季節の織り糸

春秋花壇

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霧中の告白 10月25日

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霧中の告白

10月25日、霧がかかる朝、澪(みお)は近くの森へと向かった。空気は爽やかで冷たく、かすかな土の香りが漂っている。足元には栗やどんぐりがぽつぽつと転がり、森の中はまるで自然の宝石箱のようだ。

この森へ来たのは、澪が子どもの頃から変わらない習慣だった。秋の始まりを感じるため、毎年こうして霧が立ち込める中を歩きながら、木の実や季節の変化を観察するのだ。今年もまた、そんな静かな一日を迎えるはずだったが、森の奥から聞こえる小さな音に、彼女は足を止めた。

「あれ、澪ちゃん?」

声の主は高校の同級生だった颯人(はやと)だった。彼もまた、秋の朝に散歩するのが好きだと話していたのを、澪は思い出した。出会った頃から好意を持っていたが、二人はそれ以上の関係にはなれずにいた。澪は少し微笑み、颯人の隣に並んだ。

「颯人もここに来てたんだね。秋の森は静かでいいよね」

二人は言葉を交わしながら、霧が薄くなっていく森の奥へと進んでいった。途中、新しい松の実が目に入り、颯人は小さく笑った。「これ、澪ちゃんに似合いそうだ」と言って、手のひらに載せて渡してくれた。その優しい仕草に澪の胸は少し高鳴り、彼に気づかれないように静かにお礼を言った。

ふと、二人は古びた沼のほとりに足を止めた。秋の沼は静かで、波一つ立たずに鏡のように辺りの風景を映している。澪は少し離れた場所に、小さな蜉蝣(かげろう)が飛んでいるのを見つけた。「あの蜉蝣、なんだか儚いね」と呟くと、颯人も視線を向け、「うん、秋になるといろんな生命が終わりを迎えるけど、それもまた美しい」と優しく答えた。

霧が晴れ、冷たい朝の光が射し込むと、近くの木犀(もくせい)がほのかに香り出した。澪はその香りを感じながら、幼い頃の記憶が蘇るのを感じていた。颯人の隣で感じる秋のひとときが、どこか懐かしく、それでいて新しいものに思えてならなかった。

やがて道を進んでいると、澪は合歓(ねむ)の木に実がついているのを見つけた。颯人がそれに気づき、彼女に向かって「合歓の実は、昔から縁を結ぶ象徴とも言われているんだよ」と、まるで何かを含むような笑みを浮かべて言った。

二人はそんな言葉のやりとりを楽しみながら歩き続け、やがて富有柿(ふゆうがき)の木にたどり着いた。澪が無意識に手を伸ばそうとしたとき、颯人がさりげなく彼女の手に触れた。その一瞬の温もりに、澪は心の奥がざわめくのを感じたが、颯人は何事もなかったかのように微笑んでいた。

二人が別れの道に差し掛かる頃、澪は振り返って「今日は楽しかったね」と微笑んだ。颯人も同じように微笑み返し、「また一緒に来よう」と言ってくれた。その言葉が心に響き、澪は彼に背を向けて歩き出しながら、いつの日か二人の関係が少しずつ変わっていくことを願った。

秋の爽やかな風が二人の背中を押すように吹き抜け、澪はこの日をいつまでも忘れないだろうと感じていた。


10月25日

爽やか



木の実



どんぐり



新松子

薯 蕷

秋の沼

くさびら

木 犀

合歓の実

富有柿

蜉 蝣

菊人形

雁渡し



秋 爽
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