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6.契約の愛人②

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「どうしてなんの相談もしてくれなかったの?私だってどんなことをしてもアレクと一緒にいたいと思っているわ。だからあなたの気持ちを疑ってはいないけれど…。
でも…これは裏切りでしかないわ。
それにこんな形で生まれてくる子供は幸せになれるの?あなたは私達の幸せの為に罪のない子を不幸にして平気なの?
愛されない子は…可哀想だわ」

リズの言葉を聞いて、はっ、とした。自分勝手で浅はかな考えで行動し、リズの気持ちも愛されない子供の事も考えていないことに気づいた。行動する前に考えなくてはいけなかった、だが王命によって離縁させられる恐怖に囚われて考えもしなかった。

自分と同じ『愛されない子』、不幸になるのは目に見えている。時間を巻き戻せるものなら戻したい。
だがあと少しで生まれる予定の子を今更なかったことには出来ない。


「……すまない」

「…もう遅いわ。気持ちが混乱していて…時間をちょうだい。少し一人で考えたいの」

リズはそれだけ絞り出すように言うと、俺の腕を解いて身体を離した。そしてふらつきながら部屋から出ていこうとする。

「…リズ…待ってくれ。一人には出来ない、一緒に考えよう。リズ…リズ…、リズっ!」

何度も呼んでも振り返ってくれない。いつもなら『ふふふ、なあにアレク。まるで子供みたいね』と笑いながら振り返ってくれるのに…。

 …あ、ああ。リズ行かないでくれ、君がいなくちゃ意味がない。
 愛しているんだ、裏切ってなどいない。
 ただ君を失いたくなくてしたことなんだ…。
 リズ、リズ…、俺は間違えて…しまったのか。


リズの心を失う恐怖から動けずにいると彼女が扉に手を掛けようとしたその時、廊下から甲高い声とそれを諫めるような侍女の声が聞こえた。

その後すぐに扉が乱雑にノックされ大きなお腹をした女が無遠慮に部屋へと入ってきた。それはこの別邸にいるはずもない契約した愛人ロザリンその人だった。

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