季節の織り糸

春秋花壇

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季節の織り糸 11月6日

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「季節の織り糸」

11月も中旬に差し掛かり、庭の楓が赤や黄色に染まり始めた。村の小さな手芸教室で織物の指導をしている美代子は、この季節になると心が少し弾む。織物の柄に秋の紅葉や冬の雪景色を取り入れ、四季を織り込むのが好きだった。

教室の生徒たちは皆年配で、かつての同級生や隣の集落の顔なじみばかりだった。村の中でも一際仲が良いグループで、今日も集まって和気あいあいと作業をしていた。

「美代子さん、今年はどんな織り柄にするの?」と、白髪の真由美が尋ねた。
「そうね、今年は秋の紅葉を取り入れてみようと思ってるの。あとは柿の実をアクセントに…」

その言葉に、教室はほっと温かな笑いに包まれた。村の中でも秋は特別な意味を持っていた。四季折々の美しさが訪れる山間の土地で、秋の訪れは収穫の喜びと冬に備える厳しさを思い出させる。

美代子たちは毎年、この季節の終わりに教室で「季節の織り糸」と題した展示会を開いていた。秋が終わる頃、村の人々が集まり、みんなが織った作品を眺めるのだ。今年も間もなくその時期がやって来る。

展示会の前日、美代子は朝早くから最後の準備をしていた。ふと、幼いころに母が使っていた古い織り機を思い出し、手で撫でた。母もまた、季節の移り変わりを織りに込め、村の秋祭りや集まりでよく披露していた。美代子にとって織りは、季節の記憶や家族とのつながり、村の豊かな四季を映すものだった。

そんなことを考えていると、遠くから足音が聞こえてきた。顔を上げると、昔からの友人であり、手芸仲間の恵が小さなバスケットを持ってやってきた。

「美代子さん、今日は寒いわね。でも、これ持ってきたの。ほら、自然薯!」と、恵は嬉しそうに土で覆われた太い自然薯を見せた。

「まあ、すごい立派ね。ありがとう、展示会のあとにみんなでいただきましょうか」と美代子は笑顔を浮かべた。

展示会の準備も終わり、夜の静寂が村を包み込むころ、美代子は少しだけ夜道を散歩した。道沿いの柿の木は、たわわに実った柿の実が枝に残っている。村の伝統的な景色を楽しみながら歩いていると、心にある思いが浮かび上がった。

「季節の織り糸」、それは村の暮らしそのものだった。過去から受け継いだこの文化を、自分たちがどこまで守り続けていけるのか。この土地で歳を重ね、織りを通して四季の記憶をつないでいけることが、今の自分にとっての誇りだった。村の人々がそれを喜んでくれる限り、これからも心を込めて織り続けようと美代子は思った。

翌日、展示会には村の人々が集まり、美代子と仲間たちが織り上げた色とりどりの作品を楽しんだ。赤や黄、冬の白を取り入れた織り柄が並び、村人たちは四季を再び感じながら、織物の美しさに見入っていた。

展示会が終わり、夕暮れの中でお茶を飲みながら語り合う仲間たちの姿に、美代子はこの村のつながりの大切さを改めて噛みしめた。そして心の中で「また来年も、この美しい季節を織りに込めよう」とそっと誓った。








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