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24.婚姻の儀~竜王視点~③

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離宮からの報告によると成長した番は私を結婚相手として問題なく慕ってくれているらしい。
人の感覚を持つ番は私と同じようには想ってくれてないのも承知している。

 ……始まりはそれでいい、十分だ。
 いきなり同じ様に愛してくれなんて望まない。

少しでも慕ってくれていたら私の暴走は起こらないのだから焦る必要はない。

時間ならたっぷりとある。結ばれたら竜人の寿命を共に生きることになるのだから。

まずは始められることが大切なんだ。

これからは番の傍に寄り添い全力で愛を囁き、思慕が恋慕になるよう私が努力すればいいだけだ。

ゆっくりと人間の感覚がある番のペースに合わせて。
怖がらせないように。

愛おしい番には10年間も不自由な生活をさせてしまった。それなのに離宮で私の妃になるべく頑張っていてくれたのだ。もう苦労はさせたくない、いつでも笑っていられるようにしてあげたい。

 絶対にすべてから守って見せよう。
 そして幸せにしよう、誰よりも幸せに…。

 あの可愛い番には笑顔が似合うからな。



婚礼衣装を着終わって準備が終わった私は成長した番の笑顔を想像し顔が緩んでしまう。

そんな私を見て呆れた表情をしながら宰相が苦言を呈する。

「竜王様、そのようなだらしのない顔はお止めください。美しく成長なさった番様と釣り合いが取れません。
優しくかつ威厳のある態度を見せて番様を安心させられるようでないと夫として失格ですよ。そんなことでは婚姻の儀を延期ですな…」

周りにいる侍女達もクスクス笑いながら頷いている。みな幼い番の成長を見守ってきたので私よりも番の味方のようだ。


そう言われても10年ぶりに番と会えるのだから、これくらいは許して欲しい。


早く番に会ってその名を呼びたかった。今まではその名を口にするだけで理性が保てる自信がなかったので呼べなかったが、今日からはもういいだろう。



離宮へと番を迎いに行くと、控えていた侍女達が番の部屋へと案内する。

扉が開かれ中に一歩入ると、甘い空気を感じと引き寄せるられるような身体の痺れに襲われる。
まさに10年前、番に会った瞬間と同じ感覚だった。

部屋の真ん中で佇む美しい少女。

夢にまでみた番だった。

その目元や口元に6歳の頃の面影は残っているが、想像していたよりも遥かに美しく成長している。

一瞬で私のすべてが彼女の為だけに存在するものに変わる。

駆け寄って抱きしめたい衝動に駆られるが、いきなりそんな事をしては怖がらせてしまう。はやる気持ちを押さえてゆっくりと近づくと目の前に立つ番は私に向かって微笑んでくれた。

 ああ、なんて美しく可愛いのだ…。
 私のアンだ、アンが見つめてくれている。



報告通り好意を持ってくれている様子に安堵しておもわず表情が緩んでしまう。でもそんなことは構わない、番を前にすれば獣人として当然の反応だ。
 
とりあえず怖がらせないように優しく接することを心掛ける。

「私はそなたの番であり竜王のエドガだ。
人間の感覚のそなたには番と言ってもピンとこないだろう。
でも今はそれでいい。心配しないでくれ、獣人の感覚を一方的に押し付けるつもりはない。

今日婚姻を結んでから、ゆっくりと一緒に愛を育んでいこう。

愛おしいどうか今日からそなたの名を呼ぶことを許してくれないか?」

熱烈な愛の告白はしなかった。

会ったばかりでそんなことを言ったら引かれてしまうかもしれないから。

だからあえて控えめに言ったつもりだった。

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