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番外編
夫婦というもの⑲
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冴えた青い瞳で広間を睥睨する上司を横目に、第一騎士団副団長のゴドウィンはこっそり溜息をついた。二年に一度の催しである騎士団対抗の大規模演習が無事に終わり、交流会という名の打ち上げの席でのことだ。
演習で優勝したのは、下馬評どおり第一騎士団だった。しかし、周囲の予想とは違い、余裕のある勝利だった訳ではない。
元々勝ちに然程こだわりのないウィリアムは、この演習を実戦形式の育成の場と捉えていた。ギルニアとの戦に帯同できなかった若手団員の実力を、この機に底上げしようとの狙いからだ。
最大限の成長を見込める布陣で臨め。ウィリアムの指示により人選に入ったゴドウィンだったが、存外これが難しい。上司にこだわりがなくとも、自分を含めた第一の団員たちが目指すものは勝利のみ。ましてやウィリアムの魔力低下が傍目にも明らかな今、この類まれな指揮官の名誉のためにも負けるわけにはいかなかった。
そうこうするうちに、第三騎士団の兼務だのゴドウィンへの権限委譲だのと慌ただしくなり、怒涛の忙しさに見舞われる。仕事に忙殺されながら改めて感じるのは、最強集団を束ねるウィリアムの優秀さだ。
下位貴族の子息で、真面目さに加え魔力の強さから第一騎士団に入団できただけの自分に、騎士団の偶像の代わりなど出来るはずもない。せめて足手まといにはならないようと言い聞かせ、自分なりに人選した名簿を差し出すと、一瞥するなり質問された。俺の指示を把握しての人選かと。
ひやりとして名簿を回収しその場を辞した。ウィリアムの指示である「最大限の成長を」という言葉について考える。「成長」であって「勝てる」ではないということだ。
ギルニアに行かず残っていた団員の、実力順に上から並べるだけでは駄目なことくらいは分かっていた。手元の名簿を見れば、同等の力を持つものたちが並んでいる。
戦いの際、極端な能力差が相手に分かればそこを狙い撃ちされる。自分が選んだ構成なら、たとえ実際の戦であってもこれに一人指導的立場の者を加えれば遜色なく……。そう思ってハッとする。
ウィリアムは言ったではないか。「最大限の成長を見込める布陣」と。頭では理解したつもりだったが、まだ「勝ち」を主眼とした人選になっていた。
ゴドウィンはようやく本当の意味でウィリアムの意図を理解した。もちろん、自分の能力の及ぶ範囲でという注釈付きで。
第一騎士団の中で強化したい部分は何か。まず課題を洗い出し可視化する。その上で団員の個としての課題を考えた。
魔力は強いが感覚重視で戦法など論理知識が劣る者。魔力はそこそこあるのに押し出しが弱く咄嗟の判断に迷う者。体術剣術に優れ魔力もあるが自信過剰で慎重さに欠ける者。
能力の凸凹を組み合わせ、互いの良さを学び吸収できるように。そう思い机の前で悩んでいると、書きかけの名簿をヒョイとのぞいたルークが「これじゃ絶対に負ける」と言い出した。
「何の根拠があってそんなことを言う」
俺の苦労も知らないで。カッとして思わず言い返した。するとルークがそれにかぶせて問い返した。
「じゃあ聞くが、お前はこれで勝てると本気で考えているのか」
返事に詰まって押し黙った。今のままでも簡単に負けはしないだろう。しかし、絶対に勝てるとも言い切れない。副団長補佐でついたルークの言葉は、団員全員の総意だ。ウィリアムがなんと言おうと負けることは許されない。ゴドウィンの胃がキリキリと痛んだ。
言い負かしたことで気が済んだのか、訓練に戻るルークの後ろ姿を恨めしい思いで見送る。どちらかというと細かいところまで理詰めで考えなければ気が済まないゴドウィンとは違い、ルークは直感で動くタイプだ。だが、それで失敗したところを見たことがない。
正反対の性格故に互いを避けていたと分かっているだけに、このタイミングでなぜウィリアムがルークを補佐につけたのか納得がいかなかった。ついに我慢ならなくなり、無礼を承知でウィリアムに直談判する。そのときに言われた言葉で、ゴドウィンは雷に打たれたような衝撃を受けた。
「――団員の何を見て人選した?」
ウィリアムは差し出された名簿に視線を向けることさえせず、ゴドウィンの平凡な茶色の瞳を見据えた。
「何……、と。それは、個々人の能力です。得意不得意を上手く組み合わせることで、互いの弱点に気付きそれを補おうと」
「ゴドウィン、能力を持つのは人だ。人を見ずして組織を運営することはできない」
「人………。私が人を見ていないと、そうおっしゃるのですか」
「いいか。人はパズルではない。突出しているところと欠けているところを当てはめるだけでは上手くいかん。人と人のつながりや相互に作用する力を侮るな。誰が誰に対して、どれだけの影響力を発揮している?それをよく考えてみろ」
「影響力………」
「個の能力は云わば道具に過ぎん。その道具は、人間を構成するごく一部分だ。道具に囚われるな。視野を広く持ち、道具ではなく『人』をいかに活用するかを考えろ」
横っ面を張られた気がした。ゴドウィンの目に理解が宿るのを見てウィリアムは軽く頷く。
「影響力……!そうか、そうか……!主要人物を押さえるんだ!全体に対して今回の演習の意義と目的を説き方向性を定め、それとは別にキーマンを味方に引き入れ協力してもらう。ただし、必ずしも本人を口説く必要はない。それは……」
「キーマンに対して影響を与える者を押さえることで、結果的に波及効果をもたらすからだ」
演習に参加する者だけが成長したって駄目だ。上手くすれば、選に漏れた団員たちも自らを鼓舞し訓練に取り組み、更にギルニアで戦ったベテラン団員までも巻き込んで、第一騎士団全員が飛躍的に伸びるきっかけになるのではないか…………?
忙しく頭を働かせるゴドウィンの肩をウィリアムはポンと叩いた。
「ルークの力を借りてみろ。部下をこき使ってこそ一人前の上司だぞ」
言いおいて部屋を出るウィリアムに、ゴドウィンは平伏したい思いだった。ルークは人の心の機微に敏く、かつ団員たちの微妙な力関係にも詳しい。
全くの余談だが、マメで相手の求めることをすぐに察するルークと深い仲になった女性は数知れず。しかし、それで揉めたのを見たことがない。それどころか過去に関係のあった女性同士も交流があり、歴代の彼女と一緒に飲みに行くというのを信じられない思いで聞いた時のことが蘇った。
ゴドウィンはすぐさま騎士団宿舎のルークの部屋を訪ねた。そして必死で説明する。団の持つ課題。団員個人の資質。それらを今回の演習でどう克服し飛躍に繫げるか。そして何より団長のためにも絶対に勝ちたいのだと。
自分の言葉で想いを伝えるゴドウィンに、最初は驚いていたルークも感じるところがあったのだろう。黙って最後まで話を聞いて、分かった、とだけ言った。
それからは早かった。二人で話し合い決めた出場者へ、選んだ理由と今後の成長を期待する動機づけをゴドウィンが、そして選外の団員に向けては、第一騎士団全員が一丸とならねば勝利はつかめず、そのために一人ひとりができることを自ら考え行動することが不可欠だとルークが伝えた。
細かい行き違いや意見の相違はあったものの、理を説くのはゴドウィン、相手の気持ちを察し不満を解消するのがルークと、それぞれが違う役割で団をまとめ、そして勝負の日を迎える。
もはや自分に出来ることは何もない。激励の言葉すら必要なかった。ゴドウィンは出場者の手を握り、背を叩いて送り出す。
見学席から見下ろした先の若い団員たち。キリリとしたその顔に、一回り逞しくなったその体に、彼らと彼らを鍛え導いてくれた団員たちの姿が透けて見えるようでじんとした。ここまできたら勝たせてやりたい。自分のためでもウィリアムのためでもなく、彼ら自身のために。
結果は優勝。何度も危ういことがあったし、手に汗を握ることもあった。だが勝ったのだ。目の奧が痛み喉に熱いものがこみ上げる。懸命にこらえていると、ウィリアムがいつもの無表情で「よくやった」と言ってくれた。
号泣するゴドウィンを見てもらい泣きするルークと、それを揶揄う年かさの団員たち。その夜は皆に小突かれ髪をグシャグシャにされながら注がれる酒を飲み続けた。真面目が代名詞の自分がこんな風に受け入れられるとは。楽しく、嬉しいあまりに痛飲し、翌日見舞われた酷い二日酔いも今では良い経験だと思える。
「優勝か。流石だな、キングズレー第一騎士団長」
グラスを片手に近寄ってきたのは将軍のウィルソンだ。騎士団を統括する将軍自ら足を運んでの祝いの言葉に緊張するゴドウィンだったが、ウィリアムは平然としている。
「いえ、私は何も。今回はここにいるゴドウィンを筆頭に、団員たちが協力してよくやってくれましたので」
さりげなく副団長の手柄として主張してくれた。誇らしさが滲む顔を隠すように頭を下げる。やり切った充実感が蘇り、それとともに感謝の思いが溢れ出た。ルークに。団員たちに。そして何よりもこの機会を与えてくれたキングズレー騎士団長に。
髪色が何でも変わらず、騎士団長は自分にとって輝ける星そのものだ。目標であり指針である団長には尊崇の念しかない。どこまでもついていきます。ゴドウィンは何度も抱いたその気持ちをまた新たにしたのだが――。
「ときにキングズレー。奥方はどうした」
恐れていた質問に、ウィリアムよりもゴドウィンの方が動揺して大きく肩を揺らした。
「………………所用のため、遅れてまいります」
「ほう。成程、成程。今日はパートナー同伴の交流会だからな。奥方たちもここで人脈を広げ夫の仕事を補佐しようと張り切っている。そら、うちの妻もあそこに」
「交流会での、そういった役割については十分承知しております。………妻も後ほど、必ず」
「そうか。ゴドウィン、お前に同伴できる相手はいないのか。遠慮せず連れてきても良かったのだぞ。何を隠そうこの俺も、交流会の同伴を口実に結婚の申し込みをしたクチでな」
「い、いえっ、私は不調法者にございますれば、このような席に同伴を頼めるような付き合いの女性など」
「そう固くなるな。見ろ、ルークなどはあちらでよろしくやっているようではないか」
促され見れば、明らかに自分が同伴したのとは違う令嬢たちに囲まれて、ちゃっかり楽しむルークの姿があった。あいつめ。今では同僚として尊敬しあっているものの、ああいう調子のいいところは正直どうかと思ってしまう。
「まあいい。キングズレーも奥方とうまくいっているのだな。今度こそ愛想を尽かされて、仕事に影響が出ないようにしてくれよ」
ハハハと笑い、特大の爆弾を落として将軍は去っていった。ゴドウィンのすぐ横から漂ってくるひんやりとした空気に背筋が凍る。
一時期、ウィリアムが挙動不審となり、常ならぬ行動をしていたことは騎士団関係者なら誰もが知る事実だ。
当初、第一騎士団内部では、ひそかに行われた第五騎士団長ブライアン・マッコーデルとの試合で負った怪我が原因ではと噂されたが、どうやら愛妻との――以前からその溺愛ぶりが広く知れ渡っていた――喧嘩で、妻が家を出てしまったことが原因らしいと分かったのは、ウィリアムの父である元帥の漏らした「嫁が城に戻っている」という一言から。
ただでさえ注目される存在なのだ。容姿、能力、家柄全てにおいて完璧なウィリアムの傷心ぶりは、その原因とともに瞬く間に広まった。
執務室に入ったゴドウィンにも気づかず、虚空を見つめ魂を飛ばしているウィリアムなど、実際に自分で目にしなければあり得ないと一笑に付しただろう。それだけではない。食事はおろか身なりを整えることも怠るようになり、公爵邸にも戻らず執務室に籠っているらしい。
「昨夜執務室に入って灯りをつけたら、微動だにしない団長がいて死ぬほどびっくりしてさ~」と笑い話の態でオスカーが言っていた。暗がりの中で目を見開きじっとしている団長………想像しただけで怖すぎる。
そんなウィリアムをハラハラしながら見守っていたゴドウィンたちだったが、ある日突然その心配は不要になった。それはもう分かりやすく、劇的に。
「そこ、攻められたときに魔力を出しそうになっているぞ!魔道具で制御しろ!」
「いや、道具を使うとそれに頼ってしまうから、外してみたんだ」
「む……そうか。それもそうだな」
「すまん。事前に共有しておくべきだった」
「いや、俺の方こそ……………」
音も無く開かれた演習場の扉から現れたのは、艶のある銀髪をなびかせ、颯爽とマントを翻すウィリアムだった。前日までのやつれ、くすんだ様子は一変し、キラキラと銀粉をまぶしたような輝きを纏っている。
その場にいた全員から注視され、わずかに首を傾げて「邪魔をしてすまない。続けてくれ」というと、カツカツと靴音を響かせながら一点を目指し歩く。ウィリアムの動きに合わせその場の団員の視線が動き、行きついた先には一人のベテラン団員がいた。
まさか自分に用があるとは夢にも思っていなかったのだろう。「え?俺??」と狼狽する団員の前で立ち止まると、じっと、じぃぃぃぃーっとその顔を見つめる。
第一騎士団の団員だ。ウィリアムの厳しさも、敵を容赦なくなぎ倒す強い魔力のことも十分承知している。それでも、男だと分かっていてすら溜息しか出ないほど整った、しかも少しこけた頬が壮絶な色気を醸し出している顔で見つめられ、百戦錬磨の団員が耳まで赤くしたとき、ウィリアムが小さく呟いた。
「髭が…………」
ひげ????
その場にいた全員が心の中で叫んだ。
「ケリガン。お前、その髭をどうやって整えているんだ」
「は、あ?ひ、髭、ですか?」
何故かケリガンはゴドウィンに視線で必死に助けを求めている。いやまて。俺だって状況を把握できていないんだ。なす術もないゴドウィンを他所にウィリアムはケリガンの髭にしか興味を示さず、あまつさえ頬に手を伸ばし触れようとしている。
「ただ生やしただけではだらしないだろう。何か手入れをしているのか」
「ヒッ!あ、あの、その、て、手入れなど」
「見つけた!もーっ団長!どうしてこんなところにいるんですか!使い物にならなかった間の仕事、今日こそは片付けてもらいますよ」
「ちょっとくらいいいだろう。今、ケリガンに髭の手入れを」
「はあ?何訳の分かんないこと言ってるんですか。どうせ王女殿下に『無精ひげも素敵』とか言われてその気になってるだけでしょ?みんな訓練で忙しいんだから邪魔しちゃ駄目ですよ」
オスカーに連れられていったウィリアムを全員で見送り、その後なぜかまた全員がゴドウィンを見る。ゴクリと唾をのんだゴドウィンは、コホンと咳をしてから言った。
「…………キングズレー団長がお元気になられたようで、よかった」
一瞬の静寂のあと、ざわめきが戻った。続けるぞとルークが言い、皆がそれに従う。先ほどまでより訓練に勢いがあるのは気のせいではなかろう。やはり団長の覇気の有無は団員の士気に大きな影響を及ぼす。ゴドウィンは詰めていた息を吐き、公爵邸に戻ってくれたのだろう王女――もとい、団長夫人に感謝を捧げたのだった。
演習で優勝したのは、下馬評どおり第一騎士団だった。しかし、周囲の予想とは違い、余裕のある勝利だった訳ではない。
元々勝ちに然程こだわりのないウィリアムは、この演習を実戦形式の育成の場と捉えていた。ギルニアとの戦に帯同できなかった若手団員の実力を、この機に底上げしようとの狙いからだ。
最大限の成長を見込める布陣で臨め。ウィリアムの指示により人選に入ったゴドウィンだったが、存外これが難しい。上司にこだわりがなくとも、自分を含めた第一の団員たちが目指すものは勝利のみ。ましてやウィリアムの魔力低下が傍目にも明らかな今、この類まれな指揮官の名誉のためにも負けるわけにはいかなかった。
そうこうするうちに、第三騎士団の兼務だのゴドウィンへの権限委譲だのと慌ただしくなり、怒涛の忙しさに見舞われる。仕事に忙殺されながら改めて感じるのは、最強集団を束ねるウィリアムの優秀さだ。
下位貴族の子息で、真面目さに加え魔力の強さから第一騎士団に入団できただけの自分に、騎士団の偶像の代わりなど出来るはずもない。せめて足手まといにはならないようと言い聞かせ、自分なりに人選した名簿を差し出すと、一瞥するなり質問された。俺の指示を把握しての人選かと。
ひやりとして名簿を回収しその場を辞した。ウィリアムの指示である「最大限の成長を」という言葉について考える。「成長」であって「勝てる」ではないということだ。
ギルニアに行かず残っていた団員の、実力順に上から並べるだけでは駄目なことくらいは分かっていた。手元の名簿を見れば、同等の力を持つものたちが並んでいる。
戦いの際、極端な能力差が相手に分かればそこを狙い撃ちされる。自分が選んだ構成なら、たとえ実際の戦であってもこれに一人指導的立場の者を加えれば遜色なく……。そう思ってハッとする。
ウィリアムは言ったではないか。「最大限の成長を見込める布陣」と。頭では理解したつもりだったが、まだ「勝ち」を主眼とした人選になっていた。
ゴドウィンはようやく本当の意味でウィリアムの意図を理解した。もちろん、自分の能力の及ぶ範囲でという注釈付きで。
第一騎士団の中で強化したい部分は何か。まず課題を洗い出し可視化する。その上で団員の個としての課題を考えた。
魔力は強いが感覚重視で戦法など論理知識が劣る者。魔力はそこそこあるのに押し出しが弱く咄嗟の判断に迷う者。体術剣術に優れ魔力もあるが自信過剰で慎重さに欠ける者。
能力の凸凹を組み合わせ、互いの良さを学び吸収できるように。そう思い机の前で悩んでいると、書きかけの名簿をヒョイとのぞいたルークが「これじゃ絶対に負ける」と言い出した。
「何の根拠があってそんなことを言う」
俺の苦労も知らないで。カッとして思わず言い返した。するとルークがそれにかぶせて問い返した。
「じゃあ聞くが、お前はこれで勝てると本気で考えているのか」
返事に詰まって押し黙った。今のままでも簡単に負けはしないだろう。しかし、絶対に勝てるとも言い切れない。副団長補佐でついたルークの言葉は、団員全員の総意だ。ウィリアムがなんと言おうと負けることは許されない。ゴドウィンの胃がキリキリと痛んだ。
言い負かしたことで気が済んだのか、訓練に戻るルークの後ろ姿を恨めしい思いで見送る。どちらかというと細かいところまで理詰めで考えなければ気が済まないゴドウィンとは違い、ルークは直感で動くタイプだ。だが、それで失敗したところを見たことがない。
正反対の性格故に互いを避けていたと分かっているだけに、このタイミングでなぜウィリアムがルークを補佐につけたのか納得がいかなかった。ついに我慢ならなくなり、無礼を承知でウィリアムに直談判する。そのときに言われた言葉で、ゴドウィンは雷に打たれたような衝撃を受けた。
「――団員の何を見て人選した?」
ウィリアムは差し出された名簿に視線を向けることさえせず、ゴドウィンの平凡な茶色の瞳を見据えた。
「何……、と。それは、個々人の能力です。得意不得意を上手く組み合わせることで、互いの弱点に気付きそれを補おうと」
「ゴドウィン、能力を持つのは人だ。人を見ずして組織を運営することはできない」
「人………。私が人を見ていないと、そうおっしゃるのですか」
「いいか。人はパズルではない。突出しているところと欠けているところを当てはめるだけでは上手くいかん。人と人のつながりや相互に作用する力を侮るな。誰が誰に対して、どれだけの影響力を発揮している?それをよく考えてみろ」
「影響力………」
「個の能力は云わば道具に過ぎん。その道具は、人間を構成するごく一部分だ。道具に囚われるな。視野を広く持ち、道具ではなく『人』をいかに活用するかを考えろ」
横っ面を張られた気がした。ゴドウィンの目に理解が宿るのを見てウィリアムは軽く頷く。
「影響力……!そうか、そうか……!主要人物を押さえるんだ!全体に対して今回の演習の意義と目的を説き方向性を定め、それとは別にキーマンを味方に引き入れ協力してもらう。ただし、必ずしも本人を口説く必要はない。それは……」
「キーマンに対して影響を与える者を押さえることで、結果的に波及効果をもたらすからだ」
演習に参加する者だけが成長したって駄目だ。上手くすれば、選に漏れた団員たちも自らを鼓舞し訓練に取り組み、更にギルニアで戦ったベテラン団員までも巻き込んで、第一騎士団全員が飛躍的に伸びるきっかけになるのではないか…………?
忙しく頭を働かせるゴドウィンの肩をウィリアムはポンと叩いた。
「ルークの力を借りてみろ。部下をこき使ってこそ一人前の上司だぞ」
言いおいて部屋を出るウィリアムに、ゴドウィンは平伏したい思いだった。ルークは人の心の機微に敏く、かつ団員たちの微妙な力関係にも詳しい。
全くの余談だが、マメで相手の求めることをすぐに察するルークと深い仲になった女性は数知れず。しかし、それで揉めたのを見たことがない。それどころか過去に関係のあった女性同士も交流があり、歴代の彼女と一緒に飲みに行くというのを信じられない思いで聞いた時のことが蘇った。
ゴドウィンはすぐさま騎士団宿舎のルークの部屋を訪ねた。そして必死で説明する。団の持つ課題。団員個人の資質。それらを今回の演習でどう克服し飛躍に繫げるか。そして何より団長のためにも絶対に勝ちたいのだと。
自分の言葉で想いを伝えるゴドウィンに、最初は驚いていたルークも感じるところがあったのだろう。黙って最後まで話を聞いて、分かった、とだけ言った。
それからは早かった。二人で話し合い決めた出場者へ、選んだ理由と今後の成長を期待する動機づけをゴドウィンが、そして選外の団員に向けては、第一騎士団全員が一丸とならねば勝利はつかめず、そのために一人ひとりができることを自ら考え行動することが不可欠だとルークが伝えた。
細かい行き違いや意見の相違はあったものの、理を説くのはゴドウィン、相手の気持ちを察し不満を解消するのがルークと、それぞれが違う役割で団をまとめ、そして勝負の日を迎える。
もはや自分に出来ることは何もない。激励の言葉すら必要なかった。ゴドウィンは出場者の手を握り、背を叩いて送り出す。
見学席から見下ろした先の若い団員たち。キリリとしたその顔に、一回り逞しくなったその体に、彼らと彼らを鍛え導いてくれた団員たちの姿が透けて見えるようでじんとした。ここまできたら勝たせてやりたい。自分のためでもウィリアムのためでもなく、彼ら自身のために。
結果は優勝。何度も危ういことがあったし、手に汗を握ることもあった。だが勝ったのだ。目の奧が痛み喉に熱いものがこみ上げる。懸命にこらえていると、ウィリアムがいつもの無表情で「よくやった」と言ってくれた。
号泣するゴドウィンを見てもらい泣きするルークと、それを揶揄う年かさの団員たち。その夜は皆に小突かれ髪をグシャグシャにされながら注がれる酒を飲み続けた。真面目が代名詞の自分がこんな風に受け入れられるとは。楽しく、嬉しいあまりに痛飲し、翌日見舞われた酷い二日酔いも今では良い経験だと思える。
「優勝か。流石だな、キングズレー第一騎士団長」
グラスを片手に近寄ってきたのは将軍のウィルソンだ。騎士団を統括する将軍自ら足を運んでの祝いの言葉に緊張するゴドウィンだったが、ウィリアムは平然としている。
「いえ、私は何も。今回はここにいるゴドウィンを筆頭に、団員たちが協力してよくやってくれましたので」
さりげなく副団長の手柄として主張してくれた。誇らしさが滲む顔を隠すように頭を下げる。やり切った充実感が蘇り、それとともに感謝の思いが溢れ出た。ルークに。団員たちに。そして何よりもこの機会を与えてくれたキングズレー騎士団長に。
髪色が何でも変わらず、騎士団長は自分にとって輝ける星そのものだ。目標であり指針である団長には尊崇の念しかない。どこまでもついていきます。ゴドウィンは何度も抱いたその気持ちをまた新たにしたのだが――。
「ときにキングズレー。奥方はどうした」
恐れていた質問に、ウィリアムよりもゴドウィンの方が動揺して大きく肩を揺らした。
「………………所用のため、遅れてまいります」
「ほう。成程、成程。今日はパートナー同伴の交流会だからな。奥方たちもここで人脈を広げ夫の仕事を補佐しようと張り切っている。そら、うちの妻もあそこに」
「交流会での、そういった役割については十分承知しております。………妻も後ほど、必ず」
「そうか。ゴドウィン、お前に同伴できる相手はいないのか。遠慮せず連れてきても良かったのだぞ。何を隠そうこの俺も、交流会の同伴を口実に結婚の申し込みをしたクチでな」
「い、いえっ、私は不調法者にございますれば、このような席に同伴を頼めるような付き合いの女性など」
「そう固くなるな。見ろ、ルークなどはあちらでよろしくやっているようではないか」
促され見れば、明らかに自分が同伴したのとは違う令嬢たちに囲まれて、ちゃっかり楽しむルークの姿があった。あいつめ。今では同僚として尊敬しあっているものの、ああいう調子のいいところは正直どうかと思ってしまう。
「まあいい。キングズレーも奥方とうまくいっているのだな。今度こそ愛想を尽かされて、仕事に影響が出ないようにしてくれよ」
ハハハと笑い、特大の爆弾を落として将軍は去っていった。ゴドウィンのすぐ横から漂ってくるひんやりとした空気に背筋が凍る。
一時期、ウィリアムが挙動不審となり、常ならぬ行動をしていたことは騎士団関係者なら誰もが知る事実だ。
当初、第一騎士団内部では、ひそかに行われた第五騎士団長ブライアン・マッコーデルとの試合で負った怪我が原因ではと噂されたが、どうやら愛妻との――以前からその溺愛ぶりが広く知れ渡っていた――喧嘩で、妻が家を出てしまったことが原因らしいと分かったのは、ウィリアムの父である元帥の漏らした「嫁が城に戻っている」という一言から。
ただでさえ注目される存在なのだ。容姿、能力、家柄全てにおいて完璧なウィリアムの傷心ぶりは、その原因とともに瞬く間に広まった。
執務室に入ったゴドウィンにも気づかず、虚空を見つめ魂を飛ばしているウィリアムなど、実際に自分で目にしなければあり得ないと一笑に付しただろう。それだけではない。食事はおろか身なりを整えることも怠るようになり、公爵邸にも戻らず執務室に籠っているらしい。
「昨夜執務室に入って灯りをつけたら、微動だにしない団長がいて死ぬほどびっくりしてさ~」と笑い話の態でオスカーが言っていた。暗がりの中で目を見開きじっとしている団長………想像しただけで怖すぎる。
そんなウィリアムをハラハラしながら見守っていたゴドウィンたちだったが、ある日突然その心配は不要になった。それはもう分かりやすく、劇的に。
「そこ、攻められたときに魔力を出しそうになっているぞ!魔道具で制御しろ!」
「いや、道具を使うとそれに頼ってしまうから、外してみたんだ」
「む……そうか。それもそうだな」
「すまん。事前に共有しておくべきだった」
「いや、俺の方こそ……………」
音も無く開かれた演習場の扉から現れたのは、艶のある銀髪をなびかせ、颯爽とマントを翻すウィリアムだった。前日までのやつれ、くすんだ様子は一変し、キラキラと銀粉をまぶしたような輝きを纏っている。
その場にいた全員から注視され、わずかに首を傾げて「邪魔をしてすまない。続けてくれ」というと、カツカツと靴音を響かせながら一点を目指し歩く。ウィリアムの動きに合わせその場の団員の視線が動き、行きついた先には一人のベテラン団員がいた。
まさか自分に用があるとは夢にも思っていなかったのだろう。「え?俺??」と狼狽する団員の前で立ち止まると、じっと、じぃぃぃぃーっとその顔を見つめる。
第一騎士団の団員だ。ウィリアムの厳しさも、敵を容赦なくなぎ倒す強い魔力のことも十分承知している。それでも、男だと分かっていてすら溜息しか出ないほど整った、しかも少しこけた頬が壮絶な色気を醸し出している顔で見つめられ、百戦錬磨の団員が耳まで赤くしたとき、ウィリアムが小さく呟いた。
「髭が…………」
ひげ????
その場にいた全員が心の中で叫んだ。
「ケリガン。お前、その髭をどうやって整えているんだ」
「は、あ?ひ、髭、ですか?」
何故かケリガンはゴドウィンに視線で必死に助けを求めている。いやまて。俺だって状況を把握できていないんだ。なす術もないゴドウィンを他所にウィリアムはケリガンの髭にしか興味を示さず、あまつさえ頬に手を伸ばし触れようとしている。
「ただ生やしただけではだらしないだろう。何か手入れをしているのか」
「ヒッ!あ、あの、その、て、手入れなど」
「見つけた!もーっ団長!どうしてこんなところにいるんですか!使い物にならなかった間の仕事、今日こそは片付けてもらいますよ」
「ちょっとくらいいいだろう。今、ケリガンに髭の手入れを」
「はあ?何訳の分かんないこと言ってるんですか。どうせ王女殿下に『無精ひげも素敵』とか言われてその気になってるだけでしょ?みんな訓練で忙しいんだから邪魔しちゃ駄目ですよ」
オスカーに連れられていったウィリアムを全員で見送り、その後なぜかまた全員がゴドウィンを見る。ゴクリと唾をのんだゴドウィンは、コホンと咳をしてから言った。
「…………キングズレー団長がお元気になられたようで、よかった」
一瞬の静寂のあと、ざわめきが戻った。続けるぞとルークが言い、皆がそれに従う。先ほどまでより訓練に勢いがあるのは気のせいではなかろう。やはり団長の覇気の有無は団員の士気に大きな影響を及ぼす。ゴドウィンは詰めていた息を吐き、公爵邸に戻ってくれたのだろう王女――もとい、団長夫人に感謝を捧げたのだった。
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だが、そんな日々が変わったのは父親が投資詐欺に引っ掛かり多額の借金を作ってきたことがきっかけだった。
――このままでは、アビゲイルの将来が危うい。
そう思った父はセレニアに「成金男爵家に嫁いで来い」と命じた。曰く、相手の男爵家は爵位が上の貴族とのつながりを求めていると。コネをつなぐ代わりに借金を肩代わりしてもらうと。
その結果、セレニアは新進気鋭の男爵家メイウェザー家の若き当主ジュードと結婚することになる。
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