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春秋花壇

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街路樹のために

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街路樹のために

真夏の午後、涼しい風がほとんど感じられない中、陽子はアパートのベランダから外を眺めていた。目の前の街路樹は、葉が乾いてくすんだ色に変わり、いかにも水分を求めているように見えた。

「また雨が降らないかな…」陽子はつぶやきながら、水道代の請求書を手に取った。最近の水道料金が思ったよりも高く、家計に響いている。

「このままだと街路樹が枯れてしまう。でも、わざわざ水を撒くのもなぁ…」彼女はため息をついた。節約のために毎日気を使っているのに、外の木にまで水を使うのはちょっと躊躇してしまう。

その夜、陽子はベランダに出て、再び街路樹を見つめた。街灯の下で、枯れかけた葉が風に揺れているのが見える。心の中で何かがチクリと痛んだ。

「どうしようかな…」彼女は再び悩んだ。

次の日、陽子は近所のスーパーに買い物に出かけた。レジで並んでいると、前の客が話しているのが耳に入った。

「最近、あの街路樹が枯れそうで心配だわ。誰かが水をあげればいいんだけど…」

その言葉を聞いて、陽子は心の中で決心が固まった。自分が少しだけでも水をあげれば、木が元気になるかもしれない。それが小さな努力であっても、何かの役に立つはずだ。

帰宅後、陽子はベランダからホースを引っ張り出し、慎重に水を撒き始めた。最初は少しだけと思っていたが、次第に夢中になり、木の根元に十分な水を注いだ。

「少しはこれで元気になれるかな…」陽子は汗を拭いながら、心の中で街路樹に話しかけた。

数日後、陽子は変化に気づいた。街路樹の葉が少しだけ緑を取り戻している。周囲の住人たちも気づき始め、彼女に感謝の言葉をかけるようになった。

「おかげで木が元気になってきたわね。本当にありがとう。」と、近所のおばさんが笑顔で話しかけてきた。

陽子はその言葉に照れくさくなりながらも、心の中で喜びを感じた。彼女の小さな行動が、街路樹を救う一助となったことが嬉しかったのだ。

その後、陽子は定期的に水を撒くようになった。水道代が気になることもあったが、街路樹が元気になり、周囲の風景が美しくなるのを見ていると、その心配は少しずつ薄れていった。

ある日の夕方、陽子はベランダでコーヒーを飲みながら、元気に茂る街路樹を見つめた。風に揺れる葉の音が心地よく、夏の終わりを感じさせた。

「やっぱり、やってよかった。」陽子はつぶやいた。

小さな行動でも、それが誰かの目に映り、何かの役に立つことがある。そのことを知った陽子は、これからも自分にできることを少しずつ続けていこうと心に誓った。街路樹のために、水道代の心配も乗り越えられるような気がした。








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