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31.愛のプロポーズ
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三人の側妃達が後宮から立ち去った後、国王ギルアは復活させた後宮制度を正式に廃止とした。もともと後宮制度は愚策として文官や重鎮達に評価されていたので、反対意見は全く出なかった。
「やっと、ギルア様の愚策の尻拭いが終わりましたね。これからはよく考えてから行動をお願いします、二度とこのような真似をしないように」
宰相にネチネチと嫌味を言われているが、ギルアは全く腹が立たない、それどころか肩の荷が下りて気分は爽快そのものだ。これでやっと、シルビアとの関係を前に進める事が出来ると、尻尾を振りながら口元を緩ませてにやけている。
この『だらしない狼』が、獣人の頂点である国王とは信じられないほど、緩み切っている…。
頭の中はシルビアとの未来で溢れ、お花畑と化している…。これでいいのか?オーサン国王。
そんなお花畑状態のギルアにガロンが話し掛ける。
「でも大丈夫なのか?ギルア様とシルビア様は両想いだけど、後宮廃止後にプロポーズのやり直しをしてないんだろ?女はそういうイベントを大切にする生き物らしいぞ。適当に流れに乗ってとかしてたら、土壇場で離縁されるかもな、ワッハッハ」
ガロンの手には【魅惑の会】会誌5号”振られる男”特集が握られている。まだコリン師匠の存在は掴めていないようだ…。
「シルビア様の告白を受けた時にギルア様から求婚したのは聞いてますけど、それはノーカンです。女性から言わせて、それに便乗して満足している男は捨てられます」
ガロンと宰相の言葉を聞いて、ギルアは顔面蒼白になっている。まさに『便乗し満足していた』ので、プロポーズのやり直しなど微塵も考えていなかったのだ。
これはまずい、どうする?と部屋の中をウロウロしながら考えはじめる、体の大きな『落ち着かない狼』が執務室の調度品に次々ぶつかり壊していく。部屋で控えていた侍女が箒を手に壊れた調度品を涙ながらに片付けている。
(((いくらすると思っているんですか!)))
「はぁー。解決策を教えるので、調度品を壊すのは止めてください」
国王としては手腕を発揮するギルアだが、女性の扱いは中の下の力量なのだ。そんな国王に期待するのが、そもそも無理な話なのである。宰相は適切なアドバイスをし破壊を止める事を優先した。
「まず『番』ではない相手にプロポーズするならアルビー石の入った腕輪を持ってするのがベストです。結婚式の時にお互いに交換するものですが、愛を誓う瞬間の時に渡すとより良いでしょう」
「「うん、うん。そうなのか!」」
「ムードも大切です。二人だけの思い出の場所などが良いでしょう」
「「ムードか…考えもしなかった」」
「そして、何より重要なポイントは目です。相手の目を真っ直ぐ見つめ続けるのです。これにより断ろうと思っていた相手も結婚したいかもと勘違いして、だいたい頷きます」
「「……それは詐欺に近いな…」」
宰相先生のアドバイスを真剣に聞くとギルアとなぜかガロン?。最後の一文は宰相のオリジナルに違いないが、残りは適切なものであったのでその通りに動くことに決めた。
ギルアは早速、腕輪の手配をして、思い出の場所である王族専用庭園でシルビアと会う約束を三日後に取り付けたのである。
***************************
いつも通りのお茶会だと思っているシルビアが王族専用庭園の楠のもとに向かうと、ギルアはもうすでに待っていた。そこにはお茶会のセッティングはなく、ギルア一人が立っているだけである。周りには護衛はおろか侍女の一人も控えていない。二人は形式上はすでに結婚しているので、二人きりでも問題ないが、国王と正妃の周りに誰もいないなど有り得ないことだ。
(???どうしたのかしら。今日はお茶会でなかったのかな?)
訝し気に首を傾げながら、シルビアはゆっくりとギルアに近づいていく。この状況が理解できず、周りをキョロキョロ見渡してしまう。
二人の距離があと一メートルになると、いきなりギルアが片膝を地面につき、何かを両手に持ちシルビアに差し出してくる。
(なに、なに?影武者?刺客?)
盛大な誤解をしているシルビアはスカートの下の隠し剣に思わず手を伸ばそうとするが、前で跪いている者の目を見て、本物だと確信する。
(この漆黒の瞳はギルア様だけのもの♪間違わなくって良かった、ちょっとやばかったわ)---最初っから気づけたら100点だったのにね、残念シルビア81点。
ギルアはシルビアの目だけを真っ直ぐ見続けている。---詐欺に近いと分かっても、宰相のアドバイスを忠実に守る狼、男は小心者なのだ。
「君だけを愛している、これからは妻はシルビアただ一人と約束する。一生大切にすると誓う。俺と結婚してくれ」
アルビー石の入った腕輪を掲げての突然のプロポーズにまずは驚いたが、直ぐに驚きは喜びへと変化する。勢いよくギルアに抱き着き、その勢いで二人して芝生の上を転がり回る。
「はい、よろしくお願いします♪私もギルア様を一生大切にしますよ」
芝生を髪に付けながら最高の笑顔で応えるシルビアと嬉しそうに尻尾を振りながらシルビアを抱き締め続けるギルア。政略結婚が『愛のある結婚』となり、幸せ絶頂の二人なのである。
パチ、パチ、パチ、パチ!!
「「「おめでとうございまーす!!!」」」
いつの間にか王族専用庭園は臣下達で溢れ、二人を嵐のような拍手で祝福していた。
「やっと、ギルア様の愚策の尻拭いが終わりましたね。これからはよく考えてから行動をお願いします、二度とこのような真似をしないように」
宰相にネチネチと嫌味を言われているが、ギルアは全く腹が立たない、それどころか肩の荷が下りて気分は爽快そのものだ。これでやっと、シルビアとの関係を前に進める事が出来ると、尻尾を振りながら口元を緩ませてにやけている。
この『だらしない狼』が、獣人の頂点である国王とは信じられないほど、緩み切っている…。
頭の中はシルビアとの未来で溢れ、お花畑と化している…。これでいいのか?オーサン国王。
そんなお花畑状態のギルアにガロンが話し掛ける。
「でも大丈夫なのか?ギルア様とシルビア様は両想いだけど、後宮廃止後にプロポーズのやり直しをしてないんだろ?女はそういうイベントを大切にする生き物らしいぞ。適当に流れに乗ってとかしてたら、土壇場で離縁されるかもな、ワッハッハ」
ガロンの手には【魅惑の会】会誌5号”振られる男”特集が握られている。まだコリン師匠の存在は掴めていないようだ…。
「シルビア様の告白を受けた時にギルア様から求婚したのは聞いてますけど、それはノーカンです。女性から言わせて、それに便乗して満足している男は捨てられます」
ガロンと宰相の言葉を聞いて、ギルアは顔面蒼白になっている。まさに『便乗し満足していた』ので、プロポーズのやり直しなど微塵も考えていなかったのだ。
これはまずい、どうする?と部屋の中をウロウロしながら考えはじめる、体の大きな『落ち着かない狼』が執務室の調度品に次々ぶつかり壊していく。部屋で控えていた侍女が箒を手に壊れた調度品を涙ながらに片付けている。
(((いくらすると思っているんですか!)))
「はぁー。解決策を教えるので、調度品を壊すのは止めてください」
国王としては手腕を発揮するギルアだが、女性の扱いは中の下の力量なのだ。そんな国王に期待するのが、そもそも無理な話なのである。宰相は適切なアドバイスをし破壊を止める事を優先した。
「まず『番』ではない相手にプロポーズするならアルビー石の入った腕輪を持ってするのがベストです。結婚式の時にお互いに交換するものですが、愛を誓う瞬間の時に渡すとより良いでしょう」
「「うん、うん。そうなのか!」」
「ムードも大切です。二人だけの思い出の場所などが良いでしょう」
「「ムードか…考えもしなかった」」
「そして、何より重要なポイントは目です。相手の目を真っ直ぐ見つめ続けるのです。これにより断ろうと思っていた相手も結婚したいかもと勘違いして、だいたい頷きます」
「「……それは詐欺に近いな…」」
宰相先生のアドバイスを真剣に聞くとギルアとなぜかガロン?。最後の一文は宰相のオリジナルに違いないが、残りは適切なものであったのでその通りに動くことに決めた。
ギルアは早速、腕輪の手配をして、思い出の場所である王族専用庭園でシルビアと会う約束を三日後に取り付けたのである。
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いつも通りのお茶会だと思っているシルビアが王族専用庭園の楠のもとに向かうと、ギルアはもうすでに待っていた。そこにはお茶会のセッティングはなく、ギルア一人が立っているだけである。周りには護衛はおろか侍女の一人も控えていない。二人は形式上はすでに結婚しているので、二人きりでも問題ないが、国王と正妃の周りに誰もいないなど有り得ないことだ。
(???どうしたのかしら。今日はお茶会でなかったのかな?)
訝し気に首を傾げながら、シルビアはゆっくりとギルアに近づいていく。この状況が理解できず、周りをキョロキョロ見渡してしまう。
二人の距離があと一メートルになると、いきなりギルアが片膝を地面につき、何かを両手に持ちシルビアに差し出してくる。
(なに、なに?影武者?刺客?)
盛大な誤解をしているシルビアはスカートの下の隠し剣に思わず手を伸ばそうとするが、前で跪いている者の目を見て、本物だと確信する。
(この漆黒の瞳はギルア様だけのもの♪間違わなくって良かった、ちょっとやばかったわ)---最初っから気づけたら100点だったのにね、残念シルビア81点。
ギルアはシルビアの目だけを真っ直ぐ見続けている。---詐欺に近いと分かっても、宰相のアドバイスを忠実に守る狼、男は小心者なのだ。
「君だけを愛している、これからは妻はシルビアただ一人と約束する。一生大切にすると誓う。俺と結婚してくれ」
アルビー石の入った腕輪を掲げての突然のプロポーズにまずは驚いたが、直ぐに驚きは喜びへと変化する。勢いよくギルアに抱き着き、その勢いで二人して芝生の上を転がり回る。
「はい、よろしくお願いします♪私もギルア様を一生大切にしますよ」
芝生を髪に付けながら最高の笑顔で応えるシルビアと嬉しそうに尻尾を振りながらシルビアを抱き締め続けるギルア。政略結婚が『愛のある結婚』となり、幸せ絶頂の二人なのである。
パチ、パチ、パチ、パチ!!
「「「おめでとうございまーす!!!」」」
いつの間にか王族専用庭園は臣下達で溢れ、二人を嵐のような拍手で祝福していた。
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