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2.落ちこぼれには冷たいです
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ギザイン国には三つの騎士団が存在する。
第一騎士団は憧れの念を込め、白騎士団と呼ばれている。洒落た白い騎士服を纏い、主に王宮を守るエリート集団である。騎士のくせに顔審査もあるのかと疑うくらい顔面偏差値も異様に高く、良家出身の者が多数在籍しているので優良物件騎士として人気も高い。
第二騎士団は青騎士団と呼ばれ、爽やかな青い騎士服を纏っている。国民を守る気さくな集団として認識され、町のお兄さん的ポジションをゲットしていた。
そして最後の第三騎士団は灰騎士団と呼ばれ、何でも屋と揶揄されることもある実力重視の少数精鋭集団であった。そんな灰騎士団だからこそ訳ありでも実力さえあれば誰でも入団が認められるのだ。
リアも落ちこぼれながら実力で一年前に入団テストを見事にパスし、正式な団員となっていた。
少女の正体が落ちこぼれのリアだと分かり周囲はざわついているが、その実力を知っているだけに誰も面と向かって侮蔑の言葉を吐いたりしない。
だがその視線は十分に蔑んだものに変わっていた。
『落ちこぼれのくせに!』
『あんな姿晒して恥ずかしくないのかしら』
『心配して損したな』
心無い言葉がリアの周囲から途切れることなく聞こえてくる。
普通の少女なら一瞬で周りの人全員が敵に変わったこの状況に耐えられず泣き出してしまうだろう。
けれどもリアはこんな状況に慣れているので、そんなことは一切気にする様子は見せない。倒れている熊獣人の足首を掴みズルズルと重そうに引きずりながら周囲の人に熊獣人の顔が見えるようにしてのんびりとした口調で声を掛ける。
「この馬鹿の知り合い誰かいませんかー?いないなら目が覚めるまで騎士団の留置所にぶち込んでおくけど、いいですか~」
リアののんきな問い掛けに答える者は誰もいない。
答えがないのを返事と理解して、『はいはい、いませんね。では撤収しま~す』と独り言を言っている。
リアは熊獣人をズルズルと引きずって市場から灰騎士団の建物に向かって歩き始める。小柄なリアは流石に担ぐのは無理なので、こうするしか運ぶ手段がない。周りの人達は道を開けて遠巻きに見るだけで誰も手助けを申し出る者はいない。きっとリアが落ちこぼれじゃなかったら、普通に手助けをしてくれる親切な人達だろうが…。
これがこの国での落ちこぼれに対する現実なのだ。逆に侮蔑と無視で済んでるぐらいはいい方だといえる。
リアは鼻歌を歌いながら慣れた様子で進んで行くが、途中で小石や屋台などの角に熊獣人をぶつけてしまっている。
『あれ、熊ちゃんぶつかったかな。ごめーん、でもワザとじゃないから許してね~』とご機嫌な様子だ。全然悪いと思っていないどころか、絶対にワザとぶつかるように歩いているように見える。
そんなリアに後ろから地味な服装の人族のおじさんが声を掛けてきた。その声に侮蔑の色は含んでいないが、なんとも間が抜けたような緊張感のない話し方だった。
第一騎士団は憧れの念を込め、白騎士団と呼ばれている。洒落た白い騎士服を纏い、主に王宮を守るエリート集団である。騎士のくせに顔審査もあるのかと疑うくらい顔面偏差値も異様に高く、良家出身の者が多数在籍しているので優良物件騎士として人気も高い。
第二騎士団は青騎士団と呼ばれ、爽やかな青い騎士服を纏っている。国民を守る気さくな集団として認識され、町のお兄さん的ポジションをゲットしていた。
そして最後の第三騎士団は灰騎士団と呼ばれ、何でも屋と揶揄されることもある実力重視の少数精鋭集団であった。そんな灰騎士団だからこそ訳ありでも実力さえあれば誰でも入団が認められるのだ。
リアも落ちこぼれながら実力で一年前に入団テストを見事にパスし、正式な団員となっていた。
少女の正体が落ちこぼれのリアだと分かり周囲はざわついているが、その実力を知っているだけに誰も面と向かって侮蔑の言葉を吐いたりしない。
だがその視線は十分に蔑んだものに変わっていた。
『落ちこぼれのくせに!』
『あんな姿晒して恥ずかしくないのかしら』
『心配して損したな』
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普通の少女なら一瞬で周りの人全員が敵に変わったこの状況に耐えられず泣き出してしまうだろう。
けれどもリアはこんな状況に慣れているので、そんなことは一切気にする様子は見せない。倒れている熊獣人の足首を掴みズルズルと重そうに引きずりながら周囲の人に熊獣人の顔が見えるようにしてのんびりとした口調で声を掛ける。
「この馬鹿の知り合い誰かいませんかー?いないなら目が覚めるまで騎士団の留置所にぶち込んでおくけど、いいですか~」
リアののんきな問い掛けに答える者は誰もいない。
答えがないのを返事と理解して、『はいはい、いませんね。では撤収しま~す』と独り言を言っている。
リアは熊獣人をズルズルと引きずって市場から灰騎士団の建物に向かって歩き始める。小柄なリアは流石に担ぐのは無理なので、こうするしか運ぶ手段がない。周りの人達は道を開けて遠巻きに見るだけで誰も手助けを申し出る者はいない。きっとリアが落ちこぼれじゃなかったら、普通に手助けをしてくれる親切な人達だろうが…。
これがこの国での落ちこぼれに対する現実なのだ。逆に侮蔑と無視で済んでるぐらいはいい方だといえる。
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『あれ、熊ちゃんぶつかったかな。ごめーん、でもワザとじゃないから許してね~』とご機嫌な様子だ。全然悪いと思っていないどころか、絶対にワザとぶつかるように歩いているように見える。
そんなリアに後ろから地味な服装の人族のおじさんが声を掛けてきた。その声に侮蔑の色は含んでいないが、なんとも間が抜けたような緊張感のない話し方だった。
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感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。
4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。
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