55 / 59
46.ララが去った王宮②
しおりを挟む
「あらら、なんか親子で物騒な状況になっているわね。親子喧嘩でもしているの?帰ってくるタイミングが悪かったかしら」
こんな状況なのにおっとりした口調で話しているのは、なんと家出中の王妃スズだった。スズの登場によりバイザルの頭の中からトカタオ要素はゼロになりスズ一色になってしまった。
「スズーー。会いたかった、淋しかったんだぞ。もう離れん、今度は俺も絶対に一緒に行く。これは竜王としての決定事項だ。誰にも俺を止めさせん!」
バイザルはしかとスズを抱き締め、二度と離れんと息巻いている。そんなバイザルを『まったく仕方がない人ね』とスズは優しく背中をポンポンとして落ち着かせようとしているが、トカタオはそんな二人に噛みついて行く。
「クソ父上いい加減にしろ。そんな事より大切な話をしていただろうが!」
「大切なスズが俺の元に戻ってきてくれたことより大切な事なんてないだろう。トカは何を惚けているんだ~、ハハハ。なぁスズ、息子が面白く成長しているぞ」
暫く離れていた『番』スズを目の前にして、バイザルは絶賛脳内お花畑になっている。暫くは竜王として役に立ちそうにない…。だがそんな状況を許せる精神状態でないのがトカタオであった
「このクッソたれが。ケッ、なにを惚けていやがる。ララの事を早く教えろ、さもないと跡形もなく王宮を破壊してやる」
その宣言に脅し要素は一切なく、本気100%である。王子として100%間違っているが、そんなことは些細な事らしい。この発言に反応したのはバイザルではなくスズであった。
「トカ、ララとのことミファン家から私にも連絡が来たから知っているわ。王宮を去ったのは彼女の意思なのよ。父上に八つ当たりは止めなさいな。それよりあなたはこれからどうするつもりなの?」
「もちろん、今すぐに南の辺境地へ行きララを迎えに行く」
トカタオはきっぱりと言い切ると、すぐに背を向け部屋から出て行こうとする。するといつの間にかお花畑から脱出したバイザルがトカタオを引き留めた。
「待てトカタオ、このまま行っても意味はないぞ。お前はいったい何をしたいんだ」
「俺はララに側にいてもらいたいだけだ!」
「トカ。ララは『番』を認識出来るようになって王宮から去っていったのよ。トカタオとの関係についてもゆっくり考える時間が必要だと思ったみたいね」
スズの発言にトカタオは衝撃を受けた。
ただララが好きだから一緒に居たいとは思っていたが、まだララは子供なので先のことまでは具体的に考えていなかった。これからゆっくりと愛を育んで、決めて行けばいいと思っていたのだ。だがララが『番』の存在を感じ取れるようになったのならば話は別である。『番』を失っている自分とは違い、ララはこの先『番』と出会う可能性があるのだから…。
こんな状況なのにおっとりした口調で話しているのは、なんと家出中の王妃スズだった。スズの登場によりバイザルの頭の中からトカタオ要素はゼロになりスズ一色になってしまった。
「スズーー。会いたかった、淋しかったんだぞ。もう離れん、今度は俺も絶対に一緒に行く。これは竜王としての決定事項だ。誰にも俺を止めさせん!」
バイザルはしかとスズを抱き締め、二度と離れんと息巻いている。そんなバイザルを『まったく仕方がない人ね』とスズは優しく背中をポンポンとして落ち着かせようとしているが、トカタオはそんな二人に噛みついて行く。
「クソ父上いい加減にしろ。そんな事より大切な話をしていただろうが!」
「大切なスズが俺の元に戻ってきてくれたことより大切な事なんてないだろう。トカは何を惚けているんだ~、ハハハ。なぁスズ、息子が面白く成長しているぞ」
暫く離れていた『番』スズを目の前にして、バイザルは絶賛脳内お花畑になっている。暫くは竜王として役に立ちそうにない…。だがそんな状況を許せる精神状態でないのがトカタオであった
「このクッソたれが。ケッ、なにを惚けていやがる。ララの事を早く教えろ、さもないと跡形もなく王宮を破壊してやる」
その宣言に脅し要素は一切なく、本気100%である。王子として100%間違っているが、そんなことは些細な事らしい。この発言に反応したのはバイザルではなくスズであった。
「トカ、ララとのことミファン家から私にも連絡が来たから知っているわ。王宮を去ったのは彼女の意思なのよ。父上に八つ当たりは止めなさいな。それよりあなたはこれからどうするつもりなの?」
「もちろん、今すぐに南の辺境地へ行きララを迎えに行く」
トカタオはきっぱりと言い切ると、すぐに背を向け部屋から出て行こうとする。するといつの間にかお花畑から脱出したバイザルがトカタオを引き留めた。
「待てトカタオ、このまま行っても意味はないぞ。お前はいったい何をしたいんだ」
「俺はララに側にいてもらいたいだけだ!」
「トカ。ララは『番』を認識出来るようになって王宮から去っていったのよ。トカタオとの関係についてもゆっくり考える時間が必要だと思ったみたいね」
スズの発言にトカタオは衝撃を受けた。
ただララが好きだから一緒に居たいとは思っていたが、まだララは子供なので先のことまでは具体的に考えていなかった。これからゆっくりと愛を育んで、決めて行けばいいと思っていたのだ。だがララが『番』の存在を感じ取れるようになったのならば話は別である。『番』を失っている自分とは違い、ララはこの先『番』と出会う可能性があるのだから…。
41
お気に入りに追加
1,892
あなたにおすすめの小説
大好きな婚約者に「距離を置こう」と言われました
ミズメ
恋愛
感情表現が乏しいせいで""氷鉄令嬢""と呼ばれている侯爵令嬢のフェリシアは、婚約者のアーサー殿下に唐突に距離を置くことを告げられる。
これは婚約破棄の危機――そう思ったフェリシアは色々と自分磨きに励むけれど、なぜだか上手くいかない。
とある夜会で、アーサーの隣に見知らぬ金髪の令嬢がいたという話を聞いてしまって……!?
重すぎる愛が故に婚約者に接近することができないアーサーと、なんとしても距離を縮めたいフェリシアの接近禁止の婚約騒動。
○カクヨム、小説家になろうさまにも掲載/全部書き終えてます
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。
父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。
彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。
子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる