110 / 118
7-8 2人一緒なら何処へでも
しおりを挟む
私とミラージュは部屋に戻ると、すぐに荷造りの準備を始めた。
「・・それにしても・・あっけない生活でしたね。」
ミラージュが大量のトランクケースを収納部屋から引っ張り出してくると言った。
「ええ・・本当にそうだったわね・・・。」
私はここにやってきた日の事をあれこれ思い出していた。初めてこの国に降りたった時に迎えにやってきた爺やさん。結局・・あの爺やさんはアレックス皇子寄りの人だったから腰痛が悪化して、いまは職を退いている。言っておくけど爺やさんの腰痛が悪化したのは・・決して私のせいではない・・・はずだけど。
そして親切にしてくれたメイド長さん。彼女はあれからすぐに結婚相手が見つかってお嫁にいった。これはきっと私の与えた加護のお陰だと思う。
私のひとりぼっちの結婚式に同情してくれた神父さん。彼は職業柄、膝関節症を患っていたらしいけど、今ではすっかり痛みも無くなり階段の上り下りも楽になったと耳にしている。これも私がこっそり加護を与えた影響によるものだろう。
「たった2カ月だけの嫁入りだったけど・・・住み心地は良かったな・・・。」
せめてあのカウチソファ位持っていけないだろうか・・。私はミラージュをチラリと見ると、私のクローゼットの中に入っている衣装を全て外して、畳んでいた。餞別に全部貰って言っても文句は無いだろうと言いながら、次々とトランクケースにしまっている真っ最中だった。
「ところでレベッカ様・・。私たちの行く当ては・・あるんですか?もうオーランド王国も無くなってしまいましたし・・・。」
ミラージュが尋ねてきた。
「そうね・・・。とりあえず、心当たりの場所は一か所あるんだけど・・とっても素敵な女性の知り合いがいるのよ?彼女はいつでも村においでって言ってくれてるのよ。2人でそこに行かない?」
私はアマゾナとその手下達?の事を思い出した。皆とってもいい人達ばかりだった。
「まぁ・・そんな素晴らしい方とお知り合いなんですね。」
「ええ、そこに行った後は暫く滞在して・・2人で旅に出ない?お母さまの居場所を探す旅に・・。ミラージュと一緒なら何処へだって行けるもの。」
そう・・それこそ天界だろうと、月だろうと・・。
「それもいいですね~。私の居場所はレベッカ様の隣だってこの世に生まれた時から心に決めていましたから。」
2人でニコニコしながら荷造りしていると、部屋の外が騒然としてきた。
何やら大勢の足音がバタバタと走り回る音が聞こえている。
「んもう・・・何でしょうねぇ。この外の騒がしさは・・・。」
ミラージュは口を尖らせる。
コンコン
突然ドアをノックする音が聞こえた。
「どなたでしょうね?全く・・・忙しい時に・・。」
ミラージュが文句を言いながらも立ち上がるとドアを開けた。するとそこに立っていたのはランス皇子だった。
「まあ・・・ランス皇子ではありませんか。」
ミラージュの言葉にランス皇子は言った。
「やあ、ミラージュ。ここにいたんだね。それでレベッカは・・・あ!いたっ!」
ランス皇子は床に座って荷造りをしている私を見た。
「こんにちは、ランス皇子。」
するとランス皇子は、ちょっと失礼と言って部屋に入り込んで来た。
「よ、良かった・・レベッカ。無事だったんだね・・・。」
「はい、おかげさまで。無事でしたよ?」
ランス皇子は私の前にやってくると跪いて言った。
「さっきアレックスとリーゼロッテから話を聞いてきたよ。君はリーゼロッテの策略で危うく滝つぼに落とされそうになったんだってね?」
「ええ、そうです。全く酷い目に遭いましたよ。ミラージュがいなければどうなっていた事か・・・。」
ミラージュは私の言葉に腕組みしながら頷いている。
「それで・・・とうとう離婚話に発展してしまったそうだね?」
「ええ、当然です。愛人に殺されかけたのですから当然ですよ。これ以上この国にはいられませんし、何の未練もありませんから。」
すると・・・。
「お願いだ!レベッカ!どうか・・どうかこの国を去るのを考え直してくれないだろうかっ?!」
突然ランス皇子が床に頭を付けて、私に頭を下げて来た―。
「・・それにしても・・あっけない生活でしたね。」
ミラージュが大量のトランクケースを収納部屋から引っ張り出してくると言った。
「ええ・・本当にそうだったわね・・・。」
私はここにやってきた日の事をあれこれ思い出していた。初めてこの国に降りたった時に迎えにやってきた爺やさん。結局・・あの爺やさんはアレックス皇子寄りの人だったから腰痛が悪化して、いまは職を退いている。言っておくけど爺やさんの腰痛が悪化したのは・・決して私のせいではない・・・はずだけど。
そして親切にしてくれたメイド長さん。彼女はあれからすぐに結婚相手が見つかってお嫁にいった。これはきっと私の与えた加護のお陰だと思う。
私のひとりぼっちの結婚式に同情してくれた神父さん。彼は職業柄、膝関節症を患っていたらしいけど、今ではすっかり痛みも無くなり階段の上り下りも楽になったと耳にしている。これも私がこっそり加護を与えた影響によるものだろう。
「たった2カ月だけの嫁入りだったけど・・・住み心地は良かったな・・・。」
せめてあのカウチソファ位持っていけないだろうか・・。私はミラージュをチラリと見ると、私のクローゼットの中に入っている衣装を全て外して、畳んでいた。餞別に全部貰って言っても文句は無いだろうと言いながら、次々とトランクケースにしまっている真っ最中だった。
「ところでレベッカ様・・。私たちの行く当ては・・あるんですか?もうオーランド王国も無くなってしまいましたし・・・。」
ミラージュが尋ねてきた。
「そうね・・・。とりあえず、心当たりの場所は一か所あるんだけど・・とっても素敵な女性の知り合いがいるのよ?彼女はいつでも村においでって言ってくれてるのよ。2人でそこに行かない?」
私はアマゾナとその手下達?の事を思い出した。皆とってもいい人達ばかりだった。
「まぁ・・そんな素晴らしい方とお知り合いなんですね。」
「ええ、そこに行った後は暫く滞在して・・2人で旅に出ない?お母さまの居場所を探す旅に・・。ミラージュと一緒なら何処へだって行けるもの。」
そう・・それこそ天界だろうと、月だろうと・・。
「それもいいですね~。私の居場所はレベッカ様の隣だってこの世に生まれた時から心に決めていましたから。」
2人でニコニコしながら荷造りしていると、部屋の外が騒然としてきた。
何やら大勢の足音がバタバタと走り回る音が聞こえている。
「んもう・・・何でしょうねぇ。この外の騒がしさは・・・。」
ミラージュは口を尖らせる。
コンコン
突然ドアをノックする音が聞こえた。
「どなたでしょうね?全く・・・忙しい時に・・。」
ミラージュが文句を言いながらも立ち上がるとドアを開けた。するとそこに立っていたのはランス皇子だった。
「まあ・・・ランス皇子ではありませんか。」
ミラージュの言葉にランス皇子は言った。
「やあ、ミラージュ。ここにいたんだね。それでレベッカは・・・あ!いたっ!」
ランス皇子は床に座って荷造りをしている私を見た。
「こんにちは、ランス皇子。」
するとランス皇子は、ちょっと失礼と言って部屋に入り込んで来た。
「よ、良かった・・レベッカ。無事だったんだね・・・。」
「はい、おかげさまで。無事でしたよ?」
ランス皇子は私の前にやってくると跪いて言った。
「さっきアレックスとリーゼロッテから話を聞いてきたよ。君はリーゼロッテの策略で危うく滝つぼに落とされそうになったんだってね?」
「ええ、そうです。全く酷い目に遭いましたよ。ミラージュがいなければどうなっていた事か・・・。」
ミラージュは私の言葉に腕組みしながら頷いている。
「それで・・・とうとう離婚話に発展してしまったそうだね?」
「ええ、当然です。愛人に殺されかけたのですから当然ですよ。これ以上この国にはいられませんし、何の未練もありませんから。」
すると・・・。
「お願いだ!レベッカ!どうか・・どうかこの国を去るのを考え直してくれないだろうかっ?!」
突然ランス皇子が床に頭を付けて、私に頭を下げて来た―。
12
お気に入りに追加
752
あなたにおすすめの小説
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
甘雨ふりをり
麻田
BL
全寮制男子高校に通う七海は、オメガだ。
彼は、卑下される第二の性を持って生まれたが、この高校に入学して恵まれたことがある。
それは、素晴らしい友人二人に出会えたこと。
サッカー部のエースである陽介、バスケ部次期キャプテンである秀一。
何もかもに恵まれた二人は、その力を少しだけ僕に分けてくれる。
発情期の投薬が合わず副作用がつらいと話してから、二人は代わる代わる僕の発情期の相手をしてくれる。
こんなボランティアもしてくれる優しい友人と過ごす毎日は穏やかで心地よかった。
しかし、ある日やってきた転校生が………
陽介、秀一、そして新たに出会うアルファ。
三人のアルファに出会い、七海はどのアルファを選ぶのか…
****
オメガバース ですが、独自設定もややあるかもしれません。総受けです。
王道学園内でひっそりと生きる七海がじんわりと恋する話です。
主人公はつらい思いもします。複数の攻めと関係も持ちますので、なんでも許せる方向けです。
少し前に書いた作品なので、ただでさえ拙い文がもっと拙いですが、何かの足しになれば幸いです。
※※※全46話(予約投稿済み)
黄昏時に染まる、立夏の中で
麻田
BL
***偶数日更新中***
それは、満足すぎる人生なのだと思う。
家族にも、友達にも恵まれた。
けれど、常に募る寂寥感と漠然とした虚無感に、心は何かを求めているようだった。
導かれるように出会ったのは、僕たちだけの秘密の植物園。
◇◇◇
自分のないオメガが、純真無垢なアルファと出会い、自分を見つけていく。
高校卒業までの自由な時間。
その時間を通して、本当の好きな人を見つけて、様々な困難を乗り越えて実らせようと頑張ります。
幼い頃からずっと一緒の友達以上な彰と、運命のように出会った植物園の世話をする透。
二人のアルファに挟まれながら、自分の本当の気持ちを探す。
王道学園でひっそりと育まれる逆身分差物語。
*出だしのんびりなので、ゆる~くお楽しみいただければ幸いです。
*固定攻め以外との絡みがあるかもしれません。
◇◇◇
名戸ヶ谷 依織(などがや・いおり)
楠原 透(くすはる・とおる)
大田川 彰(おおたがわ・あきら)
五十嵐 怜雅(いがらし・れいが)
愛原 香耶(あいはら・かや)
大田川 史博(おおたがわ・ふみひろ)
◇◇◇
【完結】あなただけが特別ではない
仲村 嘉高
恋愛
お飾りの王妃が自室の窓から飛び降りた。
目覚めたら、死を選んだ原因の王子と初めて会ったお茶会の日だった。
王子との婚約を回避しようと頑張るが、なぜか周りの様子が前回と違い……?
木漏れ日の中で…
きりか
BL
春の桜のような花びらが舞う下で、
その花の美しさに見惚れて佇んでいたところ、
ここは、カラーの名の付く物語の中に転生したことに俺は気づいた。
その時、目の前を故郷の辺境領の雪のような美しい白銀の髪の持ち主が現れ恋をする。
しかし、その人は第二王子の婚約者。決して許されるものではなく…。
攻視点と受け視点が交互になります。
他サイトにあげたのを、書き直してこちらであげさしていただきました。
よろしくお願いします。
男子校に入学しても絶対そっち側には行かないって思っていたのに、助けてくれた先輩が気になってます
天冨七緒
BL
巷では優秀と有名な男子校に外部入学した結果、絶滅危惧主かのように興味本意で告白される毎日を送る瀬里崎芯。
男子校ということは入学前から知っていたので覚悟の上。皆面白半分で俺をからかっているに違いないと高を括るも、あんな光景を目にするなんて、あんな目に遭うなんて。
恐ろしすぎる男子校。
俺は男を好きになったりしない。
あの人の事も、ただ助けてくれた御礼のために探してるだけ。
これは恋じゃない。
恋じゃない…けど。
…やめて先輩、俺以外の人にそういうことしないで。
好きや愛してるって言ったこと無いし言われたこと無いけど、俺たちの関係って恋人同士だよね?
怖くて聞けない。
【完結】愛とは呼ばせない
野村にれ
恋愛
リール王太子殿下とサリー・ペルガメント侯爵令嬢は六歳の時からの婚約者である。
二人はお互いを励まし、未来に向かっていた。
しかし、王太子殿下は最近ある子爵令嬢に御執心で、サリーを蔑ろにしていた。
サリーは幾度となく、王太子殿下に問うも、答えは得られなかった。
二人は身分差はあるものの、子爵令嬢は男装をしても似合いそうな顔立ちで、長身で美しく、
まるで対の様だと言われるようになっていた。二人を見つめるファンもいるほどである。
サリーは婚約解消なのだろうと受け止め、承知するつもりであった。
しかし、そうはならなかった。
【完結】旦那の病弱な弟が屋敷に来てから俺の優先順位が変わった
丸田ザール
BL
タイトルのままです アーロ(受け)が自分の子供っぽさを周囲に指摘されて素直に直そうと頑張るけど上手くいかない話。 イーサン(攻め)は何時まで生きられるか分からない弟を優先してアーロ(受け)を蔑ろにし過ぎる話 【※上記はあくまで"あらすじ"です。】 後半になるにつれて受けが可哀想になっていきます。受けにも攻めにも非がありますが受けの味方はほぼ攻めしか居ないので可哀想なのは圧倒的受けです ※病弱な弟くんは誰か(男)カップリングになる事はありません
胸糞展開が長く続きますので、苦手な方は注意してください。ハピエンです
ざまぁは書きません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる