62 / 95
第61話 大騒ぎ
しおりを挟む
エドに背を向けてベッドに横たわっていると、彼のボヤキが聞こえてきた。
「一体ステラは何がしたいんだ……? さっぱり理解できない。と言うか、これってどうやって開封すればいいのだろう……? あ、こんなところにペーパーナイフがある。これで切ってみるか。……よし! 切れた。では早速……」
青海苔の香りと共に、パリンパリンとポテチを噛み砕く音が聞こえてくる。
「何だ! これは……今までステラから貰った食べ物でも1、2位を競う旨さだ!」
「あの!」
ガバッとベッドから身を起こすと、相手が王子であることを承知で睨みつけた。
「エド、うるさくて眠れないのでお願いですから静かにして頂けますか!?」
「あ、悪かった。だが、あまりにも美味しすぎて感動が止まらないんだよ。ステラ、このポテチ……」
「ええ、全部差し上げますのでお静かにしていただけますか? さもないと……」
「分かった、おとなしく食べる」
コクコクとエドは首を縦に振る。
「お願いしますよ。では」
今度こそ、眠る覚悟で私は再びベッドに横たわり……青海苔の香りが漂う部屋でいつしか深い眠りに就いていた――
「……ハッ」
気付けば、また私は元の自分の部屋の床に寝そべっていた。着ている服を確認してみると、眠りに就いたときと同じのを着用している。
「うん……やっぱり、コレはアレかな?」
ムクリと起き上がると、食料が保管してある段ボール箱へ向かった。
「う~ん……やっぱりリセットされていないかぁ……大分食べ物が減ってきちゃったなぁ」
でも減ったと言っても、まだ在庫はある。
これも製菓会社に勤めている兄のおかげだ。毎月段ボール一杯のせんべいやスナックを送ってくれていたから大助かりだ。
「……兄さん、元気にしているかな……」
少しだけ、ホームシック? 的な感情がこみ上げてしんみりし……ハッと気付いた。
ちょっと待って……?
ステラは死んだものだとばかり思っていたけど、魂の交換とやらが行われているなら、ステラは私の身体の中で生きているってことじゃない!?
「いやあああ!! ステラ~ッ!! 万一、私の身体でおかしなことをしていたら承知しないんだからね! うう~……ステラと連絡が取れる方法があればいいのに……!」
けれど苛ついてみても仕方ない。
先ずはいつものように食べ物を持ち込まなければ。
「う~ん……もう詰め込む袋が無いな……もう、レジ袋でいいか」
食器棚の奥から保管していたレジ袋を探し出すと、詰め込めるだけ詰め込んだ。
ポテチやコーンスナック、せんべい。ナッツ……。
「よし、こんなものかな?」
レジ袋を腕に引っ掛けると、私はベッドに横たわると目を閉じた。
頭の中で羊の数を数えながら……。
****
ガタッ!
ガタガタッ!!
う~ん……何やら騒がしいなぁ……。
ゆっくり目を開けて辺りを見渡し、驚いた。何と部屋の中が荒れ放題なのだ。
全てのクローゼットは開け放たれているし、バルコニーへ続く窓も全開になっている。
「な、な、何……この状況は……!」
辺りをきょろきょろ見渡していると、ウォークインクローゼットの扉が大きく開かれてガサガサ音が聞こえている。
「まさか……ほ、本当に泥棒が……?」
その時、突如扉の奥から人影が現れた。
「キャアアアアッ! ど、泥棒!」
「ステラッ!」
思わず目をつぶって叫ぶ声がエドの声と重なった。
「え?」
驚いて目を開けると、髪が乱れたエドが呆然とした顔で私を見ている。
「ま、まさか……!」
「ステラ……!」
「この部屋を散らかしたのはエドですかっ!!」
駆け寄ってこようとするエドに言い放った――
「一体ステラは何がしたいんだ……? さっぱり理解できない。と言うか、これってどうやって開封すればいいのだろう……? あ、こんなところにペーパーナイフがある。これで切ってみるか。……よし! 切れた。では早速……」
青海苔の香りと共に、パリンパリンとポテチを噛み砕く音が聞こえてくる。
「何だ! これは……今までステラから貰った食べ物でも1、2位を競う旨さだ!」
「あの!」
ガバッとベッドから身を起こすと、相手が王子であることを承知で睨みつけた。
「エド、うるさくて眠れないのでお願いですから静かにして頂けますか!?」
「あ、悪かった。だが、あまりにも美味しすぎて感動が止まらないんだよ。ステラ、このポテチ……」
「ええ、全部差し上げますのでお静かにしていただけますか? さもないと……」
「分かった、おとなしく食べる」
コクコクとエドは首を縦に振る。
「お願いしますよ。では」
今度こそ、眠る覚悟で私は再びベッドに横たわり……青海苔の香りが漂う部屋でいつしか深い眠りに就いていた――
「……ハッ」
気付けば、また私は元の自分の部屋の床に寝そべっていた。着ている服を確認してみると、眠りに就いたときと同じのを着用している。
「うん……やっぱり、コレはアレかな?」
ムクリと起き上がると、食料が保管してある段ボール箱へ向かった。
「う~ん……やっぱりリセットされていないかぁ……大分食べ物が減ってきちゃったなぁ」
でも減ったと言っても、まだ在庫はある。
これも製菓会社に勤めている兄のおかげだ。毎月段ボール一杯のせんべいやスナックを送ってくれていたから大助かりだ。
「……兄さん、元気にしているかな……」
少しだけ、ホームシック? 的な感情がこみ上げてしんみりし……ハッと気付いた。
ちょっと待って……?
ステラは死んだものだとばかり思っていたけど、魂の交換とやらが行われているなら、ステラは私の身体の中で生きているってことじゃない!?
「いやあああ!! ステラ~ッ!! 万一、私の身体でおかしなことをしていたら承知しないんだからね! うう~……ステラと連絡が取れる方法があればいいのに……!」
けれど苛ついてみても仕方ない。
先ずはいつものように食べ物を持ち込まなければ。
「う~ん……もう詰め込む袋が無いな……もう、レジ袋でいいか」
食器棚の奥から保管していたレジ袋を探し出すと、詰め込めるだけ詰め込んだ。
ポテチやコーンスナック、せんべい。ナッツ……。
「よし、こんなものかな?」
レジ袋を腕に引っ掛けると、私はベッドに横たわると目を閉じた。
頭の中で羊の数を数えながら……。
****
ガタッ!
ガタガタッ!!
う~ん……何やら騒がしいなぁ……。
ゆっくり目を開けて辺りを見渡し、驚いた。何と部屋の中が荒れ放題なのだ。
全てのクローゼットは開け放たれているし、バルコニーへ続く窓も全開になっている。
「な、な、何……この状況は……!」
辺りをきょろきょろ見渡していると、ウォークインクローゼットの扉が大きく開かれてガサガサ音が聞こえている。
「まさか……ほ、本当に泥棒が……?」
その時、突如扉の奥から人影が現れた。
「キャアアアアッ! ど、泥棒!」
「ステラッ!」
思わず目をつぶって叫ぶ声がエドの声と重なった。
「え?」
驚いて目を開けると、髪が乱れたエドが呆然とした顔で私を見ている。
「ま、まさか……!」
「ステラ……!」
「この部屋を散らかしたのはエドですかっ!!」
駆け寄ってこようとするエドに言い放った――
104
お気に入りに追加
2,215
あなたにおすすめの小説
【完結】結婚式当日、婚約者と姉に裏切られて惨めに捨てられた花嫁ですが
Rohdea
恋愛
結婚式の当日、花婿となる人は式には来ませんでした───
伯爵家の次女のセアラは、結婚式を控えて幸せな気持ちで過ごしていた。
しかし結婚式当日、夫になるはずの婚約者マイルズは式には現れず、
さらに同時にセアラの二歳年上の姉、シビルも行方知れずに。
どうやら、二人は駆け落ちをしたらしい。
そんな婚約者と姉の二人に裏切られ惨めに捨てられたセアラの前に現れたのは、
シビルの婚約者で、冷酷だの薄情だのと聞かされていた侯爵令息ジョエル。
身勝手に消えた姉の代わりとして、
セアラはジョエルと新たに婚約を結ぶことになってしまう。
そして一方、駆け落ちしたというマイルズとシビル。
二人の思惑は───……
【完結】地味令嬢の願いが叶う刻
白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。
幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。
家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、
いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。
ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。
庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。
レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。
だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。
喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…
異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。
ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。
我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。
その為事あるごとに…
「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」
「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」
隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。
そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。
そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。
生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。
一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが…
HOT一位となりました!
皆様ありがとうございます!
傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~
日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】
https://ncode.syosetu.com/n1741iq/
https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199
【小説家になろうで先行公開中】
https://ncode.syosetu.com/n0091ip/
働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。
地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?
妹に婚約者を奪われましたが、公爵令息から求婚されました!
安奈
恋愛
伯爵令嬢のシンディ・エトワールは、侯爵令息フリント・アラベスクに婚約破棄を言い渡された。
破棄理由はシンディの妹との浮気だ。
シンディは婚約者と妹の両方に裏切られ、悲しみの渦に巻き込まれる。
しかし、それを救ったのは公爵令息のディエス・マローネだった。
シンディはディエスの紳士的な態度に次第に心を許すようになっていく。
騎士団長のお抱え薬師
衣更月
ファンタジー
辺境の町ハノンで暮らすイヴは、四大元素の火、風、水、土の属性から弾かれたハズレ属性、聖属性持ちだ。
聖属性持ちは意外と多く、ハズレ属性と言われるだけあって飽和状態。聖属性持ちの女性は結婚に逃げがちだが、イヴの年齢では結婚はできない。家業があれば良かったのだが、平民で天涯孤独となった身の上である。
後ろ盾は一切なく、自分の身は自分で守らなければならない。
なのに、求人依頼に聖属性は殆ど出ない。
そんな折、獣人の国が聖属性を募集していると話を聞き、出国を決意する。
場所は隣国。
しかもハノンの隣。
迎えに来たのは見上げるほど背の高い美丈夫で、なぜかイヴに威圧的な騎士団長だった。
大きな事件は起きないし、意外と獣人は優しい。なのに、団長だけは怖い。
イヴの団長克服の日々が始まる―ー―。
【完結】愛されなかった私が幸せになるまで 〜旦那様には大切な幼馴染がいる〜
高瀬船
恋愛
2年前に婚約し、婚姻式を終えた夜。
フィファナはドキドキと逸る鼓動を落ち着かせるため、夫婦の寝室で夫を待っていた。
湯上りで温まった体が夜の冷たい空気に冷えて来た頃やってきた夫、ヨードはベッドにぽつりと所在なさげに座り、待っていたフィファナを嫌悪感の籠った瞳で一瞥し呆れたように「まだ起きていたのか」と吐き捨てた。
夫婦になるつもりはないと冷たく告げて寝室を去っていくヨードの後ろ姿を見ながら、フィファナは悲しげに唇を噛み締めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる