一体どういうことなのですか?」
まさか・・ジュリアン侯爵はこうなる事を想定していたのだろうか?
「エンブロイ侯爵の話が出た時から怪しいと思っていたんだ。・・彼が奴隷売買だけでなく麻薬も取り扱っているという噂があるからね。」
「え・・・?ま、麻薬・・・?」
「まあ、これはあくまで噂・・に過ぎないけどね。それでどうするライザ?君はこのままモンタナ家の傍観者でいるか、それともカサンドラを助ける為に動くか・・・。」
ジュリアン侯爵の問いに私は答えた。
「私が・・・カサンドラを助ける?まさか・・・そんな事、天と地がひっくり返ってもあり得ませんわ。」
するとジュリアン侯爵は満足気に笑みを浮かべると言った。
「それでこそ、私が選んだライザだ。そうだね・・・彼らは皆罪人だ。私は判事として彼らを罰する立場にある。良かったよ、ライザ。君がモンタナ家を庇いたてするような女性じゃなくて。」
「ありがとうございます、ジュリアン様。」
ジュリアン侯爵は立ち上がると言った。
「ライザ、2日後のカサンドラの誕生パーティ・・今までにないすごいショーを見ることが出来るよ?招待客達も皆・・・驚くことだろう。」
「え・・・?ジュリアン様は何が起こるかご存じなのですか?」
「もちろんだよ、ライザ。ああ・・そうだ。ライザ、君の為にドレスを何着か用意させたんだよ。美しく着飾って変身を遂げた君をお披露目するにも良い機会だと思う。フフ・・今から楽しみだよ。」
そしてジュリアン侯爵は美しくも怪しい笑みを浮かべる。
私は・・・ゾクリとしながらも彼の笑みに見惚れるのだった―。
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