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春秋花壇

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吾輩はなろう系である

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吾輩はなろう系である

吾輩は、なろう系の主人公である。いや、正確には「なろう系主人公」と呼ばれる存在ではなく、ただの一人の「物語の登場人物」である。しかし、どうも世間では私のような者が「なろう系」だと認識されているらしい。何を言っているのか、わからないだろう。少し詳しく説明しよう。

まず、この物語の舞台は一見、普通の現実世界のように見えるが、実際はどうやら異世界に近い。確かに、世界は普通で、ただの普通の大学生である私が、この「なろう系」の世界に巻き込まれているのだ。

あらかじめ言っておくが、私は特に「異世界転生」や「スキルアップ」など、そんなドラマチックな展開を求めていたわけではない。いや、むしろそんな大層な物語に巻き込まれることを望んでいたわけでもない。それでも、どうしてこうなったのか、気がつけば僕は異世界で英雄扱いされている。もっと言うと、周りの人々がどうやら私を「主人公」として扱っているのだ。

例えば、朝、目が覚めた時。目の前には、なんとも整った美しい顔立ちの女性が立っている。

「お目覚めですね、主人公様。」

う、うーん。何だか聞き覚えがあるセリフだ。この手のセリフは、確か「異世界転生」や「異世界召喚」に登場するヒロインが言いがちなセリフではないか。

「え、君、誰?」

心の中で「これがなろう系のセリフか」と思いながらも、私はできるだけ冷静を保つように努めた。突然現れた美しい女性に、心の中でドキドキしてはいけない。落ち着け、冷静になれ。だが、実際には思いっきり心が高鳴っていた。

「私の名はリリア。魔法の国から来た、あなたの護衛をさせていただく者です。」

護衛? ちょっと待ってくれ。君は何を言っているんだ。確かに、私はなんの変哲もない大学生だ。無敵のスキルを持っていたり、英雄的な資質があるわけでもない。しかし、リリアさんは、あたかも私が特別な人物であるかのように話している。

「あなた様には、運命の使命があるのです。」

ああ、来た。いわゆる「使命」。確かに、なろう系に登場する主人公は、だいたいこう言われるものだ。だが、私は一介の普通の人間だ。異世界に召喚されたわけでも、スキルを得たわけでもない。

「私はただの大学生だよ、リリアさん。」

だが、彼女は微笑んで言った。

「それでも、あなた様が選ばれたのです。」

その後、リリアに連れられて城に向かうことになった。おそらく、「城」というのは異世界での「典型的な舞台」なのだろう。やれやれ、と思いながらも、心の中では次第にワクワクしていた。

城に着いた途端、私を迎えたのは、何か強力な雰囲気を持つ人物だった。彼は、厳つい顔をしていて、私に向かってまっすぐに歩いてきた。

「お前が『救世主』か?」

ああ、また来た。定番のセリフだ。なろう系ではよくある、予告編的な台詞だと思った。

「いや、私はただの大学生ですけど…」

だが、彼は無視して言葉を続けた。

「お前には大いなる力が宿っていると言われている。だからこそ、俺たちはお前に力を貸さなければならない。」

力? 何だ、何か勘違いしているのではないか。私は普通の大学生で、特に魔法の使い手でも何でもない。

だが、なぜかその後の展開で、私は「英雄」として戦闘に巻き込まれていくことになった。まさに、なろう系の典型的な流れだ。目の前に現れるモンスター、突然現れる魔法の使い手、そしてどうしてか、私が立ち向かわなければならない運命に導かれていく。

あっという間に剣を握り、魔法を使うようになり、気がつけば仲間たちと共に冒険の旅をすることになっていた。周りのキャラクターたちは、みんな私を「主人公様」と呼び、私が持つ「特殊な力」に期待を寄せている。

正直、私は最初、何が起こっているのか全く理解できなかった。ただ、目の前で繰り広げられる数々の事件に巻き込まれながらも、少しずつその状況に適応していった。

だが、最も驚いたのは、物語が進むにつれて私が本当に「主人公」になってしまったことだ。

そう、この物語はまさに「なろう系」の典型的なものだ。そして、私はその中で徐々に変わっていった。最初はただの普通の大学生だった私が、いつの間にか仲間を引き連れ、敵を倒し、時には涙を流し、時には笑いながら冒険を続ける主人公となっていた。

そして、私は気づく。

「私は確かに、なろう系の主人公なんだ。」

そう思ったとき、ふと心の中である一言が浮かんだ。

「でも、これは本当に私の物語なのだろうか?」

それは、少しだけ胸が締め付けられるような、でも温かい気持ちを伴う問いだった。






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