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閑話~マオの焦燥~

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俺はマオ・ミファン150歳で赤髪赤目の竜人だ。南の辺境地を治めている領主の長男で、厳つい風貌の父サイガではなく可愛い雰囲気の母ミアに似たため甘いマスクのイケメンと言われている。これには母に感謝、感謝だ。(父よ、悪気はないから)

俺にはそれはそれは可愛い妹がいる、名前はララルーア・ミファンだ。ララは俺が50歳の時に卵で生まれ、訳あって孵化するまで更に50年かかった。その間交代で卵を温め続けた父母もそうだが、俺も卵に愛情を注ぎまくった。毎日話し掛け、本の読み聞かせをし、歌を歌ってあげた。
そしてとうとう卵から妹が誕生したんだ!
ピンク色の小さな可愛い女の子で『ピイピイ』とまるで鈴を転がすような声だった。
『この子は天使だー!』って俺にはすぐに分かってしまった。

その日から俺の毎日はララルーアと共にあった。可愛いララの初あくび・可愛いララの初ゲップetc.全てが美しい思い出になっている。
溺愛が過ぎて周りからは『シスコン』と言われていたが気にもならなかった。
俺だけじゃなく両親も妹を溺愛していたし、城の者達からもララはアイドル扱いされていた。つまりララが可愛すぎるからいけないのであって、俺は正常な兄だ。全く問題ない。


南の辺境地でこんな幸せな毎日が続くと思っていたが、父母の第三子抱卵中にララは王宮に滞在することになった。
どこかの馬鹿のせいで竜力不足のララが生きていくには仕方がない事だが、一日中ララと一緒にいられなくなったのは辛かった。
だが昼間は学園に通学するが、それ以外の時間はララルーアと一緒にいるので我慢できると思っていた。

(俺の考えが甘かった……)

普通の生徒は午前9時~午後5時まで授業を受けるが、俺の場合は午前6時~午後7時までの特別コースが組まれていた。どうやら母からの強い要望によりこのオリジナルコースに編入が決まったみたいだ…。

(母上、俺がララと一緒に居たい為にズルすると思っているな…)---前科があるので信用はない。

だが俺も竜人だ、体力・知力ともに申し分ないのでこんなコース全く負担にはなってなかった。内容的にはこんな簡単でいいんですかという位だった。

だが、非常に大きな問題に気付いてしまった!

(ララを堪能する時間がないーーー!)

ララは虚弱体質なので体力がない、なので夜は7時には夢の中、朝6時はまだ夢の中…。
俺はどんなに頑張っても起きているララに会えないことに気付いてしまった。


竜王との挨拶を終えてララと別れた後、学園に挨拶に行くと同時に授業に参加させられた。授業終了は夜7時で急いでララの部屋に行ったが、もうすでにララは寝ていた。ララの専属侍女が『先ほどまで起きていたのですが残念ですね。寝顔をご覧になりますか』と言ってくれたので、遠慮なく俺の可愛い天使の寝顔を1時間ほど堪能してから自分の部屋に戻った。

(寝顔だけでは満足できん。駄目もとで朝一にララに会いに行こう!もしかしたら俺に会いたくて明日はララも朝早くに目覚めているかも!)

ララ不足のまま俺は就寝した。だが熟睡は出来なかった、やはり天使がいないと駄目だ…。
朝早すぎるとララは起きていないのは分かっているが、授業が朝6時から始まる為遅くとも5時半には王宮を出発しないと学園の始業に間に合わない。俺は朝5時にララの部屋に来て寝ているララが起きるのを静かに待っていた、…やはり起きなかった。

(ララ、兄と会えなくて淋しくないのか…)

もうララが起きるまで待って学園は遅刻して行こうと考えていたら、なんと昨日友達になった犬獣人のタロイがララの部屋まで俺を迎えに来た!

「ごめんね、マオ。君のお母さんと僕のお母さんが友達でなんか手紙が来てたんだ。その手紙で、マオが妹にへばり付いて学園に行かないだろうから強制的に連れて行くようにと頼まれているんだ。なんか僕、王宮勤め人しか貰えない通行証まで渡されちゃって断れなくて。ごめん、一緒に行ってくれる?」
「………こっちこそごめん。うちの母が迷惑かけて…」

俺には選択肢などなかった。せっかく出来た友達に迷惑など掛けられない。

(母上、俺の行動を読んで先回りしていたのですね…)


タロイと一緒に登校した俺は脱走もせずに真面目に授業を受けていた。
だが不味い事に三時間目の数学教師はピンクの豚獣人だった、ピンク=ララルーアに見えてしまった俺は全力で教師に抱き着いて頬をスリスリしてしまった。この教師が女性だったらまだ良かったのだが、生憎と小太りの男性教師だったので周りからドン引かれてしまった。その後もクラスメイトは優しいが、なんか見えない壁を感じている…。


学園生活まだ二日目、すでにララ不足で俺はおかしくなっている。

(ララー。頼むから兄の為に早起きしてくれーー!)

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