52 / 57
49.子供達からの祝福
しおりを挟む
私達が婚約の報告をするべき相手は貴族達だけではない。孤児院の子供達には直接二人で話すことに決めていた。
いつものように孤児院へ行った私達は子供達に集まってもらった。
どうして集められたのかと互いに疑問を口にする子供達。みな不安そうな表情を隠すことなく私とヒューイを見つめてくる。
そんな子供達を前にヒューイは緊張からか、いつになく真剣な表情で話し出す。
「あのな、今日はみんなにとても大切なことを伝えたいと思っているんだ。きっとみんな驚くと思うが聞いてくれ、」
肝心なことを伝える前にゲイルが大きな声で彼の言葉を遮った。
「わざわざ言わなくっていいよ。俺たちはさ、ヒューイおじさんのその顔見てぜんぶ分かっちゃったんだ。させんじゃなく、首になったんだろ…?
その顔見れば分かるさ、ガチガチに緊張していつもと別人だもん。
おじさんいい奴なのにな…、俺達と遊んでいたのがバレちゃたの?」
「はっ?いや違う、違うぞゲイル誤解だ!あのな、」
慌てて訂正しようするがゲイルは止まらなかった。
「もう何も言わなくてもいいよ。お偉いさんは認めなくても、俺達だけは味方だから元気出せよ!
人間生きていればなんとかなる!」
ゲイルの言葉の後には他の子供達の『ヒューイおじさん、元気だして』『今日のおやつあげるね』という優しさ溢れる言葉が続いていく。
もうヒューイは遠くを見つめて『俺はどんな奴だと思われていたんだ……』と頭を抱えて落ち込んでいる。
頑張ってヒューイ!
子供達に悪気はないわ。
心のなかで彼を励ますが、その声は残念ながら届かずヒューイは肩をがっくりと下げたまま。
それならば彼の代わりに私が婚約したことを告げようと口を開く。
「あのね、みんなヒューイは首になってないわ。だから安心してちょうだい」
私の言葉に励ましの言葉は一旦止まる。
「そうなの?それならどうしてあんなに真剣な顔してたんだ??」
ゲイルは疑問をそのまま告げてくる。
「えっと…実はね、私とヒューイは近々結婚をするの。それを今日はみんなに伝えたくて…」
照れながら婚約を告げる私に子供達は素直に『おめでとうー!』『ヒューイおじさんとマリア先生ってお似合いだね』と飛び上がりながら喜んでくれる。
その喜びは純粋そのもので、周りに元気を与えてくれる。
さっきま落ち込んでいたヒューイも『お似合い』という言葉に笑顔を見せる。
「そうか、俺とマリアはお似合いか!はっはは、ありがとうな!」
元気を取り戻した彼は『おめでとー』と言いながら纏わりついてくる子供達と遊び始める。
そんな彼と子供達に温かい眼差しを向けていると、そっとゲイルが近づいてきた。
見たことがないくらい真面目な顔をしている。
「どうしたのゲイル?なにか悩みごと?」
すると彼は私にだけ聞こえる小さな声で話し始めた。
「ヒューイおじさんの稼ぎが少なくても許してあげて。男はさ、金じゃないなくて心だよ。
心が大きい人が一番なんだから。その点だけはおじさん誰にも負けてないから、きっとマリア先生を幸せにしてくれるよ!」
……だからね、違うのよゲイル。
でもね、ありがとう、ふふふ。
ゲイルはちゃんと彼の本質を見抜いている。
上辺だけ見るような貴族よりもこの子のほうが賢いのだろう。
子供だからこその曇りのない目と素直な言動が羨ましく感じる。
見習いたいとも思う。
そして『子供っていいな…』と自然に思えた。
あの子のことを大切に心の中で抱いたまま、そう思えるようになっている自分がいた。
ある意味では誤解されたままのヒューイ。
ちょっと可哀想だけれども、折角ゲイルは味方をしようと頑張っているのだから訂正はしないでおいた。
小さな正義の味方に返事を返す。
「大丈夫よ、ちゃんと分かっているから。彼ほど素敵な人はいないわ、愛しているから結婚を決めたのよ」
ゲイルを安心させる為に照れながらも、はっきりと言葉にして伝える。
「流石、マリア先生!歳を取っているだけあって見る目があるんだね!」
「……えっ、ええ、そうね」
無邪気な笑みを浮かべるゲイルに悪気はない。
曇りのない目と素直な言葉を今はちょっとだけ恨めしく思ってしまう。
ヒューイの次は私が秘かに落ち込む番だった。
後日、子供達は『大人に対する礼儀作法』という授業を急遽受けることになった。提案したのは私だが、決して私情は挟んでいないつもりだ。
一週間後に控えた私達の結婚式には子供達も招待している。授業の成果を存分に発揮してくれること祈りつつ、あとは式を待つばかりだった。
いつものように孤児院へ行った私達は子供達に集まってもらった。
どうして集められたのかと互いに疑問を口にする子供達。みな不安そうな表情を隠すことなく私とヒューイを見つめてくる。
そんな子供達を前にヒューイは緊張からか、いつになく真剣な表情で話し出す。
「あのな、今日はみんなにとても大切なことを伝えたいと思っているんだ。きっとみんな驚くと思うが聞いてくれ、」
肝心なことを伝える前にゲイルが大きな声で彼の言葉を遮った。
「わざわざ言わなくっていいよ。俺たちはさ、ヒューイおじさんのその顔見てぜんぶ分かっちゃったんだ。させんじゃなく、首になったんだろ…?
その顔見れば分かるさ、ガチガチに緊張していつもと別人だもん。
おじさんいい奴なのにな…、俺達と遊んでいたのがバレちゃたの?」
「はっ?いや違う、違うぞゲイル誤解だ!あのな、」
慌てて訂正しようするがゲイルは止まらなかった。
「もう何も言わなくてもいいよ。お偉いさんは認めなくても、俺達だけは味方だから元気出せよ!
人間生きていればなんとかなる!」
ゲイルの言葉の後には他の子供達の『ヒューイおじさん、元気だして』『今日のおやつあげるね』という優しさ溢れる言葉が続いていく。
もうヒューイは遠くを見つめて『俺はどんな奴だと思われていたんだ……』と頭を抱えて落ち込んでいる。
頑張ってヒューイ!
子供達に悪気はないわ。
心のなかで彼を励ますが、その声は残念ながら届かずヒューイは肩をがっくりと下げたまま。
それならば彼の代わりに私が婚約したことを告げようと口を開く。
「あのね、みんなヒューイは首になってないわ。だから安心してちょうだい」
私の言葉に励ましの言葉は一旦止まる。
「そうなの?それならどうしてあんなに真剣な顔してたんだ??」
ゲイルは疑問をそのまま告げてくる。
「えっと…実はね、私とヒューイは近々結婚をするの。それを今日はみんなに伝えたくて…」
照れながら婚約を告げる私に子供達は素直に『おめでとうー!』『ヒューイおじさんとマリア先生ってお似合いだね』と飛び上がりながら喜んでくれる。
その喜びは純粋そのもので、周りに元気を与えてくれる。
さっきま落ち込んでいたヒューイも『お似合い』という言葉に笑顔を見せる。
「そうか、俺とマリアはお似合いか!はっはは、ありがとうな!」
元気を取り戻した彼は『おめでとー』と言いながら纏わりついてくる子供達と遊び始める。
そんな彼と子供達に温かい眼差しを向けていると、そっとゲイルが近づいてきた。
見たことがないくらい真面目な顔をしている。
「どうしたのゲイル?なにか悩みごと?」
すると彼は私にだけ聞こえる小さな声で話し始めた。
「ヒューイおじさんの稼ぎが少なくても許してあげて。男はさ、金じゃないなくて心だよ。
心が大きい人が一番なんだから。その点だけはおじさん誰にも負けてないから、きっとマリア先生を幸せにしてくれるよ!」
……だからね、違うのよゲイル。
でもね、ありがとう、ふふふ。
ゲイルはちゃんと彼の本質を見抜いている。
上辺だけ見るような貴族よりもこの子のほうが賢いのだろう。
子供だからこその曇りのない目と素直な言動が羨ましく感じる。
見習いたいとも思う。
そして『子供っていいな…』と自然に思えた。
あの子のことを大切に心の中で抱いたまま、そう思えるようになっている自分がいた。
ある意味では誤解されたままのヒューイ。
ちょっと可哀想だけれども、折角ゲイルは味方をしようと頑張っているのだから訂正はしないでおいた。
小さな正義の味方に返事を返す。
「大丈夫よ、ちゃんと分かっているから。彼ほど素敵な人はいないわ、愛しているから結婚を決めたのよ」
ゲイルを安心させる為に照れながらも、はっきりと言葉にして伝える。
「流石、マリア先生!歳を取っているだけあって見る目があるんだね!」
「……えっ、ええ、そうね」
無邪気な笑みを浮かべるゲイルに悪気はない。
曇りのない目と素直な言葉を今はちょっとだけ恨めしく思ってしまう。
ヒューイの次は私が秘かに落ち込む番だった。
後日、子供達は『大人に対する礼儀作法』という授業を急遽受けることになった。提案したのは私だが、決して私情は挟んでいないつもりだ。
一週間後に控えた私達の結婚式には子供達も招待している。授業の成果を存分に発揮してくれること祈りつつ、あとは式を待つばかりだった。
124
お気に入りに追加
6,804
あなたにおすすめの小説
旦那様に離縁をつきつけたら
cyaru
恋愛
駆け落ち同然で結婚したシャロンとシリウス。
仲の良い夫婦でずっと一緒だと思っていた。
突然現れた子連れの女性、そして腕を組んで歩く2人。
我慢の限界を迎えたシャロンは神殿に離縁の申し込みをした。
※色々と異世界の他に現実に近いモノや妄想の世界をぶっこんでいます。
※設定はかなり他の方の作品とは異なる部分があります。
私と一緒にいることが苦痛だったと言われ、その日から夫は家に帰らなくなりました。
田太 優
恋愛
結婚して1年も経っていないというのに朝帰りを繰り返す夫。
結婚すれば変わってくれると信じていた私が間違っていた。
だからもう離婚を考えてもいいと思う。
夫に離婚の意思を告げたところ、返ってきたのは私を深く傷つける言葉だった。
婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
私のことが大嫌いらしい婚約者に婚約破棄を告げてみた結果。
夢風 月
恋愛
カルディア王国公爵家令嬢シャルロットには7歳の時から婚約者がいたが、何故かその相手である第二王子から酷く嫌われていた。
顔を合わせれば睨まれ、嫌味を言われ、周囲の貴族達からは哀れみの目を向けられる日々。
我慢の限界を迎えたシャルロットは、両親と国王を脅……説得して、自分たちの婚約を解消させた。
そしてパーティーにて、いつものように冷たい態度をとる婚約者にこう言い放つ。
「私と殿下の婚約は解消されました。今までありがとうございました!」
そうして笑顔でパーティー会場を後にしたシャルロットだったが……次の日から何故か婚約を解消したはずのキースが家に押しかけてくるようになった。
「なんで今更元婚約者の私に会いに来るんですか!?」
「……好きだからだ」
「……はい?」
いろんな意味でたくましい公爵令嬢と、不器用すぎる王子との恋物語──。
※タグをよくご確認ください※
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
愛することはないと言われて始まったのですから、どうか最後まで愛さないままでいてください。
田太 優
恋愛
「最初に言っておく。俺はお前を愛するつもりはない。だが婚約を解消する意思もない。せいぜい問題を起こすなよ」
それが婚約者から伝えられたことだった。
最初から冷めた関係で始まり、結婚してもそれは同じだった。
子供ができても無関心。
だから私は子供のために生きると決意した。
今になって心を入れ替えられても困るので、愛さないままでいてほしい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる