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4-1 晩餐の席の誘い

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 結局、あの後もクドクドとアレックス皇子の話は続き・・しまいに私たちのせいで馬車の列が詰まってしまい、ガーナード王国の執事が現れてアレックス皇子の話を中断させてくれて・・・やっと私達(護衛の兵士たちと、馬車の列に並ぶ人々)は解放された。そして・・・。


「うわ~・・・素晴らしいお部屋ですね。広くて、天井も高くて・・・壁紙は美しいし、シャンデリアの見事な事・・。」

私は部屋をキョロキョロ見渡した。
私とアレックス皇子に客室として与えられた部屋はそれは見事なものだった。部屋の中央に置かれたキングベッドは厚みのあるマットレスが敷かれ、いかにもスプリングがきいていそうだし、寝具も上質なものを使っている事は一目で分かる。さらに調度品はどれも重厚な家具ばかりでとても上品だし、幅広のタペストリー風の綴れ織りの淡いピンク色の図柄のカウチソファはとても気に入ってしまった。

「はぁ~・・・こんなに素敵なカウチソファ・・お持ち帰りしたいです・・。」

思わず座面部分に頬ずりする姿をどこか馬鹿にしたかのような口調でアレックス皇子が言う。

「おお、そうか。ならば盗んでみろ。そんな事をすればお前は犯罪者として捕まり、この国で裁判に掛けられて裁かれるだろう。言っておくが、仮にそうなったとしても俺はお前の事など一切知らん。決して証人にはならないからな?」

「もう・・・盗むわけないじゃないですか・・・。本当に妄想癖の強い方ですね?」

「おい、今俺の事を妄想癖が強いと言っただろう?」

「いいえ?そんな事言っておりません。空耳ではありませんか?」

「いいや、決して空耳なんかじゃないぞ?大体お前はいつの間にかこの俺に雑な口の聞き方をするようになってきたな・・。」

妙に絡んでくるアレックス皇子。きっと・・・そう、これはアレだな・・?

「分かりました。アレックス様。お腹が空いているのですね?それでそんなにイライラされているのでしょう?」

「だ、誰がイラついて・・・!」

その時・・・

コンコン

ドアがノックされる音が聞こえた。

「はい。」

言いながらドアに向かい、ガチャリと開けるとそこには黒いタキシード姿のロマンスグレーの素敵な男性が立っていた。

「あの・・何か御用ですか?」

すると男性は言った。

「ガーナード王国の皇大使であらせられますサミュエル・エドワルド様が是非とも
キングご夫妻を晩餐の席にご招待したいと申されておりますのでお迎えに上がりました。」

「え?!晩餐?」

晩餐と聞いて、途端に自分のお腹がすきだした。そしてアレックス皇子を振り向き、笑顔で言った。

「ねぇねぇ、聞きましたか?!アレックス様!晩餐ですよ?!ば・ん・さ・んっ!」

嬉しくなりウキウキしながら言うと、そこに水を差す態度をとる皇子。

「何い~・・・晩餐だと・・・断るっ!」

イライラしながらアレックス皇子はソファに座った右足を思い切り高く上げると、これ見よがしに足を組んだ。

しかし、男性は言う。

「申し訳ございませんが、それは承諾いたしかねます。殿下から必ず晩餐の席へ来るように申し使っておりますので。さもなくば今夜の食事は用意出来ないと伝えるように言われております。」

「な、何っ?!それは本当かっ?!」

アレックス皇子は傍から見てもはっきり分かるほどに動揺している。でも・・それは無理もない話かもしれない。何しろ朝ご飯の後から食事をしていないのだから。

「よ・・よし、分かった!なら俺だけ出席する!お前は留守番だっ!」

「えっ?そんな酷いっ!自分だけ晩餐に呼ばれるつもりですね?」

「うるさいっ!お前だって昼間自分だけ食事を取っただろう?!しかも俺を1人馬車に残してっ!」

「ですからあれは、私一人ではなく警備の兵士達も一緒だったとお話ししましたよね?」

「だから一々言葉尻を取るなと先ほども言っただろう?!」

そんなやり取りを繰り広げていると・・。

「う・・・ゴホンッ!」

男性の咳払いに私とアレックス皇子は言い争い?をピタリとやめ、彼の方を見た。

「・・申し訳ございませんが・・・サミュエル殿下からはお2人で出席するように言われております。」

「チッ!!」

アレックス皇子は聞こえよがしにわざと大きな舌打をする。

「まあ・・・ありがとうございますっ!」

お辞儀をしながらアレックス皇子を見ると・・まだ不満があるのかぶつぶつ文句をいい続けている。


 そして私は・・何故これほどまでにアレックス皇子がサミュエル皇子との晩餐を嫌がるのか、のちにその理由を知ることになるのだった―。
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