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27.行方不明

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いつまでも部屋に戻らないララ達を心配して、侍女のドウリアは訓練場へと様子を見に行くことにした。もうおやつの時間はとっくに過ぎている、予定ではおやつ前に戻るとララは約束していたのだ。
無鉄砲なララだが、連絡もなく約束を破るとは思えない、なんだか嫌な予感がした。ドウリアは王族専用棟の廊下を速足で進んでいった。すると前から王子と護衛のカイが歩いてきた。本来なら王族が通り過ぎるまで端によって頭を下げるのが侍女の慣習だが、この時のドウリアは端に寄るどころかずんずんと自分からトカタオに近づいて行った。護衛のカイが、様子が変なドウリアを止めようとトカタオの前に進み出た。

「おい、ドウリア止まれ。トカタオ様の御前だぞ」
「トカタオ様!ララ様はどうしましたか、一緒ではないのですか!まだララ様はお戻りになっていません、居場所を知りませんか!」

必死の形相でドウリアはカイの後ろにいるトカタオに尋ねた。トカタオとカイはドウリアの発した言葉の意味に驚愕した。ララ達はもう二時間も前に訓練場を去っている、訓練場からララの部屋まではどんなにゆっくり歩いても30分も掛からない距離なのだ。

「どういう事だ!ララはまだ戻ってないのか、貴様ララの確認を今までしなかったのか!」
「申し訳ございません。ララ様の帰りが遅れているのに気づいておりましたが、見学が長引いているのかと思っておりました」
「黙れ、言い訳など要らん!ドウリア、お前は侍女を集めてすぐさま王宮専属棟をくまなく捜索しろ。カイお前はここに残って指示を出せ、何かあったら俺に直ぐに連絡をするんだ。俺は騎士団に戻ってララ達の訓練場からの足取りを追う」
「「承知しました」」

激怒した金竜である王子の威圧を前にしてカイとドウリアは指一本動かすことが出来ないでいた。乳兄弟のカイでさえあんなに感情を爆発させたトカタオを見たのは初めてだった。トカタオがこの場から離れてから、やっと二人は動くことが出来た。

「ドウリア、俺はララ様の部屋で待機しているから何かあったら直ぐに連絡をしてくれ。きっとララ様は直ぐに見つかる大丈夫だ」
「分かりました。では私は他の者達と棟の捜索を始めます。ララ様を必ず見つけてきます」

王子の指示通りにカイとドウリアは動き出した、その胸中は不安で溢れていたがお互いそれは隠して、ララの無事な帰還だけを信じることにした。





トカタオはもしかして途中で寄り道をしているララ達に会えるのではないかと淡い期待をしながら訓練場への道を戻って行ったが、ララ達に会うことなく訓練場に着いてしまった。苛立つ気持ちを隠すことなく入口の扉を乱暴に蹴破り、中へと入ってきたトカタオの様子に驚き騎士達が集まって来た。
そこにはいつもと違う王子がいた。優秀な王子をかなぐり捨て、苦しそうな表情の一人の男がいたのだ。

「おい、トカどうした?なにがあったんだ」

初めてみる憔悴した様子の甥に叔父としてバロンが声を掛けた。

「叔父上、ララとにんにんが行方知れずになっている。二時間も前にここから去ったのにまだ部屋に戻ってなかった。棟の方はすでに捜索を開始している。俺はここからララ達の足取りを追うつもりだ。みなも協力して欲しい」
「行方不明だと!分かった、手分けして探すぞ。半分は周りを捜索しろ、残りは目撃者を探せ手当たり次第周囲の者に聞いて回れ、行け!」
「「「ハイ!!!」」」

バロン団長の号令にみな己がやるべきことに取り掛かった。トカタオも行こうとしたが、バロンに腕を掴まれた。

「トカ、しっかりしろ。ララ達は直ぐに見つかる。冷静になれ」
「分かっている。俺は大丈夫、これでも十分冷静だ。兎に角、ララを見つけたい」
「分かった、だがお前は俺と行動を共にしろ」

トカタオはバロンに返事をせずに動き出したが、バロンはそれを甥の了承だと受け取りトカタオと共に聞き込みを始めた。周囲の捜索でも見つからず、聞き込みでも何も掴めていなかった。何の手掛かりもないまま時間だけが過ぎていき騎士達に焦った表情が見え始めてきた。
だがトカタオは逆に無表情になっていった。そんな甥の表情を見てバロンは不味いと感じ始めていた、ララ達が見つからない焦りでトカタオの怒りが増しているのが分かったのだ。
バロンは金竜である兄と共に育ち、金竜の真の恐ろしさを知っている男だ。怒りが頂点まで達した金竜を止められるのは同じ金竜か『番』しかいない。けれども、竜王は他国に外交に行き今は不在だし、トカタオはまだ『番』が見つかっていない。バロンは騎士団団長として最悪の状況になった場合の対応策を考え始めた。

(どうする。何かあった時に俺ではトカタオは止められん、兄上に緊急連絡を入れるか…)



そんな時くねくねと媚びを売るような仕草で一人の令嬢が王子に近付いてきた、それはあのヒスイ嬢だった。
ヒスイ嬢はチラチラとトカタオに流し目を送り、話し掛けられるのを待っているようだったが、一向に
話し掛けられないので痺れを切らして自分から声を掛けてきた。

「トカタオ様~。今日のお茶会とても楽しかったですね、今度はぜひ二人だけのお茶会をしませんか?」

この場の空気も読まず馬鹿な事を言ってくるヒスイ嬢をトカタオとバロンは相手にしなかった。ヒスイ嬢は諦めずに話し続けていたが無視してトカタオ達が通り過ぎようとした、その時にヒスイ嬢は気を引くために切り札を出してきた。

「トカタオ様。私、ピンクの子豚ちゃんを見たかもしれませんわ~。でも記憶が曖昧で…。ゆっくりと二人きりで話せば思い出すかしら」

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