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27.幻と真実①
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悲恋の恋人達が結ばれてから三年の月日が経過した。
リデックは相変わらず外だけでなく屋敷でも仲睦まじい夫婦を演じ、やすらげない日々を送っていた。
以前のハンナとの婚姻と違い、元王女であるタチアナを蔑ろに出来ない事は空気を読めない男リデックでさえ分かっているので、愛妻家のふりをしているのだ。
『実は妻であるタチアナを愛していない』と誰かに愚痴ることが出来たのならストレス発散になるのだろうが、悲恋を乗り越え結ばれた恋人達にはそれすら許されない雰囲気があった。
---ああハンナがいた頃が懐かしい、いつでも俺を立て支えてくれる健気な妻。
…タチアナとは大違いだ。彼女はいつでも美しく着飾り明るく大輪の薔薇のようだが、俺に合わせる気遣いはないので一緒に居て疲れてしまう。一時の恋人なら最高だが、妻としては最悪だ。
はぁ~。
リデックは毎日楽しそうに生活している妻タチアナを横目に、ため息を吐くのを懸命に堪えて笑顔を作っていた。
そんな日常が続いていたある日、ラース王国に『隣国の国王が退位する』という知らせが届いた。理由は明記されていないが現国王が早々に退位し第一王子がその後を継ぐというのだ。
現国王の退位と新国王を祝う式典にラース王国の王族も招待されていたが、あいにく国王夫妻は動かせない予定があり王子も他国を訪問中なので出席できない。
だが隣国との良好な関係を示すためにも王族の誰かが行かなくてはならない。誰を行かせるべきかで、王族と家臣たちは話し合いを進めていた。
「やはり隣国へは丁重に謝罪し、代理として宰相様が行くのはどうでしょうか?」
「いやいや、それでは不味いだろう。やはり遠縁の王族の方に、」
「私が行きましょう」
なにを考えているのか離縁した隣国の元正妃であるタチアナが自ら名乗りを上げた。
「し、しかしタチアナ様は身分的には問題ありませんが、流石に離縁した元正妃の貴女様が行くのは不適切では…」
家臣の一人が勇気を出して控えめな言葉を使い『相応しくない』と進言したが、タチアナには通じなかった。
「あら、退位される国王は私を寵愛していたから訪問をきっとお喜びになるわ。祝い事なのだから、相手が喜ぶ者を行かせるのが礼儀というのもでしょう」
元王女にこう言われたら臣下達は反対など出来ない。後は国王に一塁の望みを繋げたが…『うむ。ではタチアナ夫妻に今回の出席を任せよう』と決定されてしまった。
タチアナから事の顚末を聞いたリデックは珍しく浮かない表情をした。彼は元妻が再婚し隣国にいるのを知っていたので、隣国でハンナに会ったら冷静でいられるか自信がなかったのだ。
---ハンナには会いたい。でも他の男の妻になっている彼女を見るのは辛いし、彼女も俺を見て泣いてしまうかもしれない。
だがそんな夫を見てタチアナは自分の都合のいいように勘違いしていた。
「あらリデックったら心配症ね。隣国の国王はまだ私を諦めていないと思うけど、もう私はあなたの妻なのだから手を出してきたり出来ないから安心してちょうだい。でも私を巡って二人の男が争うってなんか素敵ね、ふふふ」
「‥‥そうだな」
リデックはこんな妻に慣れていたので、心のこもっていない適当な返事をしてやり過ごした。
それから数日後にはリデックとタチアナは国の代表として隣国への式典に参加するため出発した。この時の二人は、隣国で自分達が真実を知るなんて考えてもいなかった。
リデックは相変わらず外だけでなく屋敷でも仲睦まじい夫婦を演じ、やすらげない日々を送っていた。
以前のハンナとの婚姻と違い、元王女であるタチアナを蔑ろに出来ない事は空気を読めない男リデックでさえ分かっているので、愛妻家のふりをしているのだ。
『実は妻であるタチアナを愛していない』と誰かに愚痴ることが出来たのならストレス発散になるのだろうが、悲恋を乗り越え結ばれた恋人達にはそれすら許されない雰囲気があった。
---ああハンナがいた頃が懐かしい、いつでも俺を立て支えてくれる健気な妻。
…タチアナとは大違いだ。彼女はいつでも美しく着飾り明るく大輪の薔薇のようだが、俺に合わせる気遣いはないので一緒に居て疲れてしまう。一時の恋人なら最高だが、妻としては最悪だ。
はぁ~。
リデックは毎日楽しそうに生活している妻タチアナを横目に、ため息を吐くのを懸命に堪えて笑顔を作っていた。
そんな日常が続いていたある日、ラース王国に『隣国の国王が退位する』という知らせが届いた。理由は明記されていないが現国王が早々に退位し第一王子がその後を継ぐというのだ。
現国王の退位と新国王を祝う式典にラース王国の王族も招待されていたが、あいにく国王夫妻は動かせない予定があり王子も他国を訪問中なので出席できない。
だが隣国との良好な関係を示すためにも王族の誰かが行かなくてはならない。誰を行かせるべきかで、王族と家臣たちは話し合いを進めていた。
「やはり隣国へは丁重に謝罪し、代理として宰相様が行くのはどうでしょうか?」
「いやいや、それでは不味いだろう。やはり遠縁の王族の方に、」
「私が行きましょう」
なにを考えているのか離縁した隣国の元正妃であるタチアナが自ら名乗りを上げた。
「し、しかしタチアナ様は身分的には問題ありませんが、流石に離縁した元正妃の貴女様が行くのは不適切では…」
家臣の一人が勇気を出して控えめな言葉を使い『相応しくない』と進言したが、タチアナには通じなかった。
「あら、退位される国王は私を寵愛していたから訪問をきっとお喜びになるわ。祝い事なのだから、相手が喜ぶ者を行かせるのが礼儀というのもでしょう」
元王女にこう言われたら臣下達は反対など出来ない。後は国王に一塁の望みを繋げたが…『うむ。ではタチアナ夫妻に今回の出席を任せよう』と決定されてしまった。
タチアナから事の顚末を聞いたリデックは珍しく浮かない表情をした。彼は元妻が再婚し隣国にいるのを知っていたので、隣国でハンナに会ったら冷静でいられるか自信がなかったのだ。
---ハンナには会いたい。でも他の男の妻になっている彼女を見るのは辛いし、彼女も俺を見て泣いてしまうかもしれない。
だがそんな夫を見てタチアナは自分の都合のいいように勘違いしていた。
「あらリデックったら心配症ね。隣国の国王はまだ私を諦めていないと思うけど、もう私はあなたの妻なのだから手を出してきたり出来ないから安心してちょうだい。でも私を巡って二人の男が争うってなんか素敵ね、ふふふ」
「‥‥そうだな」
リデックはこんな妻に慣れていたので、心のこもっていない適当な返事をしてやり過ごした。
それから数日後にはリデックとタチアナは国の代表として隣国への式典に参加するため出発した。この時の二人は、隣国で自分達が真実を知るなんて考えてもいなかった。
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