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20.おまじない?それとも口づけ?②
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私は全てを白状してやはりここでも叱られた。もう二度と馬鹿な真似はしませんという念書まで書かされ、やっと解放されたのだ。
ダリムも殿下も怒りすぎだ、きっとカルシウムが足りないのかもしれない。そうだ、そうに決まっている。今度お茶菓子に干した小魚でも差し入れしよう。
殿下は教室に戻る途中も私の頬をチラチラと見てくる。ちょっと心配し過ぎではないだろうか?
「リューザ様、そんなに見られたら穴があきますから止めてください」
「レイミアが悪い。そんな傷をつけるから心配されるんだ。傷が残ったらどうするんだ」
「少しくらい傷が残っても困りませんから大丈夫ですよ」
どうするのもなにも、どうもしない。
両親は私の顔に傷が出来てもきっと気づきもしない。だって私の顔なんてまともに見たことはないもの。
ああ…やだな…。
両親との三回目の夕食を思い出してしまう。嫌なことは忘れることにしているのにね…。
「そんな顔するな、レイミア」
私の頬にそっと手を伸ばして来る殿下。きっと私が傷が残るかもと気にしてこんな顔になっていると思っているのだろう。
本当は違うけど否定はしない。
両親のことは、…言えない。公爵令嬢と知られたらいけないのもあるけれど、それ以上に私はいらない子だと彼に知られたくない。
見栄とかそんなものではなくて、殿下の目に映るは可哀想な私ではなく今のままがいい。
彼には、精一杯生きている私自身を見ていて欲しい。
これって我儘じゃないよね…?
「リューザ様、私はもともとこんな顔ですよ」
冗談っぽくそう言えた。もう忘れたから大丈夫。
「大丈夫だ、レイミア」
彼は屈んで、とてもゆっくりと顔を寄せてくる。
それは私でも簡単に避けることが出来る速さなのに動けない。――違う、動かなかった。
彼の褐色の肌をこんなに近くで見たのは初めてで、その繊細な美しさに見惚れてしまっていたから。
なんて綺麗なんだろう。
彼は小さな布を貼ってある私の頬にとても優しく唇をあてる。それは触れるか触れないかというほど優しくて、直接肌には触れていない。
でもその感触はほんわりと伝わってきた。
……はぅっ!これって、これって…まさか…。
胸が早鐘を打つ。でもこれは止まりそうってことじゃなくて、生まれてはじめての感覚。
「おまじないだ、ミア」
「…おまじない??」
「これで傷跡が残らない。嫌だったか…」
……そ、そうか。これっておまじないなんだね…。
この国ではそういうおまじないはないけれど、隣国にはあるんだね。つまりこれは文化の違い。
そうだよね。あはっ…は…、口づけかと勘違いするところだった。
自分の勘違いに気づいたら心臓も落ち着いてくる。
「ありがとうございます、リューザ様。それとミア?と呼びましたか…」
「ああ、私のことはリューザと呼んでいるのだから、レイミアにも愛称をつけたほうがいいと思ってな。嫌か?」
「そう呼ばれるのは初めてですが、ミアっていいですね!なんか仲良しって感じで」
私はちゃんと普通に言えている?
顔は真っ赤になっていない?
心臓がドキドキしていたのは彼に聞こえていなかった?
おまじないとか突然の愛称呼びとかあって、図々しくも私は勘違いしてしまうところだった。
――恥ずかしい!
だってほら恋愛小説だとそんな場面もあったから。それに誰にも言っていないけれど、なんか殿下のことを最近いいなと思うこともあって…。
それから殿下と並んで話しながら教室に戻ったのに、何を話したか全く覚えていなかった。そして教室に着くなり、具合が悪くないのになぜか殿下に『ミア』と耳元で呼ばれるなり倒れてしまった。
…なんだかふわふわして気持ちがいいな……。
生きているのに天国にいるような気分を味わえるなんて不思議だけれど、最高だった。
ダリムも殿下も怒りすぎだ、きっとカルシウムが足りないのかもしれない。そうだ、そうに決まっている。今度お茶菓子に干した小魚でも差し入れしよう。
殿下は教室に戻る途中も私の頬をチラチラと見てくる。ちょっと心配し過ぎではないだろうか?
「リューザ様、そんなに見られたら穴があきますから止めてください」
「レイミアが悪い。そんな傷をつけるから心配されるんだ。傷が残ったらどうするんだ」
「少しくらい傷が残っても困りませんから大丈夫ですよ」
どうするのもなにも、どうもしない。
両親は私の顔に傷が出来てもきっと気づきもしない。だって私の顔なんてまともに見たことはないもの。
ああ…やだな…。
両親との三回目の夕食を思い出してしまう。嫌なことは忘れることにしているのにね…。
「そんな顔するな、レイミア」
私の頬にそっと手を伸ばして来る殿下。きっと私が傷が残るかもと気にしてこんな顔になっていると思っているのだろう。
本当は違うけど否定はしない。
両親のことは、…言えない。公爵令嬢と知られたらいけないのもあるけれど、それ以上に私はいらない子だと彼に知られたくない。
見栄とかそんなものではなくて、殿下の目に映るは可哀想な私ではなく今のままがいい。
彼には、精一杯生きている私自身を見ていて欲しい。
これって我儘じゃないよね…?
「リューザ様、私はもともとこんな顔ですよ」
冗談っぽくそう言えた。もう忘れたから大丈夫。
「大丈夫だ、レイミア」
彼は屈んで、とてもゆっくりと顔を寄せてくる。
それは私でも簡単に避けることが出来る速さなのに動けない。――違う、動かなかった。
彼の褐色の肌をこんなに近くで見たのは初めてで、その繊細な美しさに見惚れてしまっていたから。
なんて綺麗なんだろう。
彼は小さな布を貼ってある私の頬にとても優しく唇をあてる。それは触れるか触れないかというほど優しくて、直接肌には触れていない。
でもその感触はほんわりと伝わってきた。
……はぅっ!これって、これって…まさか…。
胸が早鐘を打つ。でもこれは止まりそうってことじゃなくて、生まれてはじめての感覚。
「おまじないだ、ミア」
「…おまじない??」
「これで傷跡が残らない。嫌だったか…」
……そ、そうか。これっておまじないなんだね…。
この国ではそういうおまじないはないけれど、隣国にはあるんだね。つまりこれは文化の違い。
そうだよね。あはっ…は…、口づけかと勘違いするところだった。
自分の勘違いに気づいたら心臓も落ち着いてくる。
「ありがとうございます、リューザ様。それとミア?と呼びましたか…」
「ああ、私のことはリューザと呼んでいるのだから、レイミアにも愛称をつけたほうがいいと思ってな。嫌か?」
「そう呼ばれるのは初めてですが、ミアっていいですね!なんか仲良しって感じで」
私はちゃんと普通に言えている?
顔は真っ赤になっていない?
心臓がドキドキしていたのは彼に聞こえていなかった?
おまじないとか突然の愛称呼びとかあって、図々しくも私は勘違いしてしまうところだった。
――恥ずかしい!
だってほら恋愛小説だとそんな場面もあったから。それに誰にも言っていないけれど、なんか殿下のことを最近いいなと思うこともあって…。
それから殿下と並んで話しながら教室に戻ったのに、何を話したか全く覚えていなかった。そして教室に着くなり、具合が悪くないのになぜか殿下に『ミア』と耳元で呼ばれるなり倒れてしまった。
…なんだかふわふわして気持ちがいいな……。
生きているのに天国にいるような気分を味わえるなんて不思議だけれど、最高だった。
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