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6-1 あてにならない

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 私がガーナード王国から帰国して一カ月が経過した頃―

「レベッカ様、今日も平和ですわね~。」

青空の下、果樹園の水やりをしていたミラージュがのんびりと言う。

「ええ、そうね。とっても平和過ぎて・・・何だか嫌な予感がしてきたわ。」

果実の実に袋を被せながら私は言った。するとミラージュが顔を青ざめさせた。

「ま、まさか・・・レベッカ様・・・例のアレ・・・ですか?」

「ええ・・最近こんな予兆を感じる事が無かったのだけど・・・最近妙に胸騒ぎがするのよね~・・・。」

「そ、そんな!レベッカ様の予感は絶対的なものです!今までその予感が外れたことは無いじゃありませんかっ!」

「慌てふためくミラージュに私は言った。」

「落ち着いて、ミラージュ。最近、あのアレックス皇子が女性遊びをしなくなったという噂を耳にしたのよ。なのできっと天変地異とかそんな恐ろしい予感じゃないと思うの。多分・・・私とアレックス皇子に関する嫌な予感だと思うのよね・・・。」

その時・・・。

「やぁ、レベッカ皇女。それにミラージュ。今日も果樹園の管理をありがとう。」

そこへ果樹園にランス皇子が現れた。

「こんにちは、ランス皇子。」

私が挨拶するとミラージュも丁寧に挨拶する。

「ご機嫌麗しゅうございます。ランス皇子。」

するとランス皇子が突然真顔になり、辺りをキョロキョロ見渡すと言った。

「よし・・誰もいないな。実はね・・・今日は君達2人にとっては良くない話を知らせに来たんだよ。」

「ええ!本当ですかっ?!」

ミラージュが頬を押さえる。
なんと!嫌な予感がすると言った矢先にランス皇子が現れて、良くない知らせを持ってくるとは・・。

「あ、あの・・それで良くない知らせとは・・?」

「君達2人はアレックスから何も話を聞いていないのかい?」

「はい、何も。」

ミラージュが答える。

「話を聞くも何も・・・私とアレックス皇子はガーナード王国から帰国してから、まだ一度も顔を合わせていないのですけど?」

私の言葉にランス皇子が驚いた。

「何だってっ?!それは本当の話なのかい?」

「「はい、本当です。」」

私とミラージュが同時に頷く。

「は~・・信じられないよ・・。レベッカ皇女。君は本当に我慢強い女性なんだね。仮にも2人は夫婦だと言うのに、一緒に食事処か、顔を合わす事もしないなんて・・。全くアレックスと来たら・・ここまでするなんて・・。最低な男だよ、あいつは。」

ランス皇子がため息をつきながら髪をかき上げる。

「それよりもランス皇子、早くその良くない知らせと言うのを教えて下さいっ!」

せっかちなミラージュがランス皇子に言う。

「あ、ああ・・・実はね。君たちの国・・オーランド王国が・・まずい事になっている。」

「ああ・・その話ならガーナード王国のサミュエル皇子に聞きましたよ?何でも天候不良が続いているとか・・・あれ程沢山埋まっていた鉱石が無くなってしまったとか・・。」

私の言葉に、隣に立って話を聞いているレベッカが当然だと言わんばかりに腕組みをして、ウンウンと相槌を打っている。

「何だっ!知っていたのかい?!」

ランス皇子が目を見開いた。

「ええ、勿論。」

でも意外だった。もうとっくにあの国は滅亡していると思っていたのに・・まだ持ちこたえていたなんて。

「だから、あの国は今我が国の援助なしにはもう・・・生活できない位に困窮しているらしい。」

「「え?!そうなんですかっ?!」」

まさかこの国から援助して貰っていたとは・・。

「もともと・・レベッカ皇女とアレックスの婚姻話は我が国グランダ王国が君たちの国で採掘される鉱石を独占させて貰う事を条件だったからね・・・。それでこの国の宰相や、摂政・・その他権力を握るお偉方がレベッカ皇女はもう不要だから追い出してしまえと囁いているんだよ。それで・・外遊していた父ももうすぐ帰国する事になったんだ。君とアレックス皇子の婚姻を続けるかどうかを決める為に。」

「ええっ?!そうなんですかっ?!」

何と!そっちの話だったとは・・てっきり私とアレックス皇子の話だと思っていたのに・・・。でも、それにしても腑に落ちない。私はガーナード王国でジョディ婦人を当てにして、私の良い噂とこの国で鉱石が採掘できる話をばらまくように依頼したのに・・。

「ど、ど、どうしますっ?!レベッカ様っ!私達・・・追い返されてしまうかもしれませんよっ?!」

慌てふためくミラージュに私は言った。

「まあまあ・・落ち着いて、ミラージュ。私に秘策があるわ。」

そしてランス皇子を振り向くと私は言った。

「今すぐ・・先程名前の上がったお偉い方々をランス皇子のお名前で集めて頂けますか?」

「え?ああ・・・分かったよ。彼らを集めればいいんだね?」

「はい、よろしくお願いします。」

私は丁寧に頭を下げた。

もう・・かくなるうえは、私が直に動くしかないだろう―。
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