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20.ハンナから見たリデック・バウアー②

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こんな状況なので初夜には来ないかと思ったが、リデック・バウアーは律儀にもちゃんと来た。ここで私の彼に対する評価はちょっとだけ上がった。
『嫌なことから逃げない姿勢は良い』と思ったが、それはすぐに撤回されることになった。

私も彼もお互いに愛はないので初夜でも大抵のことは覚悟していた。
『愛を囁かなくてもいい』
『甘いムードはなくていい』
『淡々とことを進めるだけでいい』
そんな寛大な心で初夜に臨んだ私だけど…。

あの石ころは子作りに励み自分がイクまさにその時『アナ‥‥』と叫んだのだ。本人は行為に夢中で気づいていなかったが、『アナ』と言っていた。

---この馬鹿が!豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえ。

彼はあろうことか初夜で新妻の名ではなく元恋人の名を叫んだのだ…。

私も彼がタチアナ王女を愛称のアナで呼んでいると知らなければ『ハンナ』と都合よく聞こえたかもしれないが、女子の噂話でアナ情報を掴んでいた私の耳は誤魔化されなかった。

この瞬間、私の中でリデック・バウアーは石ころからへと降格した。

私はもう夫であるリデック・バウアーに期待することを一切止めた。

---うん、生ゴミは放置しよう、臭ってきたら処分するけどめんどくさいからそれまで放置決定!


私はこの結婚生活を淑女ゲームと位置づけ楽しむことにした。
政略結婚の妻として淑女の仮面を被って生活し、周りからの高評価を狙い、楽しく生きるのだ。

この屋敷で楽しく生きていくためにはまず使用人達と仲良くなることだ。私は女主人としてやるべきことはやり、かつ無駄な仕事を削っていき労働環境の改善を行い支持を集めた。それに労働環境の改善の一環として、屋敷内に様々な工夫を凝らしてみた。
それは使用人達の為のものだったが、たまに帰ってくる夫も気に入っているようだった。

---チッ、生ゴミを喜ばせてしまった。

そして外でも徹底して良い妻を演じた。そうでなくても私は美丈夫な騎士に嫁いだ超ラッキーな令嬢と認識されているので、無駄に敵を増やすのは得策ではない。
外でも上手く立ち回って屋敷同様、評価を上げていった。

---私、生まれる場所を間違えたかも。役者が天職かもしれないわね。

そんなこんなで二年間淑女ゲームをしながら楽しく暮らしていたのに半年前から夫が頻繁に帰宅するようになっていた。どうやら子作りの催促を受け義務に励む気になったらしい。

---ああ、めんどくさい。

それが本音だったが、私も貴族なので後継の必要性は痛いほど理解している。なので義務として相手をすることにした。
まあ、初夜の件で愛情はさっぱり持てなかったが、彼の態度も大分まともになったので自然と嫌悪感は薄れていたので耐えられた。

---私は前向きだし我慢強いほうなのだ。うん、私って偉い!


そして私は身籠ったのを機に生ゴミを石ころに昇格してあげていた。

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