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51.法で裁けぬ者達③
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「私は無力な子爵令嬢で、ただ真面目に侍女として仕えております。そんな私に出来ることは自分の命を守ることだけでした。こういう生き方しか出来ない者達もおります。どうかご理解くださいませ」
隣国の王族を前にして怯むことなく向き合うエリ。
彼女の勇気を振り絞った行動に周囲の者達は拍手を送って賛同の意を表す。
周囲から支持されエリは満足気に胸を張る。
――彼女は分かっていない。
エリ、あなたは決して無力ではなかったわ…。
レザはエリと彼女に賛同した者達を冷たく見据える。
「そんな馬鹿な発言をするとはさっきの言葉が理解できなかったとみえる」
「ちゃんと理解しております。ただ無力な者にそこまで求めるのは酷だと分かっていただきたいのです!」
自分の主張が正しいと訴えるエリ。
彼女は気づけない、何がいけないかったのか考えようとしないから。
レザはそんな彼女を蔑むように見る。
「無力だと?違う、お前は自分のしたことを理解していないだけだ」
「私は真面目に仕えていただけで――」
もうレザは彼女の言葉を最後まで聞かなかった。
「側妃の悪意は彼女一人では成り立たない。それを支持し王妃を孤立させ精神的に追い詰める役をやったのは誰だ?賢い側妃は当然命令などしなかった。だがその掌で勝手に踊った操り人形がいた、それは自称無力な侍女達だ。身に覚えがないとは言わせない」
「そんなつもりは決して……」
周りにいた同僚が一斉にエリから距離を置く。さっきまで彼女の意見に賛同していたのに、今は自分は関係ないと言わんばかりの余所余所しい態度。
エリは誰も助け船を出してくれずに孤立し、泣きそうな顔で立ち尽くしている。
「確かに法は犯していないから罰せられることはない。だが側妃の悪意を成立させ、清廉潔白な王妃を蔑ろにした罪は重い。それに今回の襲撃事件も我が国に逆恨みをした貴族のお粗末な仕業に過ぎないが稚拙な証拠を誰もが否定しなかった。たったの一人もだっ!黙認は加担したと同じ。自分は違うと胸を張って言える奴は出てこいっ!」
「「「…………」」」
誰もが顔を伏せて答えない。
つまり身に覚えがある者しかいないということだろう。
一人一人は罪の意識もなく行った些細なことでも、それが集団となると力となる。
今回はまさにそういうことだろう。
人は実際に我が身に降りかからなければ他人事でしかない。
けれども今回は身を持って知るだろう。
――己の些細な言動にも大人ならば責任を負わなくてはいけない。
重苦しい沈黙を破ったのはランダ第一王子だった。
「では我々は予定通りに帰国するとしよう。ちなみに逃亡中の実行犯は偶然捕らえたからそちらに引き渡そう」
「…このような状況で帰国なさるのですか?」
そう発言したのはあの侯爵だった。
この場にいる者達はみな縋るようにランダ第一王子を見つめている。
誰もが同じ気持ちだった。
「この国のことはこの国の者達で決めろと伝えたはずだ。それに真面目な国王も冤罪を免れた王妃も優秀な側妃も貴族達もいる。力を合わせればいいだけのことだ」
「ですが国王陛下も側妃様も重鎮達も……。それに王妃様は三年間も不在でしたので執政に関わるのは難しいかと」
上の者達にはもう頼れないから縋っていると言いたいのだろう。
だがそれはこちらの勝手な言い分であって、隣国には関係ない。
「自分達が三年掛けて無能な国王や品位に欠ける側妃を作り上げたのだから、矯正するなり刈り取るなり自分達で決めろ。我々は他国の為に自国の民に割く時間を削るつもりはない」
「…そ、そんな……」
ランダ第一王子はそう言い捨てる。
――隣国が我が国の問題を背負う義理はない。
隣国の王族を前にして怯むことなく向き合うエリ。
彼女の勇気を振り絞った行動に周囲の者達は拍手を送って賛同の意を表す。
周囲から支持されエリは満足気に胸を張る。
――彼女は分かっていない。
エリ、あなたは決して無力ではなかったわ…。
レザはエリと彼女に賛同した者達を冷たく見据える。
「そんな馬鹿な発言をするとはさっきの言葉が理解できなかったとみえる」
「ちゃんと理解しております。ただ無力な者にそこまで求めるのは酷だと分かっていただきたいのです!」
自分の主張が正しいと訴えるエリ。
彼女は気づけない、何がいけないかったのか考えようとしないから。
レザはそんな彼女を蔑むように見る。
「無力だと?違う、お前は自分のしたことを理解していないだけだ」
「私は真面目に仕えていただけで――」
もうレザは彼女の言葉を最後まで聞かなかった。
「側妃の悪意は彼女一人では成り立たない。それを支持し王妃を孤立させ精神的に追い詰める役をやったのは誰だ?賢い側妃は当然命令などしなかった。だがその掌で勝手に踊った操り人形がいた、それは自称無力な侍女達だ。身に覚えがないとは言わせない」
「そんなつもりは決して……」
周りにいた同僚が一斉にエリから距離を置く。さっきまで彼女の意見に賛同していたのに、今は自分は関係ないと言わんばかりの余所余所しい態度。
エリは誰も助け船を出してくれずに孤立し、泣きそうな顔で立ち尽くしている。
「確かに法は犯していないから罰せられることはない。だが側妃の悪意を成立させ、清廉潔白な王妃を蔑ろにした罪は重い。それに今回の襲撃事件も我が国に逆恨みをした貴族のお粗末な仕業に過ぎないが稚拙な証拠を誰もが否定しなかった。たったの一人もだっ!黙認は加担したと同じ。自分は違うと胸を張って言える奴は出てこいっ!」
「「「…………」」」
誰もが顔を伏せて答えない。
つまり身に覚えがある者しかいないということだろう。
一人一人は罪の意識もなく行った些細なことでも、それが集団となると力となる。
今回はまさにそういうことだろう。
人は実際に我が身に降りかからなければ他人事でしかない。
けれども今回は身を持って知るだろう。
――己の些細な言動にも大人ならば責任を負わなくてはいけない。
重苦しい沈黙を破ったのはランダ第一王子だった。
「では我々は予定通りに帰国するとしよう。ちなみに逃亡中の実行犯は偶然捕らえたからそちらに引き渡そう」
「…このような状況で帰国なさるのですか?」
そう発言したのはあの侯爵だった。
この場にいる者達はみな縋るようにランダ第一王子を見つめている。
誰もが同じ気持ちだった。
「この国のことはこの国の者達で決めろと伝えたはずだ。それに真面目な国王も冤罪を免れた王妃も優秀な側妃も貴族達もいる。力を合わせればいいだけのことだ」
「ですが国王陛下も側妃様も重鎮達も……。それに王妃様は三年間も不在でしたので執政に関わるのは難しいかと」
上の者達にはもう頼れないから縋っていると言いたいのだろう。
だがそれはこちらの勝手な言い分であって、隣国には関係ない。
「自分達が三年掛けて無能な国王や品位に欠ける側妃を作り上げたのだから、矯正するなり刈り取るなり自分達で決めろ。我々は他国の為に自国の民に割く時間を削るつもりはない」
「…そ、そんな……」
ランダ第一王子はそう言い捨てる。
――隣国が我が国の問題を背負う義理はない。
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