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45.譲れないもの…?!〜ケイドリューザ視点〜
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「あんな親でも死んだらミアは悲しむだろう。私はミアの涙は見たくない。だが彼らをこのままにする気もないから、彼らが最も大切にしているものを奪う。最高の舞台を用意するつもりだから、そこは私に任せてもらいたい」
「確かに姉上なら悲しみますね。優しすぎるから…」
「私だってお姉様を泣かせたくはありません…」
ミアの性格を知っているからこそ、彼らは素直に引いてくれた。
感情に流されることなく、冷静さを失わない双頭の龍。まだ若いから未熟な部分もあるが、将来は大いに期待していいだろう。
「久しぶりにヒリヒリ出来ると思ったのに非常に残念です」
ダリムもミアを大切に思っているからの発言だと思うが、多分それだけではなく、本当にヒリヒリしたかったのだ。
『冷笑のバード』の本領発揮は勘弁して欲しい。
「年寄りには刺激も必要だと思うが、今回は駄目だ」
今日は随分と言いたい放題言われたから、これくらいの意趣返しは可愛いものだ。ダリムの頬がピクリと動く。
くっくく、古狸には効いたらしい。
これで、主である私への口の利き方に気をつけるようになるだろう。
「そういえば殿下。さきほど部屋に籠もっている時にハナミア様の唇へ初めての口づけをしたようですが……」
ちらりと双頭の龍のほうを見ながら、わざわざここで言わなくともいい事を言ってくる。つまり二人を煽っているのだ。
――古狸め、こういうところがいやらしい。
「殿下、姉上に無体なことを強いたのですかっ!」
「誤解するな、合意だ」
冷静にそれだけ告げる。怒り心頭の相手に引きづられたら、収集がつかなくなるからだ。
「はんっ、お姉様が初めてだと思っているなんてお目立たい方ですわね。お姉様の初めては私とレイザですわよ。熱を出して眠っている時にしましたもの」
「そうだ、そうだ。私とレイリンが初めてだっ!」
くそっ、何を勝手なことをしてやがるんだっ。
思わず怒りに我を忘れそうになるが、踏みとどまる。彼らは未来の弟妹だ、仲良くすればミアが喜ぶ。
子供のお遊びだから気にするなと自分に言い聞かせ、心を落ち着かせる努力をしてみるが効果はない。
「それは子供の頃の話だろう。それにミアの弟妹なんだからカウントされない」
私は動揺を隠して、そう告げる。大丈夫だ、これでこの話は終わる。
「そんな法律ありましたか?私は存じませんが、今出来たのでしょうか?さすがは褐色の口なしです。自分を慰める為に馬鹿げた法律を作るなんて」
「負け惜しみですわね。お姉様の唇は柔らかくて最高でしたわ!おっほほー」
――ブチッ…。
もう我慢の限界だ。
「弟妹からの口づけは、除外されるのは常識だ!」
「常識なんて時代とともに変わるものです」
「そうですわ。常識に囚われるなんて器が小さい男ですわね」
…お前らこそ、少しは常識に囚われろっ。
高笑いするレイリンと鼻で笑うレイザ、そして怒り心頭の私。
ミアの初めての口づけは誰がなんと言おうと私だ。それだけは絶対に譲れない。
大人気ないだと?上等だ、構わない!
ミアが可愛がっていなければ、魔術で遠い地に飛ばしているところだがそれだけは耐える。ミアを泣かすことだけは出来ない。
くそっ、飛ばしたい…。
詠唱なしで魔術を展開できる自分を必死に理性で抑える。
敵は双頭の龍だけでなく、化け物級の自分でもあるという複雑な状況…。
「はっはは、褐色の口なしと双頭の龍の低レベルな闘いもなかなかいいですね。ヒリヒリはしませんが、ワクワクします。母国の孫への良い土産話になります。こんな大人にはなってはいけないという良い教訓になりますから」
ダリムは腹を抱えて笑いながら高みの見物を決め込んでいる。
『誰のせいでこんな事になっていると思っているんだ!』と、そんな彼に向かって叫ぶ。
するとダリムは『年寄りなので耳が遠くて…』と言いながら、わざとらしく腰を叩いてみせる。
………。
誰よりも大人気ないのは、この古狸だった。
「確かに姉上なら悲しみますね。優しすぎるから…」
「私だってお姉様を泣かせたくはありません…」
ミアの性格を知っているからこそ、彼らは素直に引いてくれた。
感情に流されることなく、冷静さを失わない双頭の龍。まだ若いから未熟な部分もあるが、将来は大いに期待していいだろう。
「久しぶりにヒリヒリ出来ると思ったのに非常に残念です」
ダリムもミアを大切に思っているからの発言だと思うが、多分それだけではなく、本当にヒリヒリしたかったのだ。
『冷笑のバード』の本領発揮は勘弁して欲しい。
「年寄りには刺激も必要だと思うが、今回は駄目だ」
今日は随分と言いたい放題言われたから、これくらいの意趣返しは可愛いものだ。ダリムの頬がピクリと動く。
くっくく、古狸には効いたらしい。
これで、主である私への口の利き方に気をつけるようになるだろう。
「そういえば殿下。さきほど部屋に籠もっている時にハナミア様の唇へ初めての口づけをしたようですが……」
ちらりと双頭の龍のほうを見ながら、わざわざここで言わなくともいい事を言ってくる。つまり二人を煽っているのだ。
――古狸め、こういうところがいやらしい。
「殿下、姉上に無体なことを強いたのですかっ!」
「誤解するな、合意だ」
冷静にそれだけ告げる。怒り心頭の相手に引きづられたら、収集がつかなくなるからだ。
「はんっ、お姉様が初めてだと思っているなんてお目立たい方ですわね。お姉様の初めては私とレイザですわよ。熱を出して眠っている時にしましたもの」
「そうだ、そうだ。私とレイリンが初めてだっ!」
くそっ、何を勝手なことをしてやがるんだっ。
思わず怒りに我を忘れそうになるが、踏みとどまる。彼らは未来の弟妹だ、仲良くすればミアが喜ぶ。
子供のお遊びだから気にするなと自分に言い聞かせ、心を落ち着かせる努力をしてみるが効果はない。
「それは子供の頃の話だろう。それにミアの弟妹なんだからカウントされない」
私は動揺を隠して、そう告げる。大丈夫だ、これでこの話は終わる。
「そんな法律ありましたか?私は存じませんが、今出来たのでしょうか?さすがは褐色の口なしです。自分を慰める為に馬鹿げた法律を作るなんて」
「負け惜しみですわね。お姉様の唇は柔らかくて最高でしたわ!おっほほー」
――ブチッ…。
もう我慢の限界だ。
「弟妹からの口づけは、除外されるのは常識だ!」
「常識なんて時代とともに変わるものです」
「そうですわ。常識に囚われるなんて器が小さい男ですわね」
…お前らこそ、少しは常識に囚われろっ。
高笑いするレイリンと鼻で笑うレイザ、そして怒り心頭の私。
ミアの初めての口づけは誰がなんと言おうと私だ。それだけは絶対に譲れない。
大人気ないだと?上等だ、構わない!
ミアが可愛がっていなければ、魔術で遠い地に飛ばしているところだがそれだけは耐える。ミアを泣かすことだけは出来ない。
くそっ、飛ばしたい…。
詠唱なしで魔術を展開できる自分を必死に理性で抑える。
敵は双頭の龍だけでなく、化け物級の自分でもあるという複雑な状況…。
「はっはは、褐色の口なしと双頭の龍の低レベルな闘いもなかなかいいですね。ヒリヒリはしませんが、ワクワクします。母国の孫への良い土産話になります。こんな大人にはなってはいけないという良い教訓になりますから」
ダリムは腹を抱えて笑いながら高みの見物を決め込んでいる。
『誰のせいでこんな事になっていると思っているんだ!』と、そんな彼に向かって叫ぶ。
するとダリムは『年寄りなので耳が遠くて…』と言いながら、わざとらしく腰を叩いてみせる。
………。
誰よりも大人気ないのは、この古狸だった。
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