ギリシャ神話

創作

創作ギリシャ神話: マッチ売りの少女

創作ギリシャ神話: マッチ売りの少女

いつだって女の子はお姫様になれるのよ

冬の夜、薄暗く冷たい街角に一人の少女が立っていた。彼女の名前はエウリディケ。寒さに震えながら、マッチの箱を握りしめていた。街は静まり返り、足音ひとつも聞こえない。空気は氷のように冷たく、凍りついた道路には、彼女の足音だけが響く。けれど、誰も彼女を見てはくれなかった。

「おねがい…ちょっとだけ…」

小さな声でつぶやきながら、エウリディケは手に持つマッチを一つずつ擦った。ぽっと灯る火の光は、すぐに消えてしまう。だけど、その一瞬だけは暖かさを感じることができる。

「今夜も、誰か買ってくれる人がいないのかな…」

マッチを擦るたび、心の中で呟く。自分はただ、少しの暖かさが欲しいだけだ。それだけなのに、誰も振り向いてくれない。冷たい風が顔に吹き付け、涙が一筋こぼれ落ちる。

その時、彼女の目の前に、誰かの影が現れた。驚いて顔を上げると、そこに立っていたのは、まるで月の光を浴びたように輝く女性だった。彼女の髪は金色に輝き、白いドレスを身にまとっている。まるで神々の中でも最も美しい女神、アフロディーテその人のようだった。

「お前、寒くて震えているのね」

その声は、甘く優しさに満ちていた。少女はただ、驚いてその場に立ち尽くした。

「でも、大丈夫よ。私はお前を見つけたわ。お前は一人じゃない」

アフロディーテはエウリディケの手を取り、力強く温かさを感じさせる手のひらを差し出した。

「どうして、私を？」

エウリディケは震える声で尋ねた。すると、アフロディーテは微笑みながら、静かに語り始めた。

「だって、あなたは私にとって大切な存在だから。あらゆる女の子は、どんな状況でもお姫様になれる。あなたにも、その力があるのよ」

「お姫様に…？」

「そう、すべての女の子は内なる力を持っているの。あなたも、その一部を感じたことがあるでしょう？ たとえ今、マッチを売らなければならないような状況でも、あなたの心の中には、誰にも奪われることのない美しさが眠っているのよ」

エウリディケは目を見開いた。彼女はこれまで、自分が何か特別な存在であるなんて思ったこともなかった。ただ、生きるために必死に働くことが日々の仕事だった。しかし、アフロディーテの言葉は心の中に深く響き、彼女の目の前に広がる世界が少しずつ変わっていくように感じた。

「私は…ただ、暖かさが欲しかっただけなのに…」

「その暖かさが、すでにお前の中にあるのよ。お姫様になるのに、外の世界の許可なんていらない。自分の心の中で、その思いを強く持ち続けること。それが、女の子の力よ」

アフロディーテはエウリディケの肩に優しく手を置いた。すると、ふっと風が吹き、雪が舞い上がった。雪の中でエウリディケは目を見開き、驚きと共に感じた。自分の体が、どこか温かく、力強くなるのを。

「さあ、あなたもお姫様になる準備ができたわ」

その瞬間、エウリディケの服が輝き、金色のドレスに変わった。彼女の足元からは白い花が咲き誇り、まるで舞踏会にでも出るような華やかな雰囲気が漂った。

「あなたがこの世界で生きる力を持っている限り、どんな困難も乗り越えられる。あなたが信じる限り、あなたは永遠にお姫様よ」

エウリディケは、もう一度アフロディーテを見つめた。その目には涙が浮かんでいたが、それはもはや悲しみの涙ではなく、希望の涙だった。

「ありがとう…ありがとう、女神さま」

そして、エウリディケは一歩を踏み出した。彼女の足元からは、花がひとひら、またひとひらと舞い上がり、雪の中を煌めくように舞った。その姿は、もはやただの少女ではなく、輝く王国の王女のようだった。

そして彼女は心の中で誓った。

「いつだって、私はお姫様になれる。だって、私は自分を信じるから」

その瞬間、少女は新たな力を手に入れ、どんな困難にも立ち向かっていけると感じた。心の中の愛と希望が、彼女をさらに強く、美しくしていった。

世界は変わり始め、エウリディケは自分の手のひらに広がる新しい未来を感じながら歩み始めた。